国際市場で逢いましょう

労働映画

映画紹介『国際市場で逢いましょう』

 戦後の韓国の歴史を生き抜いた人間の一生を描き、非常に濃密な物語だ。韓国では歴代動員2位の大ヒット作。
 朝鮮戦争、中国軍参戦で米軍が一般市民1万7千人と共に興南港から撤収した有名な作戦がある。冒頭シーンは迫力映像。まだ幼い主人公は背負っていた妹を見失う。父が「今日からお前が家族を守れ」と言い残して妹を探しに下船する。
 父と再会を約束した釜山の国際市場で主人公は母と2人の弟妹と共に育つ。やがて成長した主人公は、弟の学費や家計のため西ドイツの炭鉱への出稼ぎに。さらにはベトナム戦争に民間技術者として従軍。危険な炭坑や戦場で何度も死線をさまよって…という話。映画は、現代から過去を回想する展開なのだが、国際市場で学生たちが外国人労働者に嫌がらせをするのをみて老人となった主人公が激怒し、学生とつかみ合いになる場面が印象的で、重要な伏線になっている。
 1960~70年代、韓国からは大勢の炭鉱労働者・看護師が西ドイツに出稼ぎに行った。危険で過酷な労働。韓国はベトナム戦争には延べ30万人もの兵士を送った。これにより朴正煕政権は米国から巨額のドルを獲得し、ベトナム特需で韓国の財閥は生まれた。韓国労働者には日本とは違う歴史がある。
 終盤、生き別れの妹と再会する。韓国の放送局が83年に特別番組「離散家族を探しています」を企画。当初100分の放送予定が大勢の離散家族が押し寄せて138日453時間余の生放送が続いた実話に基づく。ただ圧倒される。
 韓国の歴史における重要な出来事と1人の人間の歴史を1本の映画にした力作。『3丁目の夕日』より断然おすすめ。

ちば合同労組ニュース 第86号 2017年9月1日発行より