実践的に考える職場と労働法/育児・介護休業法

実践的に考える職場と労働法

所定労働時間の短縮、残業・深夜業の制限も

育児・介護休業法

 育児・介護休業法は、1育児休業、介護休業の制度、2子の看護休暇、介護休暇の制度、3子の養育や家族の介護を容易にするための残業や深夜業の制限、所定労働時間の短縮などの措置――などを定めています。
 頻繁に制度が変わるので注意が必要です。制度・法律の基本的な知識を知り、有効に活用すれば闘いの大きな武器になると思います。

育児休業制度

 1歳に満たない子を養育する労働者は、開始予定日の前日までに事業主に申し出ることにより育児休業をすることができます。両親ともに育児休業をする場合は、最大で子が1歳2か月まで育休が取得できます。保育所に入れなかったなどの事情があれば1歳6か月まで可能です。
 育休中の賃金支払い義務は規程されていませんが、雇用保険から育児休業給付金が出ます。育休開始前の2年のうち1年以上、雇用保険に加入している労働者が対象です。
 給付額は、一時金などを除く賃金の約3分の2(67%)が支給されます(平均賃金日額×休業日数×67%)。育休開始から半年経過後は50%になります。休業制度と同様に給付金も最大で1歳6か月まで支給されます。
 育休中の健康保険や厚生年金の保険料は免除されます。

介護休業制度

 要介護の状態にある家族を介護する労働者も、2週間前までに事業主に申し出れば育休と同じように介護休業を取ることができます。
 介護休業は、同一家族について3回まで計93日間まで取得できます。介護休業給付金も育休給付金とほぼ同じで最大93日まで支給されます。
 育児・介護休業は、日々雇用労働者は適用除外となっていますが、それ以外はパートや契約社員、派遣社員も取得できます。
 要介護状態とは、病気やけが、高齢などで2週間以上の介護が必要な場合を指します。介護保険法の要介護認定ではありません。対象となる家族は、事実婚を含む配偶者・実父母・配偶者の父母・子、同居かつ扶養している祖父母・兄弟姉妹・孫です。親以外でもOKです。

子の看護休暇

 小学校に入る前までの子を養育する労働者は、1年間に5労働日まで、けがや病気の子の世話や通院のための休暇を取得できます。半日単位で使うことも法律に規程されています。子が2人以上の場合は10日まで取得できます。
 病気は風邪などの短期で治る病気でも、小児ぜんそくなどの慢性疾患でも特に制限はありません。予防接種などもOKです。
 厚労省の通達では、書面の提出に限定されておらず当日、電話で口頭で申し出ることも可能としています。年次有給休暇と違い、使用者は時季変更もできません。有給・無給の賃金の扱いは法律で規定していません。

介護休暇

 要介護状態にある家族の介護を行う労働者は、1年に5日(2人以上の場合10日)まで介護休暇を取ることができます。こちらも半日単位の利用も可能です。対象家族は、介護休業と同じです。食事介助などの生活介護だけでなく、必要な買い物や書類の手続きでも利用が可能です。

残業の制限

 3歳までの子を養育する労働者、要介護状態の家族を介護する労働者が請求した場合、事業主は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定労働時間を超えて労働させてはなりません(育児・介護休業法の規程)。
 また小学校に行く前までの子を養育する、あるいは家族を介護する労働者が請求した場合、事業主は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、残業は、1月に24時間まで、年に150時間までに制限されます。

深夜業の制限

 小学校前の子の養育、家族介護の労働者が請求したときは、上記と同様に、事業主は午後10時から午前5時までの深夜時間帯に労働させてはなりません。

所定労働時間の短縮

 育児休業をしないで3歳前の子を養育する労働者が申し出たら、所定労働時間を短縮し、労働者が働きながら育児を容易にする措置(育児のための所定労働時間の短縮措置)を講じなければなりません。

家族を介護する労働者に関する措置

 介護休業をしていない労働者からの申し出により、所定労働時間の短縮その他、労働者が就業しつつ家族を介護することを容易にするための措置を講じなければなりません。

 ※

 上記の規程は、それまでの雇用期間が1年未満や、週2日以下勤務の労働者は除外などの規程もありますので、注意して下さい。厚生労働省が出している「育児・介護休業法のあらまし」という分厚いパンレットはそれなりに参考になります。

