実践的に考える職場と労働法/労災保険制度の歴史と仕組み

実践的に考える職場と労働法

故意・過失の有無問わず労災の補償

労災保険制度の歴史と仕組み

 かつて労働災害の補償は、労働者や遺族の側に、使用者に過失があったこと、さらには使用者の過失と災害との間に因果関係があることの立証が要求されました。大変な手間と費用などが必要でした。しかも労働者側に過失があれば過失相殺によって賠償額は減額されました。
 労働災害をめぐる長い苦闘の末、〈そもそも労働災害は企業の営利活動に伴う現象であり、企業活動によって利益を得ている使用者に当然に損害の賠償を負わせて労働者を保護しなければならない〉との考えが社会的に形成され、やがて法律として労災補償が制度化されました(法律は労基法と同じく1947年)。
 こうして、雇用に起因して生じた事故による負傷や疾病、障害や死亡、職業病などについて、使用者は、故意・過失の有無を問わず労災補償を労働者になすべきこととなったのです。
 労災保険は、使用者の加入が強制的に義務づけられている政府運営の保険制度で、被災労働者に対する使用者の補償責任を保険料(と一部国庫)を財源として補填します。
 労働者を一人でも使用している事業主は原則として強制加入。現在では小規模な個人経営の農林水産業を除く全事業が強制適用事業となっています。保険料全額を事業主が支払い、その事業所で働く労働者の賃金総額に保険料率を掛けて算出します。
 保険関係は、届出とは関係なく、事業が開始された日に法律上当然に成立します。事業主は10日以内に届出を出す義務がありますが、仮に未届けで保険料を収めていない事業所での労災でも労働者への保険給付は行われます。この場合、事業主は保険料を追加徴収され、故意や重大過失の場合には保険給付に要した費用も徴収されます。

労災認定

 業務災害の認定に必要な条件として、「業務遂行性」と「業務起因性」が挙げられます。簡単にいうと、その業務に従事していれば、ほかの人でも同様の災害が生じる可能性があった場合は、おそらく労災に該当すると思います。
 そもそも「業務遂行性」「業務起因性」は、法律による根拠がない厚生労働省独自の基準です。労災認定の枠を限定しようとする傾向に多くの労働者や遺族が苦闘してきた歴史でもあります。
 近年は、脳・心臓疾患の業務災害に関する判断については厚生労働省の判断基準にとらわれず労働者に比較的有利な判断をするケース、精神障害による自殺について労働基準監督署長の業務外認定を覆す裁判例も増えています。
 石綿による疾病の業務上認定についても長く放置されてきましたが、21世紀に入ってから健康被害の拡大と長期進行性が社会問題化し、石綿健康被害救済法が制定され、医療費や療養手当の支給、労災保険上の遺族補償給付に準じた特別遺族給付などが行われるようになりました。
 業務中、トイレに行く途中で転んで骨折した場合なども業務災害となります。出張中の業務災害も広く認められます。自然現象による災害も、職場に定型的に伴う危険であれば業務起因性があります。阪神大震災や東日本大震災による災害も多くが業務上の認定を受けています。

保険給付

①療養補償給付:診察、薬材・治療材料の支給、処置・手術、入院など

②休業保障給付:療養のための休業の4日目から支給。1日につき給付基礎日額の6割。これに加え2割の休業特別支給金で計8割を補償

③障害補償給付:治癒後に障害が残ったとき、その障害の程度に応じて年金や一時金

④遺族補償給付:原則的には年金、例外で一時金
 その他、葬祭料や介護補償給付などがあります。通勤災害については、療養について200円の一部負担金があるほかは業務上災害と同じ内容の保険給付です。

労災隠し

 建設現場は重層的な請負関係が大半なので建設現場を一つの事業単位とみて元請が一括して保険関係の適用を行うことになっています。下請B社や孫請C社の労働者がケガをした場合でも、元請A社の労災保険を使って保険給付が行われます。
 ところで、労災保険には労災事故が少ないと保険料が安くなり、事故が多いと保険料が高くなる〝メリット制〟という仕組みがあります。建設業は保険料率も高いので大規模な建設現場になるほど保険料の額が大きくなり、メリット制の影響も拡大します。
 このため、元請企業の圧力や下請の自主規制で「治療費はすべて面倒みるから健康保険で治療してくれない?」という「労災隠し」が起きるわけです。こうなると労災原因も究明されず、ケガが悪化した場合の補償もなされません。〝ケガと弁当は自分持ち〟の悪弊は昔の話ではありません。

