介護労働の現場から〈15〉介護施設の1人夜勤を禁止しよう/2人夜勤の夢

介護労働の現場から〈15〉
2014年7月2日

介護施設の1人夜勤を禁止しよう/2人夜勤の夢

すき家では夜間、アルバイト1人で一店舗を切り盛りする「ワンオペレーション」(ワンオペ)があまりにも過酷だと退職が相次ぎ、ストライキの理由にもなっている。でも、介護業界では1人夜勤はごく当たり前の現実がある。
夜勤は16時間連続勤務
介護業界はほとんどが日勤と夜勤の二交代制。日勤8時間、夜勤は午後5時~午前9時までの16時間勤務。
労基法により夜勤は2時間以上の休憩と午後10時~午前5時までは25%以上の割増賃金がつく。
1勤務の労働日は2日で換算され、月給で夜勤手当は1回3~6千円、パート時給で1回1万2~5千円くらい。正社員は、日勤だけでなく月に4回以上の夜勤が入る ことが多い。
地獄の1人夜勤
夜勤の職務内容は以下の通り。
PM5時 出勤 申し送り 入居者を食堂に移動 配膳 食事介助
PM7時 就寝介助(口腔ケア、トイレ介助、パジャマに着替え、ベッドに移乗 バイタルチェック)
PM9時~翌6時 1時間毎の巡回、おむつ替え、体位交換、トイレ誘導、個別コール、センサー対応
AM6時~ 起床介助(洗面、トイレ介助、着替え、食堂移動)
AM8時 食事介助、申し送り、記録
その他に、洗濯たたみやおむつ補充、薬セット、掃除、行事準備、食事作りなどの雑務が入る。
夜の何十人もの要介護高齢者は眠り人形ではない。昼夜逆転、頻回のナースコール、トイレ頻回、ベッドからの転落、妄想、徘徊、転倒。バイタル悪化…。それらがよく同時多発に起きる。
認知症の利用者には、「ちょっと待ってて」というのが通じない。
例えば、排せつを数分待たせておいただけで失禁、廊下が濡れ、それで他の利用者が転倒。二人分の着替えと掃除の後始末をやってると、徘徊常習者のベ ッドサイドのマットセンサー受信機が鳴り、駆けつけると、居室にはいない。施設中を探し回る。他の居室で寝ている人に馬乗りになっていたり、台所で火遊び、洗面台で水遊び。認知症は想像を超える行動を引き起こす。
湧き上がる虐待(怒鳴ったりすることだよ)やネグレクトと紙一重の感情を抑えながら、いつもPHSや個別コール、センサーの受信機をカゴいっぱい持ち、一晩中階段上り下りしながら、施設内を走りまわっている。
休憩なんてとれるはずがない。地震火事、容体急変などの緊急対応不可能。不安で夜勤入りの日はうつ状態。夜勤が原因で心身を壊し離職する人も多い。
1人夜勤は国のお墨付き
介護保険では、昼間は3名の利用者に対して職員1名以上という配置基準があ るが、夜勤の配置基準はなく、人員削減は青天井状態。ただ、介護保険のサービス評価制度に「夜勤職員配置加算」があり。41床以上なら職員2名配置すれば、利用者1人1日240円の加算がつく。それが、40床以下は1人夜勤で仕方ないという経営側のいいわけになっている。
夜勤専従
夜勤一人配置でも施設では夜勤をやる職員が不足し、夜勤専従でパートや派遣を雇う施設も多い。驚くことに、昼間の仕事後のダブルワークも多い。事故や高齢者虐待に夜間が多いのは、一人夜勤体制やダブルワークが大きな要因としてある。
二人夜勤の夢
コンビニだってファミレスだって、交番だって、夜間は複数勤務だ。これらは労働運動の成果ではなく、国や業界の深夜労働に対する常識的な判断だ。 それなのに人の命を預かる介護が1人夜勤でいいはずはないし、家族を1人夜勤の施設に預けるのは危険だと思う人も多い。
1人夜勤問題はつまるところ、少ない介護報酬では限界があるとして野放しにされている。来年の介護保険法改正で政府は介護サービス削減の方向だ。すき家のストライキを見習って、介護でも1人夜勤撲滅キャンペーンを全国の施設でやろうよ。
私は、すき家ストライキに2人夜勤の夢を見る。
(あらかん)
(ちば合同労組ニュース48号から)