ちば合同労組ニュース 第85号 2017年8月1日発行より

実践的に考える職場と労働法/派遣法の2018年問題

実践的に考える職場と労働法

労働契約法・派遣法の18年問題

 今回は、いわゆる「2018年問題」について整理したいと思います。無期転換ルールとは、12年改定の労働契約法により「有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合は、有期契約労働者の申し込みにより期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換される」というものです。
 図のように13年4月1日以降の労働契約が対象となり、契約期間が1年の場合、その5年後の18年4月から無期転換申込権を持つ労働者が存在することになります。
 もっとも全員が18年4月から無期転換申込権が発生するわけではなく、例えば3年契約の場合はすでに16年4月で発生した人もいます(図)


 労働契約法18条によれば、無期転換申込権が発生した労働者から無期転換の申し込みがあった場合、使用者は申し込みを承諾したものと強制的にみなされて拒否できません。つまり申し込んだ時点で無期労働契約が成立します

2017年問題

 「18年問題」としてテレビや新聞で取り上げられていますが、実際には、企業側が「2017年中に契約更新をやめてしまおう」と雇い止めする17年から18年3月が大きな焦点となります。
 もう一つの18年問題が労働者派遣法です。派遣法が15年に改悪され、派遣会社と有期雇用契約を結ぶ派遣労働者は、同じ職場で働けるのは3年となりました。これは15年10月1日から適用され、18年9月30日が3年(抵触日)となります。
 他方、派遣法改悪で、「無期雇用派遣労働者」として派遣会社と雇用契約を結べば、3年ルールが適用されず無期派遣が可能となりました。
 大手派遣会社も軒並み導入しています。とはいえ無期雇用の場合、派遣契約が解除となって次の派遣先が決まるまでの間も派遣会社は賃金を支払わなければならず、「優秀なスタッフを囲い込むだけの制度だ」と批判されています。
 派遣労働者については話が少し複雑で、上記のように派遣受入期間の3年ルールによって派遣切りが行われる可能性がある上に、派遣法改悪前までは期間の定めのなかった26業種の派遣労働者で15年10月1日以前から継続して5年以上の雇用契約がある場合は、18年4月1日に労働契約法の5年ルールの問題が生じるので、派遣先・派遣元の双方から派遣切り・雇い止めがなされる可能性があります。
 いずれにせよ、2018年4月を前にして、無期雇用転換や派遣法の抵触日による無期雇用や直接雇用を拒んで契約を打ち切る企業が一斉に出てくる可能性が「18年問題」「17年問題」です。

限定正社員化

 法律では無期雇用転換は、契約期間のみが無期なだけで、それ以外は従前と同一の労働条件です。つまりパートや契約社員の労働条件のまま雇用期間だけ無期にするものです。政府の狙いは「限定正社員」化です。この場合、「無期」といっても従来の正社員とは違います。地域限定・職務限定であり、店舗や工場が閉鎖になったり、その業務が縮小・廃止になれば解雇できるというものです。
 結局、近年の深刻な人手不足を解消し、なおかつ低賃金のままで、しかもいつでも解雇できる〝雇用〟を創出しようとしているのです。ユニクロやスターバックスなどがこの方向でパートや契約社員の限定正社員化を進めています。
 他方で、早稲田大学や東北大学など、5年ルールの適用を免れようと5年以内の更新回数制限や雇い止めが大きな焦点になっています。
 JR東日本の子会社であるJR千葉鉄道サービス(CTS)も、契約・パートについては最長5年で雇い止めとし、選別した労働者のみを無期転換するという脱法制度の就業規則化を強行しました。これについては動労千葉の闘いによって、希望者が「65歳まで働きたい」と表明すれば全員を無期転換すると団体交渉で明言させました。

労働局の指導も

 無期転換を逃れようとして有期雇用労働者に3月末での雇い止めを通告していた一般財団法人消防試験研究センターに対し、東京労働局が是正指導し、争議は雇い止め撤回で和解したことがニュースになりました。東京労働局の指導は大きなインパクトを与えているようです。
 5月6日付の東京新聞には非正規労働者の85%が無期転換ルールを知らないと報じていました。おそらく18年4月を前に年末から来年3月にかけて焦点となることが予想されます。安倍政権の進める労働法制と雇用破壊、さらには個々の企業の雇い止めに対して、労働組合としてあらゆる戦術を駆使し、抵抗し、反撃し、闘いをつくっていく必要があります。組合員のみなさんの意見と議論をお願いしたいと思います。