ちば合同労組ニュース 第80号 2017年3月1日発行より

連載・介護労働の現場から〈働き方編8〉 それ労基法違反

連載・介護労働の現場から〈働き方編8〉

それ労基法違反ですから

 介護業界は、人手不足と命を預かる現場だからという理由で、労働基準法違反の労働慣行が平気でまかり通っている。違法な職場ルールをチェックしてみよう。

①サービス残業

 人手不足だと、当然、時間内に仕事が終わらない。次のシフトにその仕事を押しつけて、「ハイ、さよなら」と帰ることはできない。
 それに、利用者に不測の事態、救急搬送とか介護拒否がある場合、これも帰れないで、何時間もの残業になったりする。
 あと、委員会やイベントの準備は業務時間内に時間がとれないので残ってやるのが暗黙のルールで、職場の人間関係上、「帰れない」。
 問題は、それがほとんどの介護の現場でサービス残業になっていることである。なぜタダ働きなのか? 残業未払い問題は、働き方改善の突破口なので、稿を改めて論じたい。

②欠勤は代理を探さないと認めない

 介護現場はシフト制。決まったシフトに欠員がでると、業務がまわっていかないので、代わりのスタッフを探さなければならない。でも、それがなぜ労働者の義務なのか? 欠員の補充は事業者側の責任。「代わりの人がいないなら出勤して」という命令は違法。欠員対応は事業者にまかせましょ。

③遅刻・欠勤の罰金制度

 遅刻や欠勤を減らすために、遅刻30分5千円、欠勤5万円減給なんてペナルティ、信じがたいが、介護業界にはまだまだある。減給は就業規則に記載がなければ違法。就業規則にあっても、労基法では、1回の額が平均賃金1日分の半額を超えないこと、額が月給の賃金の10分の1を超えないことという上限が決まっている。激務で体調壊して休んでいる人間から、さらに大金をぼったくる雇い主にだれがついていくかよ。
 ④時間外の仕事や連絡
 オフの日でも、電話やメールをバンバンよこして、業務対応させたり、職場に来るように呼び出す。呼び出しで出勤しても、休日扱いで賃金払わない。これも労基法違反ですから! 

⑤有給休暇を理由によって却下

 いちいち有休の理由を聞いたり、書かせたりする職場がある。「遊びに行くなら出勤してよ」「家族旅行、他の日に行けないの?」とうるさい。理由は「私用」だけで充分。労働者に有休日を決める権利がある。ただ、事業者は「時季変更権」というのがあり、繁忙期などは取得をずらしてくれないかをお願いする権利はある。
 これ以外にも多々あるが、業界に巣くう暗黙のルールなんか無視して、まず勇気をだして「それ、労基法違反ですから!」と言ってみよう。(あらかん)

ちば合同労組ニュース 第80号 2017年3月1日発行より

職場と労働法 年間1千人を超える労災死亡者の現実

実践的に考える職場と労働法

今なお年間1千人を超える労災死亡者の現実

あなたの職場の安全衛生は?

労働災害で死亡する労働者は今なお年間1千人を超えます。戦後の労災死亡累計は20数万人。日清日露戦争の戦死者数を超えます。高度経済成長末期で労働者の安全は二の次だった1971年の労災死亡は6712人とピークを記録。翌年、労働安全衛生法が制定されると75年には年間3725人に激減しました。
労働安全衛生法規が〈先人の血で書かれた文字〉と言われる由縁でもあります。
安全衛生は、労働者の生命・身体・健康を守る最も根源的な労働条件です。職場に存在する危険を減らし、設備・環境・体制を整えて、事故や病気を発生させないことは何よりも大切なことです。
しかし、効率や経済性のために安全衛生がしばしば犠牲になるのが現実です。生活の糧を稼ぐために危険な仕事をせざるをえない場合、労働者の直接的な関心の対象にはならない面もあります。
安衛法は、事業者とその他の関係者に対して、①職場における安全衛生管理体制の整備、②危険・健康障害の防止措置の実施、③機械・有害物などに関する規制、④安全衛生教育・健康診断などの実施――を義務づけています。
案衛法の行政監督の仕組みは基本的に労働基準法と同じで、罰則や労働基準監督制度による監督・取締りも行われます。

安全衛生管理体制

一定規模以上の事業場は、総括安全衛生管理者を選任し、その下に所定の資格をみたす安全管理者および衛生管理者を選任することが義務づけられています。労働者の健康管理を担当する産業医の選任や特定作業について作業主任者の選任も定めています。
もちろん一定規模に満たない小さな職場でこそ安全衛生体制は大切です。10人規模以上の職場で工業的な職場では安全衛生推進者、それ以外の職場では衛生推進者が必要です。10人以上が働いていればどんな職種でも衛生推進者が必要です。みなさんの職場ではどうでしょうか?
さらに製造業や運送業などで常時50人以上が働く職場では安全委員会、その他の業種の事業場では衛生委員会の設置が義務づけられています。議長以外の委員の半数は、事業場の過半数組合・代表者の推薦により指名されます。
衛生委員会は、衛生に関する重要事項について調査・審議して事業者に意見を述べます。長時間労働やメンタルヘルス対策も衛生委員会の付議事項です。
常時50人以上の労働者を使用する使用者は産業医を選任しなければなりません。産業医は、健康状態に問題のある労働者を発見した時は事業者に対して休ませたり作業を軽減させるなどの措置を勧告できます。産業医は毎月1回は職場巡視し作業実態をチェックしなければなりません。
産業医が職場巡回しないなど形骸化したり、主治医が職場復帰を認めたにも関わらず会社の意向に沿って「復帰不可」と判断するなど問題ある産業医もいます。

