連載・介護労働の現場から〈働き方編6〉

感情を押さえつけない

突破口は泣き言

入職して数か月経ち、身体を動かすことに慣れると同時に腰痛が始まり、疲労がたまっていることを自覚するようになる。どうしてこんなに仕事がきついのか? でも聞いてくれる先輩もなく、さらに極め付け、16時間勤務の夜勤の仕事も始まり、もうこのままでは「殺される~」と、3か月くらいで辞めてしまうことも多い。
そこで突破口。泣き言を現場でガンガン言ってみる。「身体ガタガタ、もうもたないよ~明日休むかも?」「あ~ダメ。もうできない」「ムリですよ。それはパス」…。
この悲鳴を無視したり、「お前はバカか。やるにきまってるだろ」という先輩がほとんどかもしれないが、中には代わってやってくれる頼もしい先輩もいるし、「無理だよね。きついよね。それやるの、やめよっか」と同調してくれる仲間もいる。
これが風通しのいい職場にする第一歩。感情は出さないのがプロといわれている介護業界で泣き言を口にだすには勇気がいるが、こう考えよう。
人手不足で利用者は食事・排泄・入浴以外は、寝かせっきり、座らせっきりで放置され、やがて死んだ魚の眼、能面のような無表情になり、その傍らで職員はひたすら黙々と業務をこなす日常。
職員がまず弱みをさらけ出し、自然な感情を出すことにより、利用者が溜めていた孤独のつらさを開いてくれる突破口になるかもしれない。介護者と利用者は、サービスを一方的に提供するだけの関係ではなく、生活を共にしている顔なじみの関係にならなければ介護は成立しない。だから安心して泣き言を情報公開しよう

感情の解放

介護は毎日がジェットコースターみたいなもので、穏やかで順調な時が続いても、ちょっとしたことで、いきなり急降下する。それをスタッフが黙って引きつった顔で動いていると、動揺が利用者に伝わって不穏になる。
ところが、みんなでワァーキャァ言いながら対処すると、利用者は、ワァーキャァには敏感に反応するが、案外不穏にはならない。何か面白そうだと刺激を受ける。終われば「大変だったね」と声をかけてくれる人もいて、利用者との生き生きした交流が始まる。これが介護現場を労働者と利用者の空間にする始まり。
介護現場で禁じられている、ワァーキャァや私語、雑談。これらを解放するだけで、現場は柔らかい風が吹く。ストレスがたまらないし、前向きになれる。利用者は、人生の先輩としての柔和ないい顔になる。
感情を押さえつけ、ジェットコースターに慣れてしまうのは、実は怖いこと。ケアレスミスや虐待、パワハラはそのような土壌から芽を出す。ジェットコースターでワァーキャァ、落ち込んでるときは利用者に言ってみる。いいことがあればウキウキ…、人間が人間を介護するのに感情は必要だ。
(あらかん)

ちば合同労組ニュース 第78号(2017年1月1発行)より