労働映画

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映画紹介『モリーマグワイア(邦題・男の闘い)』

映画紹介『モリーマグワイア(邦題・男の闘い)』  1969年制作の米映画。1870年代の米ペンシルバニアの炭坑が舞台。アイルランド移民の抗夫は労働組合に結集したが、さらに秘密結社「モリーマグワイア(モリーズ)」が組織され、過酷な労働と生活のために闘った。  そんな中、ジェームスという労働者が仕事を求めて鉱山にやってきた。新顔に対し、モリーズの指導者キーオたちは警戒し喧嘩になるが次第に彼を信用するよ...
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映画紹介『生きとし生けるもの』

映画紹介『生きとし生けるもの』  山口県阿武町で新型コロナ対策の給付金4630万円を誤って振り込んだ事件で思い出した映画。『路傍の石』が有名な山本有三の未完の小説を1955年に三國廉太郎の主演で映画化したものだ。  炭鉱会社の本社労務課に勤める伊佐早靖一郎(三國)は帰宅後、賞与袋に1万円多く入っていることに気付く。当時の大卒公務員の初任給より多い金額だ。一度は会社に戻り返金しようとするが、学費を滞...
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映画紹介『メイド・イン・バングラデシュ』

映画紹介『メイド・イン・バングラデシュ』  バングラデシュは輸出の8割をファストファッションなど衣類が占める縫製工場が集中する国だ。2013年、ラナプラザ崩壊事故で1100人を超える労働者が生き埋めになる大惨事が発生。最貧国の女性の安い労働力でコストパフォーマンスの良い商品を大量生産するグローバル資本の酷さを鋭く示す象徴として知られてきた。  映画は、過酷な環境で働く女性たちの実話をもとに作成され...
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西部戦線異常なし

映画紹介『西部戦線異常なし』  ロシアのウクライナ軍事侵攻で、この映画が思い浮かんだ。第一次世界大戦における西部戦線(独仏国境沿いの戦線)を描いた映画。反戦映画として最も著名な映画の一つ。原作はドイツの作家レマルクの長編小説。第一次大戦は、欧州だけで6千万の兵士が動員され、1千万人以上が戦死した。  現代の戦争は総力戦だ。その性格を特徴づけたのが第一次世界大戦だった。大量消費・大量動員・大量破壊を...
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炭坑

映画紹介『炭坑』  1931年の独仏合作映画。1906年に仏北部で実際に起きた20世紀最大の炭坑事故(犠牲者1099人)がモデルですが、映画は、第1次大戦後の仏独の複雑な国民感情を背景に、炭坑は独仏国境地帯の設定となっており、ドイツ人炭坑夫たちが国境を越えて救援に向かうストーリーです。  映画の公開時期は、ナチスが政権を取るわずか2年前。第1次大戦の敗戦国ドイツは巨額の賠償金を課せられ、大恐慌が直...
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あの日のオルガン

映画紹介『あの日のオルガン』  保育園を丸ごと集団疎開させる決断した東京・戸越保育園の保母(保育士)と園児たちを描いた実話を映画化。小学生の疎開は見聞きするが、保育園の疎開は投稿一覧初めて聞いた。  東京にも戦火が迫る1944年、戸越保育園は園児を空襲から守るため親元から遠く離れた疎開先を探していた。最初は幼い子と離れることに反発した親たちも「せめて子どもだけでも生き延びて欲しい」と我が子を託す。...
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ハリエット

映画紹介『ハリエット』  南北戦争の時代、800人を超える黒人奴隷解放を成し遂げたハリエット・タブマンの半生を描いた映画。当時、米国社会には「奴隷黒人」と「自由黒人」が存在し、自由黒人は身分証明書を持ち歩き、奴隷黒人は1人の人間として扱われない時代でした。  メリーランド州で黒人奴隷である両親から生まれたミンティは6歳から働き始め心身を虐げられて生きてきました。奴隷主が死に、奴隷はバラバラに売り払...
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いつでも夢を

映画紹介『いつでも夢を』  高度経済成長が始まった頃の東京下町の工業地帯を舞台にした青春物語。勝利(浜田光夫)は、仕事に失敗し父親が家出し、中学を出てすぐ森田製作所に就職、夜は定時制高校に通う。看護師ひかる(吉永小百合)は、幼い頃に両親をなくし、兄も病気で失い貧乏医院の三原医師の養女となって昼は看護師、夜は定時制。留次(橋幸夫)は、森田製作所の資材を運送する日の出貨物の新米運転手だ。  勝利は、貧...
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遠い一本の道