健康診断

労働者を1人でも使用している事業者は、雇い入れ時と年1回の健康診断を実施しなければなりません。費用は事業主の負担が原則です。事業者が健康診断の実施義務を怠った場合は50万円以下の罰金となります。しかし一般健診は、業務遂行との関連において行われないとして賃金の支払いは義務づけられていません。厚生労働省は賃金支払いが望ましいとは言っています。有害業務に従事する労働者が対象の特殊健康診断は、所定労働時間内の受診が原則で賃金支払いは必須です。

安全衛生教育

「労働者の危険又は健康障害を防止するための措置」では、事業者の講ずべき措置として「危険防止措置」「健康障害防止措置」「作業場の整備措置」「作業場からの退避措置」「労働者の救護措置」などが規定されています。
「機械等並びに危険物及び有害物に関する規制」と合わせてボイラーやクレーンなどの検査証、機械の防護措置、危険物・有害物の製造禁止や有毒性の調査などが規定されています。
「労働安全衛生規則」をはじめ、「ボイラー及び圧力容器安全規則」「クレーン等安全規則」「四アルキル鉛中毒予防規則」「電離放射線障害防止規則」「粉じん障害防止規則」「事務所衛生基準規則」などの詳細な規則が体系的に設けられています。
安全衛生教育の実施や無資格者の就業制限などを定めた「労働者の就業にあたっての措置」として3種類の安全衛生教育が定められ、雇い入れ時にすべての業務について安全衛生教育が義務づけられています。危険有害業務や職長着任時にも特別の安全衛生教育が必要です。これらは臨時労働者を含むすべての労働者が対象です。
仕事中に発生した労働者の傷病事故は労災保険で補償されます。バイトや日雇い労働者もすべて対象です。労災保険料は労働者の負担はなく、事業者が支払う賃金総額に掛金がかかる仕組みです。詳しくはまた今後に紹介したいと思います。

ちば合同労組ニュース 第78号(2017年1月1発行)より

実践的に考える職場と労働法-賃金/賃金闘争の闘い方

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賃金/賃金闘争の闘い方

賃金は、労働者にとって生活を成り立たせるための重要なものであり最重要の労働条件の一つです。
労働基準法には、労使が対等の立場で決定することを原則としつつ、法律でその支払い方法などについて様々な保護規定を置いています。
労働基準法では、賃金については、労働契約の締結時と就業規則において労働者に必ず明示しなければならない事項として規定されています。
「賃金規定」「給与規定」を就業規則とは別の規則として作成し、社員に見せない使用者がいます。賃金規定も就業規則の一部なので周知義務もあります。もちろん、その作成・変更にあたっては所定の手続きが必要となります。つまり、賃金規定の改定は一方的にはできないのです。
労基法では、労働協約・就業規則・労働契約であらかじめ支給条件が明確になっているもの(慣行も含む)は、すべて賃金とされ、以下の法的保護を規定しています。
とはいえ、最低賃金の設定や各種差別待遇の禁止などの規制はありますが、賃金の決定そのものについては、つまり賃金体系・ベースアップ・定期昇給・人事考課などは、労使で自主的に決めることになります。

賃上げ春闘

従来、日本の労働者の賃金は、定期昇給とベースアップが昇給の一般的な形態でした。定昇は、一定の時期に年齢や勤続年数、職能資格の上昇に伴って賃金額が年功的に上昇する仕組みです。ベースアップは、賃金の基準額(賃金表)そのものを改定し賃金の全体的底上げを行うことを指します。
日本では、1955年ごろから全国一斉の春闘が始まりました。鉄鋼・電機・造船・自動車などの民間主要企業で妥結された結果が「春闘相場」を形成し、この相場が他産業・他社の交渉、組合のない企業の賃上げ額などにも影響を与えました。公務員の賃金(人事院勧告)にも連動しました。
かつては春先になると春闘ストライキで交通機関が止まるニュースが流れました。街中に組合の赤旗がたなびきました。春闘ストを指導したとして日教組の委員長が逮捕されこともあります。
動労千葉の中野前委員長は、労働者を分断する一番基本的でオーソドックスな手段は賃金であると指摘し、それを賃金闘争の重要性の理由としています。「賃金闘争で一番大事なことは、賃金と賃金闘争を通しての分断攻撃を許さないこと」と言っています(中野洋著『甦る労働組合』)。
近年、賃金の集団的決定が著しく後退し、個別賃金化が進んでいます。これを打ち破る賃金闘争が求められています。確かに会社は、労働者には容易に把握できない複雑怪奇な賃金体系をつくります。
これによって「会社の言うことを聞けば賃金を上げる(逆も)」「会社が儲かれば労働者もよくなる」という考えに染まっていきます。労働者の分断を打ち破って団結を生み出す大幅一律賃上げの闘いが必要です。
千葉県の最低賃金は10月1日から時給842円となりました。東京は932円。これ以下の労働契約は無効となり、最低賃金額に書き換えられます。罰金は50万円。