ちば合同労組ニュース 第83号 2017年6月1日発行より

実践的に考える職場と労働法 健康診断の実施

実践的に考える職場と労働法

事業者による健康診断の実施

職場環境改善の措置を講じさせる

 労働者の健康管理のための重要な手段として健康診断があります。健康診断は個々の労働者の健康状態を把握するために必要なだけでなく、労働者の健康状態から作業環境管理や作業管理の問題点を発見し、改善を図るためにも必要です。
 労働安全衛生法は事業者に各種の健康診断の実施を義務づけています。
①雇入れ時健康診断
②定期健康診断
③特定業務従事者の健康診断
④海外派遣労働者の健康診断
⑤給食従業員の検便
 ①雇入れ時健康診断は、常時使用する労働者を雇い入れる時に事業主に実施が義務づけられています。ちなみに「採用選考時の健康診断」ではありません。雇入れ時健診は、労働者を雇い入れた際における適正配置や入職後の健康管理のためであって、応募者の採否を決定するために実施されるものではありません。
 ②定期健康診断の対象は常時使用する労働者となっています。パートなど短時間労働者も1年以上働く見通しで所定労働時間の4分の3以上であれは一般検診が必要です。
 所定時間の2分の1以上働く労働者については実施が望ましいとの通達もあります。
 定期検診は、1年以内ごとに1回、定期に一定の項目について医師による健康診断を行うものです。有毒ガスや粉じんなどを発する場所での業務、月4回以上の夜勤に従事する労働者については特定業務従事者として6か月に1回の定期検診が義務づけられています。

特殊健康診断

 一定の有害業務に従事する労働者については、一般検診に加えて特殊健康診断の実施が義務づけられています。
 放射線業務などの有害業務に従事する労働者は、雇入れ時、配置換えの際、一定期間以内ごとに、定期に、それぞれの業務に定められた特別の項目について医師による健康診断が必要です。鉛中毒とか石綿による肺がんなどターゲットを定めた診断です。
 有害業務に起因する疾病は、発症までの潜伏期間が長いものあるので、このような業務に従事した労働者は、従事しなくなった後においても疾病の早期発見を図る必要があるので、事業者に対して有害業務から他の業務への配置換えの後も定期的に特定の項目について健康診断を義務づけています。
 さらに退職や倒産による労働者の離職後は、健康管理手帳によって、政府の費用によって定期に健康診断を行う仕組みになっています。

必要措置の実施

 労働安全衛生法は、健康診断の実施を事業者に義務づけており、労働者にも受診義務を規定しています。もっとも労働者にも医師選択の自由があるので、事業者が指定した医師による健康診断を希望しない場合は、他の医師による診断結果を事業者に提出しても良いことになっています。
 また深夜業に従事する労働者については、健康に不安を感じ、次の健康診断を待てない場合には自ら健診を受診して、その結果を事業に提出できるとする規定があります。事業者は、診断の結果に基づいて医師等からの意見聴取などの措置が必要となります。
 健康診断の結果、異常の所見があると診断された労働者については、事業者は、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師・歯科医師の意見を聴かねばならず、その意見を勘案し、当該労働者の就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などの措置、作業環境測定の実施などの措置を講じなければなりません。
 事業者は、健康診断を受けた労働者に対して、その結果の通知が義務づけられています。特に健康の保持に努める必要があると認める労働者には、医師または保健師による保健指導を行うように努めなければなりません。
 定期健診については、健康診断結果報告書を労働基準監督署に提出しなけれなりません。常時50人以上の労働者を使用する事業者、特殊検診に係る事業者には提出が義務づけられています。報告書には産業医の署名または記名押印が必要です。

費用は会社負担

 健康診断の費用については、法で事業者に実施の義務を課す以上、当然、事業者が負担すべきものです。
 検診に要した時間についての賃金の支払いは、当然必要だと思いますが、通達では一般検診は一般的な健康の確保のためであり業務遂行との関連において行われるものではないので、事業主の負担が望ましいとされています。
 特殊検診は、事業の遂行にからんで実施されなければならず、当然、所定労働時間内に行われるのが原則であり、時間外に行われた場合には割増賃金も必要です。
ちば合同労組ニュース 第82号 2017年05月1日発行より