映画紹介『遠い一本の道』  1977年に公開された左幸子監督・製作・主演の映画。マル生運動が吹き荒れる北海道の国鉄職場が舞台。  室蘭本線と石勝線の交差する鉄道の町・追分で保線区員として30年働く滝ノ上市蔵(井川比佐志)が妻の里子(左幸子)と共に功績賞を受けるために札幌へ向かう場面から始まる。かつては鉄道に勤めていれば安泰と言われたが、狭い官舎に住む滝ノ上一家の暮らし向きは苦しく、職場では機械化・...
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めぐり逢わせのお弁当

映画紹介『めぐり逢わせのお弁当』  インドに「ダッバーワーラー」と呼ばれる弁当配達システムがある。英植民地時代、英印の食文化の違いや宗教上の禁忌、カーストの問題があり、自宅で家族が調理した昼食を勤務先に届ける商売が始まった。すでに百年以上の歴史を持ち、現在でも毎日17万個以上の弁当箱が約5千人の配達員によって利用客の自宅とオフィスの間を行き来する。  興味深いのは、ウーバーイーツと真逆な人的ネット...
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鉄道運転士の花束

映画紹介『鉄道運転士の花束』  2019年日本公開のセルビア・クロアチアの映画。原題は『運転士の日記』。人身事故が避けて通れない鉄道運転士の日常と誇り、人生の悲哀をブラックユーモアで描く人情映画だ。賛否両論ある作品。  冒頭、鉄道事故から始まる。そして主人公である鉄道運転士イリヤの独白。「親父と俺は53人の人間を殺した。男が40人、女が13人。じいさんの分も加えれば66人殺したことになる。裁かれた...
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好きにならずにいられない

映画紹介『好きにならずにいられない』  2015年公開のアイスランド・デンマーク映画。主人公フーシは航空貨物の搬入やカーゴ運転を行う空港地上職。43歳独身、巨漢で髪も薄い。ラジコンや戦場ジオラマが趣味のオタクだ。寡黙で他人とは少し距離感があり職場ではいじめも。でも料理や日曜大工は得意で、気の合う友人も。  ある日、母とその彼氏がダンス教室に勝手に申し込む、しぶしぶ出かけるが、そこでシェヴンに出会い...
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幸せなひとりぼっち

映画紹介『幸せなひとりぼっち』  2015年公開のスウェーデン映画。今年一番の印象に残った映画です。コメディタッチなのですが実に感動的な作品です。観ててシンドイ場面もありますが、お薦め。  妻ソーニャを半年前に亡くしたオーヴェは、鉄道操車場で働く59歳の整備工。いつも不機嫌かつ几帳面で口うるさい偏屈なオヤジ。毎朝、団地を巡回してゴミの出し方や犬の散歩、車の駐車位置などをチェック。店で気に入らないこ...
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天使のいる図書館

映画紹介『天使のいる図書館』  地元に就職した新人司書さくら(小芝風花)が主人公。図書館司書が主人公の映画は初めて観た。なじみのない人も多いと思うが、図書館にはレファレンスサービスがある。利用者の調べものや探しものを手伝いする。  過度の合理的思考で他人とのコミュニケーションが苦手なさくらは、「王子様の出てくる絵本」をリクエストする女の子に「イギリスですか、それともオランダ?」と尋ね返し、「泣ける...
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にあんちゃん

映画紹介『にあんちゃん』  監督・今村昌平、主演・長門裕之の1959年公開の映画。53年の佐賀県の炭鉱地帯が舞台。3歳で母を亡くし、9歳の時にストライキのさなかに父を失った安本末子の視点から、在日朝鮮人の4兄弟姉妹が懸命に生きる姿を描く。  父の死後、朝鮮人ゆえに正社員となれず炭鉱の臨時雇いとなる長兄。わずかな稼ぎで毎日の糧にも事欠く極貧の生活。その長兄も会社の合理化策による首切りで失業。4人は炭...
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パラサイト 半地下の家族

映画紹介『パラサイト 半地下の家族』  半地下に暮らす全員が失業中の貧しいキム一家。大学受験に落ち続け浪人中の息子ギウはエリート大学生の友人から「僕の代わりに家庭教師をしないか?」と持ち掛けられる。ギウの向かった先はIT企業社長パク一家の高台の大豪邸。  ギウは言葉巧みにパク家の信頼を得て、同じく美大浪人中の妹ギジョンを家庭教師として紹介。やがて兄妹は同家の運転手や家政婦を追い出し、父ギテクを運転...