賃金の支払方法

賃金を確実に支払わせるための4原則は以下の通り。

1通貨払原則 通貨による賃金支払いを義務づけ、価格が不明瞭で換金に不便な現物支給を禁止しています。労働者が真に自主的に同意すれば銀行口座への振込はOK。労使協定で定期券の現物支給などもできます。

2直接払原則 親権者・親方・仲介人・代理人など第三者による中間搾取を防止するための規定です。賃金の差し押さえも4分の3の部分は禁止されています。

3全額払原則 戦前の芸娼妓契約が典型ですが、親が多額の金銭を借り受け、子どもが無報酬で働いて借金を返すような不当な人身売買・労働者の足止め策は、労基法17条で禁止されていますが、直接払・全額払原則にも違反します。

4毎月一回以上一定期日払原則

休業手当

使用者の責めに帰すべき理由による休業の場合、使用者は、平均賃金の6割以上の休業手当を支払う必要があります。民法では、賃金全額を請求できます。
労基法上の休業手当は、労働者の生活保障のために、使用者の帰責事由をより広い範囲で認めています。使用者に故意や過失がなく防止が困難なものであっても、使用者側の領域で生じた、機械の故障や検査、原料不足、官庁による操業停止命令なども含むと解釈されています。
未払い賃金の時効は2年、退職金は5年です。労働基準監督署に申告して指導・勧告させることもできます。
倒産した場合、労働者健康福祉機構の未払賃金立替払制度が倒産した企業に代わって8割を支払ってくれます。

ちば合同労組ニュース 第77号(2016年12月1日発行)より

職場闘争と労働基準監督署の活用

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職場闘争と労働基準監督署の活用

みなさん、労基署に行ったことありますか?
労働基準法7章は、監督機関や罰則を定めています。監督の仕組みは、国の直轄機関として厚生労働省労働基準局→都道府県労働局→(管内)労働基準監督署があり、これらの機関には労働基準監督官が配置されています。
都道府県労働局長、労働基準監督署長などのポストは労働基準法によって、専門職員として独自に採用された労働基準監督官であることが要件となっており、その罷免には労働基準監督官分限審議会の同意を必要とします。これは、強力な監督権限を持つ監督官の資質の保障と、政治的圧力に左右されない身分の安定のためとされています。
労働基準監督官については、ちょっと前に竹内結子が主演した連続テレビドラマ『ダンダリン/労働基準監督官』で描かれました。
労基署には、監督・安全衛生・労災補償などの部署があります。
「監督業務」は、労働条件の最低条件を定める労基法や労働安全衛生法などの実効性を確保するために、監督官は、立入権限などを活用した監督指導によって、法違反の是正を促し、迅速に労働条件の確保を図るとされています。重大・悪質な事案は司法処分も可能です。
「安全衛生業務」は、労働者の生命と健康を守るため、労働安全衛生法の規定に基き、事業者が労働災害を防止するための具体的措置を実施できるよう専門技術的見地から行政を展開します。
「労災保険・徴収業務」は、使用者の災害補償責任を担保するための制度である労災保険の適用促進や徴収、給付などを行います。

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依存・期待は危険

労働基準監督署は、〈職場闘争や組合の団結強化のために利用する〉というスタンスがいろんな意味で大切だと思います。依存したり期待するのは危険です。
そもそも窓口に座っている相談員は、まず監督官でありません。大半は、非正規職員(約6割!)の総務・人事経験者や社会保険労務士。ハッキリ言って窓口にやってくる労働者を体よく追い返すのが仕事なのではないかと思うような人物がけっこういます。
解雇など判断が難しい案件は、受け付けないか、他の解決手段を勧めてきます。セクハラやパワハラを相談しても「労働基準法違反ではないので対応は難しい」と言われます。
賃金や解雇予告手当の不払い、36協定違反の時間外労働、最低賃金を下回るなど明確な法令違反は、証拠をもとに申告すれば、監督から是正勧告へと動く可能性はそれなりにあると思います。
とりわけ近年は、相談数が激増して、実際問題として対応しきれなくなっている実情があるようです。
監督行政は、〝通達行政〟ともいわれ、厚生労働省の行政通達を基準・根拠に処理されているのが実態です。
ドラマ放映後、労働者の味方を求めて労基署を訪れた人が「竹内結子はいないのか」とつぶやいたなんて話もあるようですが、監督官は、結局のところ、官僚的な対応に終始して、使用者から「労働者の味方か」と言われ、労働者からも「使用者の味方か」と言われているのが現状です。
救いを求めて労基署を訪れ、相談員の素っ気ない対応にショックを受ける人も少なくありません。労基署にとどめを刺されてメンタルヘルスになる話も聞きます。

