介護労働の現場から〈03〉難民キャンプ

介護労働の現場から〈03〉

2013年06月12日

難民キャンプ

介護職といっても資格によって、介護ヘルパー2級(4月から介護職員初任者研修)、介護福祉士、ケアマネジャー(介護支援専門員)などに分類される。それに、施設になれば、看護婦や作業療養士、理学療養士、社会福祉士なども介護サービスに関係する。なお、資格がなくても見習いとして介護職に就くことも可能である。
また、訪問介護と施設介護があり、施設介護でも、特別養護老人ホーム、老人保健施設、病院、グループホーム、有料老人ホーム、ケアハウスなどの施設の種類や内容によってサービスが異なる。

だから、介護職の経験も、転職すれば、一からやりなおしということは一般的である。介護には「介護学」という学問も、看護師協会のような職能団体も、教員の指導要綱みたいなものもなく、玉石混合の施設まかせ、さらに同じ施設内でも介護スタッフ個人によってやり方が違う。

私が、介護ヘルパーとして最初に就職したのは、デイサービス施設(昼間だけ送迎付きで高齢者に食事や入浴、その他のサービスを提供する)だった。それも民家を利用した最大10名の小規模で、介護保険対象外の「お泊り」サービスも一泊1000円程度の自費負担でやっているという、いわば介護保険制度のすき間にできた「民家型お泊りデイサービス」という業態である。

フランチャイズ方式で初期費用が数百万円程度、経営のノウハウや人材確保は本社がやってくれるから、売れない一戸建てを持て余した不動産や建設業者がどんどん介護に参入してくる。初期費用をかけないというのは、室内はほとんど改装なし、家具や家電製品は中古、ベッドはパイプの折り畳み、車はレンタル、厨房や掃除の道具、文具などは100円ショップで購入する。

労働者にとっては必要な介護設備もなく、バリアフリーでないので、身体介護労働がきつい。

利用者は主に、特養老人ホーム待機者や、暴力や徘徊などの重い認知症で特養や有料老人ホームでは受け入れてもらえない高齢者。

家族は緊急対応なので、施設の設備や介護スタッフの質などをほとんど問わない。預かってくれるだけでありがたいのである。泣き顔で相談に来た家族が、お年寄りを残して笑顔で帰っていく。
そうして、家族が持て余す、いわゆる問題行動のある高齢者が一つ屋根の下に集まり、トラブルが連発する。スタッフに与えられたミッションは、利用者の食事、入浴、排泄の身体介護、料理、洗濯、掃除、買い物などの生活介護、車での送迎、散歩、病院への付き添いなど。何もかも昼間(介護保険適用)実質2名、夜間(介護保険外の利用者自費負担)1名でこなさなければならない。当然、職場は「難民キャンプ」並みの様相を呈することになる。

(あらかん)
(ちば合同労組ニュース35号から)