人間の壁

労働映画

映画紹介『人間の壁』

 佐賀県で起きた佐教組事件をモデルにした石川達三のベストセラーの映画化(1959年)。財政難で県が打ち出した大規模な人員削減は、教職員7千人のうち2600人を整理、45歳以上は全員退職、養護教員や事務職員は全廃というもの。佐教組は一斉年休闘争で対抗し、実働教職員5929人のうち5200人が参加した。実際の話。

香川京子演じる主人公ふみ子は子どもたちに慕われる5年生の担任。ある日、同僚と共に校長に呼ばれ退職を勧奨される。組合の職場会では組合として取り組むかで激論になるが結論が出ない。父親が炭鉱を解雇され不登校の少年。3円安いノートを買うため遠い踏切をわたって貨車に轢かれて死ぬ教え子。ふみ子は少しずつ組合活動に力を注ぎ始める。
宇野重吉が演ずる沢田先生は、組合活動には消極的な教育実践家タイプ。小児マヒで足の不自由な同級生をからかう3人を沢田は思わずつきとばし、大声で叱る。「暴力事件だ」と親たちが騒ぎ出す。背後には自民党と市のボスたち。「赤い組合がリードしている」と大キャンペーン。
職場会では、個人の問題か組合として闘うかでまたも結論がでない。沢田は「いつか分かってもらえる。教育の真実は子どもだけ」と退職届を出す。自宅を訪ねたふみ子に沢田は「一人では闘えないことがわかった。今度別の職場に勤めたときはみんなと一緒に闘う」と伝える。

同僚から辞職を伝える手紙。ふみ子は立ち上がる。「私は退職勧告をやめさせるために働きます」と宣言し他の女性教員を引き連れて校長室へ…。子どもの貧困や自民党、なんとも今と同じ。当直室に集まり同僚で酒を飲むシーンが良い。

ちば合同労組ニュース 第71号(2016年6月1日発行)より