職場闘争の戦術

とはいえ職場の労働基準法や労働安全衛生法の違反と闘うことは、労働組合の基礎的な活動であることは間違いありません。職場闘争と結びついた労基署の活用はあってしかるべきだと思います。労基署に一度ぐらい行くことも経験の一つだとも思います。
上述のように相談ではほとんど相手にされません。はっきりと違反事実をつかんだ上で是正を求める(申告)のか、違反者の処罰を求める(告訴・告発)が有効です。まずは相談員ではなく監督官を引っ張り出さなければなりません。相談案件として処理されるとうやむやで終わります。
申告は文書で口頭でも可能です。組合で労基署長宛で文書を提出し、回答を求めればなお良いと思います。申告を受けた監督官は、臨検(申告監督)を行うことになります。そこで法令違反が認められた場合には、その是正のための行政指導を行います。法令違反は是正勧告、改善が必要と判断された時は指導票を交付します。
職場のみんなで押しかけるとか、団体交渉と組み合わせるか、職場闘争の戦術として活用は可能ではないかと思います。

ちば合同労組ニュース 第76号(2016年11月1日発行)より

電通過労死事件は何を告発しているか

電通過労死事件は何を告発しているか

闘わなければ生きられない

n0076_04_01a 「生きるために働いているのか、働くために生きているのか分からなくなってからが人生」「眠りたい以外の感情を失った」
SNS上に発信された悲痛な叫び。24歳の新入女性社員が過労で自殺に追い込まれた電通過労死事件が衝撃を呼んでいる。
広告代理店のトップ企業の過酷な労働実態。今回は労災と認定されたが、誰の目にも触れずに自殺に追い込まれる労働者が多数あることは言うまでもない。“仕事、殺されても放すな”という電通の「鬼十則」と呼ばれる社風はけっして極端な例ではなく、日本企業の代表例だ。
驚くべきことは、これに対するバッシングとも言える反応だ。「残業時間が100時間を越えたぐらいで過労死するのは情けない」(長谷川秀夫・武蔵野大)、「震災の後の自衛隊員が何時間働いたか想像つかないのかな」(玉井克哉・東京大)という大学教授たちの反応をはじめ、「100時間くらいの残業は当たり前」「そんなブラック企業が嫌なら、辞めればいいのに」という反応がネットで炎上。
ジャーナリズムも悪質だ。「日本を代表する広告会社の電通に対し、東京労働局が抜き打ち調査に踏み切った」「今回の調査には、長時間労働の是正に取り組む安倍政権の姿勢も垣間見える」「もっと労組はモノ申せ」(『朝日』10・15)。労働局や労基署が正義の味方であり、 労働組合は力がないかのように描く。
労災認定の基準となる〝過労死ライン〟は月80時間とされる。死に追い込むまで働かせる労働環境こそ変えられなければならない。これが安倍政権の「働き方改革」であり、電通のようなブラック企業を助長する「残業代ゼロ法案」を虎視眈々と狙う。
闘わなければ生きられない。19世紀の労働者が文字通り血を流しながらかちとった「8時間労働制」。21世紀も同じことが問われている。
(組合員K)

ちば合同労組ニュース 第76号(2016年11月1日発行)より

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労働相談街頭宣伝やってます

 ちば合同労組は大会後、駅頭などで青年部を中心に労働相談のチラシ配りを行っています。チラシを小さめのA5サイズにリニューアルし、目立つのぼり台も功を奏し、例年より反応は上々です。2~3枚取っていく人や、引き返してチラシをもらいに来る人も。「組合費はいくら?」「有給はパートやアルバイトにもあるの?」「知っているよ」など話になります。
「やまゆり園事件」や「電通自殺事件」など、労働環境が社会問題化し、年々、労働環境が酷くなっているように思います。労働組合が求められる時代です。厳冬の来る前に、組合員の皆さんの最寄りの駅や職場で一緒にチラシ配りを行いましょう。

実践的に考える職場と労働法-労使協定と過半数代表選挙

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労使協定と過半数代表選挙

労使協定が昔に比べるとずいぶん増えています。
労働基準法は、労働条件の最低条件を定めたものです。本来はすべての職場で必ず守られなければなりません。この規準を下回ることは、たとえ労働者が同意したものでも無効であり、使用者が違反すれば罰せられます。
ところが労使協定は、これとは反対の意味を持ちます。つまり罰則を伴う最低基準を守らなくても使用者は罰則を免れてしまう仕組みです。だから、労使協定の定めのある条文はすべて、その前に罰則を伴う本来の定めがあるのです。
最も有名なのは36協定です。36協定を結ぶことによって使用者は、労働者を週40時間・1日8時間を超えて時間外労働させたり、法定休日に労働させても、労基法違反には問われなくなります。
労使協定の法的効果を「免罰的効力」と言います。使用者にとっては罰則を回避する免罪符みたいなものです。労使協定が増えていることは、それだけ最低基準があいまいになっていることを意味します。
ちなみに「労使協定」と「労働協約」は別物です。協約は、団体交渉で労使の合意が成立した内容を書面化したものです。労働組合法14条は、労働協約は書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印したものに法的効力を与えています。協定・覚書・確認書・了解事項…どのような名称やスタイルでも労組法14条に該当すれば労働協約です。
労働協約は、就業規則や労働契約よりも上位にあり、例えば労働協約で月給20万円と定めているのに、ある組合員は月給15万円の契約を結んだとしても、それは無効となり自動的に20万円に置き換えられます。

