二十四の瞳

労働映画

ドラマ紹介『二十四の瞳』(松下奈緒主演・2013年版)

 安倍の70年談話や安保法案など物騒な雰囲気ですが、戦後70年ということで『二十四の瞳』を紹介します。
原作は坪井栄。作者の故郷・小豆島が舞台と思われます。1928年から敗戦翌年までの18年間が描かれ、新任女性教師・大石先生の赴任から始まる。12人の教え子たちはみな大石先生を慕い、彼女もまた「この子たちの美しい瞳をにごしてよいものか」と願う。しかし戦争の波は否応なく子どもたち運命を翻ほんろう弄する。戦地へ赴く教え子に「名誉の戦死などするな、必ず生きて帰れ」。声をひそめて伝える大石先生。

大石先生は敗戦後、再び教壇に復帰する。ラストは教え子たちとの再会シーン。12人の教え子は7人に。貧しく遊郭(ゆうかく)に売られた者、消息を絶った者、病死した者、戦死した者、戦場で失明した者……大人になった彼らは、大石先生を囲み、小学1年のあの日一緒に撮った写真を見る。

心の奥にズシリと来る。この映画が反戦映画か否かなんて議論もあるが、どうでも解釈できる。大石先生自身は戦時教育を厭いとい教師を辞した。しかし教え子の多くが戦争で傷つき死んだ。個人の生き方や良心を超えた問題にも思える。
小林秀夫は「この戦争は一部の人たちの無智と野心とから起こったか、それさえなければ、起こらなかったか。どうも僕にはそんなおめでたい歴史観は持てない。僕は歴史の必然性というものをもっと恐ろしいものと考えている」と言った。
確かに資本主義には戦争を引き起こす歴史の必然性がある。しかし、これを覆す力もまたある、と私は思う。〝運命〟や〝歴史の必然性〟に立ち向かうことが労働運動に求められているように思う。

ちば合同労組ニュース 第62号(2015年9月1日発行)より