学校

労働映画

映画紹介『学校』

 山田洋次監督の1993年の作品。東京下町の夜間中学を舞台とした教師と生徒たちの群像劇。焼肉店を営む在日朝鮮人のオモニや日本社会になじめない中国人、不登校や不良少女、昼間は働く勤労青年らと教師たちを描く。
 卒業式が近い冬の夜、国語の授業で生徒たちが卒業文集のための作文を書く。担任の黒井(西田敏行)は、生徒たちとの思い出を回想。療養のため故郷の山形に戻ったイノさん(田中邦衛)の「卒業式には出たい」という手紙を紹介する。
 イノさんは、父と妹が亡くなったことで幼い頃に家出し、以来、学校に通うことなく肉体労働の職を転々してきた50歳過ぎの初老男。ようやくメリヤス工場の社員となり、故郷の母の死を知って決心して夜間中学に通うことにしたのだ。
 競馬だけが楽しみで孤独に生きてきた初老男の初めての学校生活。字を書く喜びを実感し、修学旅行で級友とはしゃぐ。「ハガキを出す」という宿題では、1週間かけ、思いを寄せる中島先生(竹下景子)に恋文を送る。中島先生に相談を受けた黒井が間に入るが、2人に笑いものにされたと思い、酔って絡むイノさん。学校に登校しなくなった彼を心配して黒井はアパートを訪ねる。実はイノさんは長年の苦労で身体はボロボロ、すでに手の施しようのない状態だった。
 授業中に山形から訃報が入る。次の授業時間、教室では臨時のホームルーム、イノさんの死を通して「幸福とは何か」を問う。
 イノさんのモデルは実在の人物。映画のエピソードもほぼ事実。有馬記念のオグリキャップの勇姿を唾を飛ばしながら語る名場面、田中邦衛の芝居は唯一無比の存在感。お涙頂戴の映画とはひと味違うものにしている。

ちば合同労組ニュース 第90号 2018年01月1日発行より