職場闘争の水路

もっとも、職場での実際の業務を進めたり、力関係などから協定に応じるしかない場合が多いとは思います。
しかし、労使協定の締結を通して、職場や組合の団結を強め、労働者の発言力を高めることはできるはずです。何しろ使用者が処罰を免れるための協定なのだから労使間の駆け引きは当然です。
労使協定の締結当事者は、過半数労働組合です。それがないときは労働者の過半数を代表する者となります。ところで労働基準法は、労働者の過半数を代表する者とあるだけで、その選出方法や任期は定めていません。
労働基準法施行規則によれば、①労働者の過半数を代表する者の適否を判断する機会が職場の労働者に与えられ、なおかつ②代表が使用者の指名など使用者の意向に沿って選出されてはならないとなっています。そして③挙手や投票など、当該事業場の過半数が支持していることが分かる民主的な手続きが必要――とされています。
労働組合員数がその事業場の過半数を組織している場合は、そのまま組合の代表者が過半数代表となります。やはり労働組合にとって過半数を制することは大きな使命です。また労働者代表選挙を労働組合結成に結びつけることもできると思います。代表選出選挙になれば、職場の中の運動や議論は活性化します。
いずれにせよ労使協定は、会社に免罰的効力を与えるわけですから労働者全体の労働条件に大きな影響を与えます。少数派の組合であっても団体交渉で労使協定の提示を要求することが必要です。会社派の多数組合が過半数代表者となっても、なんでも勝手に協定できるわけではありません。協定内容は労働者に告知する義務もあります。

法令上の労使協定

(※太字は、所轄労働基準監督署長への届出が必要な労使協定)

■労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合
■賃金から法定控除以外にものを控除する場合
■1ヶ月単位の変形労働時間制
■フレックスタイム制 / ■1年単位の変形労働時間制
■1週間単位の非定型的変形労働時間制
■休憩の一斉付与の例外 / ■時間外労働・休日労働
■割増賃金に代えて代替休暇を取得する場合
■事業場外労働のみなし労働時間制 / ■専門業務型裁量労働制
■年次有給休暇の時間単位付与 / ■年次有給休暇の計画的付与
■年次有給休暇の賃金を健康保険法に定める標準報酬日額で支払う場合
■衛生委員会・安全衛生委員会に労働時間等設定改善委員会の代替をさせる場合
■1歳6ヶ月に満たない子の育児休業の適用除外者
■要介護状態の対象家族の介護休業の適用除外者
■小学校就学前の子の看護休暇の適用除外者
■要介護状態の対象家族の介護休暇の適用除外者
■3歳に満たない子の育児のための所定外労働の制限の適用除外者
■3歳に満たない子を養育する者に関する所定労働時間の短縮措置の適用除外者
■65歳までの継続雇用制度の対象となる基準を定める場合
■雇用継続給付の支給申請手続を事業主が代理する場合
■雇用調整助成金の申請

ちば合同労組ニュース 第74号(2016年9月1日発行)より

雇用・労働法制をめぐる安倍政権の攻撃

〈ちば合同労組学習資料〉

雇用・労働法制をめぐる安倍政権の攻撃

ちば合同労働組合 2016/08/24 koyou-housei201608.PDF
このパンフレットは、
【1】労働者が団結して闘うことに展望を示したい。
【2】雇用・労働法制をめぐる安倍政権の攻撃。
【3】労働運動再生の道を示すCTS闘争。
――の3章構成の学習資料のうちの2章の部分を抜粋したものです。雇用・労働法制をめぐる安倍政権の攻撃の全体像を明らかにしたいと考えています。ご活用ください。

◎抜本的・根本的な安倍政権の雇用政策の転換

雇用・労働法制をめぐる安倍政権の攻撃は、本当に歴史的な転換、戦後労働法制の解体をめざす攻撃です。これは日本のみならずいま世界中で起きている問題です。
8月3日の内閣改造で、安倍首相が「次の3年間の最大のチャレンジ」という位置づけで「働き方改革」を提唱し、「働き方改革担当大臣」を新設しました。一億総活躍担当大臣が兼務しています。
安倍首相は記者会見で「最大のチャレンジは、『働き方改革』であります。長時間労働を是正します。同一労働同一賃金を実現し、『非正規』という言葉をこの国から一掃します」と述べています。
そして働き方改革担当大臣のもとに「働き方改革実現会議」も設置し、年度内をめどに、実行計画を策定すると言っています。

◎労働行政の大転換―労政審をまる無視

これ自体が労働行政の大転換です。建前とはいえ、労働問題は、使用者と労働者の利害が対立するので、労働法の改定や労働政策を変更するときには、厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会(労政審)の審議や調査が必要という慣習・仕組みになっています。
労政審は、公益・労働者・使用者の各代表10人の計30人で組織される三者構成方式を採っています。これはILO(国際労働機関)の原則に踏まえたものです。たとえば最低賃金法には、最低賃金を決めるとき政府は労政審の意見を反映させなければならないと規定しています。労働基準法や職業安定法などにも書いてある。
もちろんこれは建前で、労政審の労働者委員はすべて連合推薦です。労働貴族がちょっと建前っぽいことを言って、多少の歯止めをかける措置がつけ加えて、全体としては承認していく仕組みです。1990年代以降、こういう構図で労働法の後退・解体がドンドン進行したことは間違いありません。
ともあれ「長時間労働の是正」だとか「同一労働同一賃金の実現」を言うならば、厚生労働大臣が労政審に諮問して進めるのが、これまでの通常の流れです。 Continue reading →

16時間夜勤を合法化する労働基準法

jissen-hou-1 実践的に考える職場と労働法

16時間夜勤を合法化する労働基準法

労働時間とは?

今回は「労働時間とは何か」を考えてみたい。長時間労働の問題など論点は多様ですが今回は職場闘争の観点から。
労働時間はいつ、どこで、どんな態様で始まるのか。門から? タイムレコーダー打刻? 更衣室? 作業着手?
資本主義社会では、「時間」をめぐる問題は最も〝本質〟に関わる問題です。どんな経営者も、自分が支払った賃金以上に労働者を働かせることを最初から意識しています。〝時は金なり〟です。資本家は1分でも多く働かせたい。労働時間をめぐる闘争こそ労働組合にとって最も古く、そして中心的テーマです。
資本家は、単に8時間の労働力を買っただけではありません。その「瞬間刻々」を最大限の強度で使用したい。また機械や技術が陳腐化する前にできれば24時間リレー制で働かせたいと願っています。

実働1日38分増

かつて日本の工場は、工場の門を出入りする時間で労働時間を管理していました。8時始業なら8時に工場の門に滑り込んでタイムレコーダーに打刻すればセーフ。製鉄所など広い工場では、打刻後に構内バスで職場に行き作業着に着替えて仕事にかかるのが一般的でした。5時終業ならば4時半ぐらいに仕事を終え入浴して門まで行って5時に打刻すれば「終業5時」です。
これは経営者に言わせれば朝夕30分ずつ無駄に賃金を払っている。それで松下電器などで「現場到着制」が始まりました。工場の門にあったタイムレコーダーを作業現場に移動、職場に到着してから打刻させたのです。作業着に着替えて打刻、8時ジャスト作業開始!というわけです。
参考文献『労働基準法・実践の手引き』によれば三菱重工長崎造船所では、週休2日制とバーターで従来は労働時間とされた始業終業の関連行為(打刻・更衣・安全保護具の着脱・現場までの移動・洗面入浴など)がすべて時間外とされ、実働が1日38分延長されました。88年当時の年間出勤日数246日で掛けると「19日と3時間48分」、ほぼ1カ月の出勤日に相当する実労働時間の増加でした。
これに対する長船労組の闘いの成果がかの有名な「三菱重工業長崎造船所事件最高裁判決(作業着の着替えも労働時間/使用者の指揮命令下にあれば労働時間)」です。
私は不勉強でよく知らないのですが、職場闘争で有名な三菱長船労組です。その背後で激しい職場闘争を展開したはずです。研究課題です。

8時間制の解体

労働時間の原則(労働基準法32条)は「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない」「使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない」となっています。
お題目は画期的内容です。ですが法定8時間を強制する効力は実質ゼロです。使用者は36協定を締結して労働基準監督署に届ければ、時間外・休日にいくら長時間労働をさせても罰せられません。
しかも、36協定における上限となる労働時間についても労働基準法の定めはないのです。厚生労働大臣が上限を決めていますが(現在は週15時間・年360時間)、現実には「特別条項付き協定(エスケープ条項)」を許容しており無制限、そもそも過労死ライン(月80時間)超の限度時間を定める企業もあります。
調査によれば労働者代表と結ぶ36協定より労働組合と締結した方が延長時間は長い。

87年の大転換

介護施設では16時間の夜勤が当たり前です(ネットで検索してみて下さい)。なぜこんなに過酷な労働が合法なのだろうか!? 実は1987年の労基法改定で労働時間の大転換があったのです。
p0073_02_01a 労働時間の規定が「1日8時間・1週48時間」→「1週40時間・1日8時間」に変わりました(週40時間制に)。
「日」と「週」の位置が入れ替わったことに注意して下さい。もともとは1日の労働時間の上限があって、その上で1週の上限が決まっていました。ところが改定後は1週の労働時間の限度がまず設定され、1日8時間は1週40時間の〝割り振りの基準〟になったのです。
その狙いは変形労働時間制の拡大です。〈1日8時間の上限規制〉という考え方を解体して、平均して週40時間の枠内に収まれば良いという理屈を編み出したのです。
多くの介護職場で採用されている1カ月単位の変形労働時間制は、就業規則で一方的に制定できます。こんな過酷な働かせ方が〝合法〟だなんて、と叫びたい気分です。
看護師の夜勤制限をかちとったニッパチ闘争が必要です。介護職場で夜勤を制限させる職場闘争をどう形成するか。大きな課題です。みなさんのご意見を!(S)

ちば合同労組ニュース 第73号(2016年8月1日発行)より

職場の矛盾や弱点を見つけ出して闘いの糸口に

jissen-hou-1実践的に考える職場と労働法

今月から「実践的に考える職場と労働法」と題して連載を始めます。どんな職場でも闘いの手掛かりは必ずある。職場の矛盾や弱点を見つけ出して闘いの糸口にしたい――そういう気持ちで労働基準法や労働安全衛生法を実践的にチェックしたいと思います。合同労組やユニオンの運動にとって、〈労働者の権利の擁護〉は必須課題であり、動労千葉の「運転保安闘争」的領域と並ぶ労働運動実践の重要な要素ではないかと思います。
試行錯誤ですが『実践の手引き・労働基準法』(西村卓司・古谷杉郎著/91年)と『労働法第11版』(菅野和夫著/16年)を参考文献にして勉強しながら書いていきます。みなさんの意見・感想もよろしくお願いします。

職場の矛盾や弱点を見つけ出して闘いの糸口に

職場闘争の出発点

職場闘争の出発点として、労働基準法・労働安全衛生法と就業規則の読み込みは大切な一つの手だと思います。それだけで法律違反をいくつか発見できるはずです。門に入ってから門を出るまでの自分の行動を注意深く検討することで、さらに多くの法律違反や権利放棄の事実に気付くはずです。
憲法27条第2項「賃金・就業時間・休息その他の勤労条件に関する規準は法律で定める」を受けて労働条件の最低基準を定めたのが労働基準法です。労基法が労働者保護法と言われる由縁です。
労働法は、百年を超える長い労働者階級の闘いによって生まれたものです。法律それ自身が自立的に展開して労働者を保護しているわけではないことには留意する必要があります。〈闘いなくして権利なし〉です。

民法に優先される

労働法が民法と競合する場合は労働法が優先されます。

いわゆる市民法(民法)は、法の前に万人が平等であるという建前で〈契約自由の原則〉が優先されます。民法上では、労働者も資本家も平等だから契約自由の原則なのだというわけです。
しかし資本主義の世の中ではそれはうわべだけの話です。労働者を解雇する資本家と解雇される労働者が対等であるとの説明はとうてい納得できません。
契約の自由をタテにした資本家の支配や権利侵害に対して世界中の労働者の長い闘いによって、労働者の生活や権利を保護する労働法が生み出され、それは市民法に優先されるようになったのです。
「資本家も労働者も1対1の対等・平等」とする最近の傾向には本当に警戒が必要です。

07年には労働契約法が施行され、労働契約は労働者と使用者の合意が原則だと強調されるようになり、ますます労基法が後景化されています。
「本人が同意すれば労働時間規制は適用除外OK(残業代ゼロ制度)」「最低賃金以下でも本人が同意したならいいじゃないか」という安倍政権の論議は超危険です。

労働条件の最低基準

労働基準法の大半の条文は強行規定です。
強行規定というのは、当事者の意思や状況にかかわりなく無条件に適用される法規ということです。労基法違反の企業は刑事罰となり、法律の規準に達しない労働契約はその部分については無効となり労基法の最低基準が適用されます。労働法以外の法律では、無効のままで空白になるのとはずいぶん違います。
しかし、その内容がやはり最低基準にとどまっているのは、これが資本家の譲歩の限界だということです。

そもそも産業革命後の英国で最初に工場法が制定されたのは、資本家の熾烈な競争によって長時間労働や児童労働がエスカレーションし労働者の健康悪化と平均寿命低下が深刻化し、そもそも資本主義として維持できなくなる危機に陥ったからです。
最低基準の設定は実際には資本家の利益にためにあることも忘れてはならないと思います。
日本の労働者の現状が、最低基準の遵守をめぐって争われている現状は悔しい限りですが、ここが出発点です。

労働基準法や労働安全衛生法、労働契約書や就業規則を読み込むことは、職場で闘いを開始するにあたって、適切な闘争課題、闘争形態を選び出すために重要だと思います。労働者が警戒すべき点、利用できる点を知ることは大切なことです。(S)

ちば合同労組ニュース 第72号(2016年7月1日発行)より