共謀罪は戦争のための団結禁止法

共謀罪は戦争のための団結禁止法

対象は歴史的にも現在的にも労働組合

「この法律がなければオリンピックは開けない」
 安倍首相はこう言って新共謀罪(テロ等準備罪)の制定を急いでいます。この法律は、過去3回にわたって国会で廃案になった世紀の悪法です。
 共謀罪とは、2人以上の者(集団)が、〝犯罪〟を行うことを話し合い、合意する(共謀)することで成立する犯罪のことです。こうなると、電話やメール、SNSの「いいね」のような相談の段階で捜査が可能となります。盗聴や尾行など捜査を含むの広範囲にわたり警察権が広がることが予想されます。
 「やましいことしていないから自分には関係ない」という人がいるかもしれません。しかし、国会では「犯罪を実行する団体に一変したと認められる場合には組織的犯罪集団に当たり得る」と「一般人にも適用可能」という見解を示しています。
 イラスト(東京新聞より転載)のように基地に反対する運動などが対象だと指摘されれていますが、労働組合や市民団体の活動はすべて対象になります。
 現代の治安維持法と言われる由縁は、日本が戦争を始めた時に労働運動や市民団体に対して治安維持法型の弾圧・規制を可能にする法律だということです。実行行為がなくとも「共謀」「準備」で組織体に網をかけて弾圧できる法律は、戦後日本の法律としては異質・異例としか言いようがなく、治安維持法との共通点が強く指摘されるのは当然です。
 この間、秘密保護法をはじめ、国家にとって都合の悪い情報の開示を徹底的に制限する一方で、マイナンバーをはじめ人びとの情報は徹底的に管理する手法が進められています。他方で森友学園事件のような疑獄事件の事実は国会でまともに明らかにしません。共謀罪の導入は、基本的人権や労働3権と同じく、人間が生きるための基本的な権利を奪うことです。

 世界で最初に共謀罪が制定されたのは英国です。その対象はズバリ労働組合でした。労働組合の活動は、労働の自由な取引を制限するコンスピラシー(共謀)であるとして、労働組合の結成自体が違法にされたのです。
 ストライキどころか労働組合が決めた標準賃金以下で働くことを労働者たちが拒否することも共謀罪として犯罪になりました。労働者が団結して要求したり、抗議すること自体が犯罪だとという考え方です。激しい弾圧と労働者の闘いの結果、1824年にようやく共謀罪は廃止され、団結権が合法化されたのです。
 この間も、アムネスティや青法協(弁護士団体)などさまざまな人権団体や宗教団体、滞日外国人の団体が警察の監視対象になっていた事実が暴露されています。上のイラストは市民団体ですが、これはそのまま労働組合にも当てはまります。
 これまでも労働組合の争議行為を会社と警察と結託して威力業務妨害罪や建造物侵入罪などでデッチあげ、組合活動を刑事事件の対象としてきました。
 千葉県警は昨年、ユニオン習志野が組合事務所を借りたことが「詐欺」だとして逮捕しました。共謀罪ができれば組合活動が丸ごと犯罪として捜査の対象になりかねません。労働者の団結を共謀として取り締まることに私たちは怒りと危機感を覚えずにはいられません。
 逆に、個人がバラバラにされるような時代の流れに抗して、労働者同士が団結してつながっていくことで共謀罪の狙いははね返せます。
 新共謀罪は5月連休明けにも、衆院通過とも言われています。職場の労働者どうしで議論を交わし、労働組合として全力で成立阻止へ闘いましょう。(K)

ちば合同労組ニュース 第82号 2017年05月1日発行より

実践的に考える職場と労働法 労働3権と労働組合法

実践的に考える職場と労働法

すべては団結することから始まる

労働3権と労働組合法

 労働組合の結成やその活動を(保護も含めて)規制しているのは労働組合法という法律です。1条は、法律の目的として「労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させる」と書いています。
 労働組合法は、労使対等の理念に基づく団体交渉をアシストし、そのための団結や団体行動を擁護するものです。
 憲法28条は「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」とストレートに団結権を擁護していますが、労働組合法は「労働力の集団的な取り引き」のために団結権や団体交渉も認めるという構図になっています。
 もっと単刀直入に団結する権利自体を労働組合法で擁護すべきだと私は思います。
 いずれにせよ団体交渉の助成という法律の目的と枠組みに沿って、労働組合法は、刑事免責(1条2項)や民事免責(8条)を規定し、さらには法人格の付与(11条)や不当労働行為制度(7条・27条)、労働協約の規範的効力(16条)・一般的拘束力(17条・18条)を規定し、積極的な保護を与えています。

団体交渉

 団体交渉に関して労組法1条は「正当な団体交渉については刑法第35条の適用がある」とし、刑事責任は問われません。また団体交渉をしたことや発言を理由にして、「解雇やその他不当な取り扱いをしてはならない」(7条)としています。
 また労組法7条は「使用者は正当な理由がなければ団体交渉を拒否することができない」とし、団交を拒否すれば不当労働行為、法律違反となります。使用者側は

①組合員名簿や規約の提出
②組合の要求が過大である
③忙しくて交渉時間がない
④従業員以外の者の出席
⑤組合員は従業員以外ダメ
⑥要求の中に人事権や経営権など交渉の対象にならない事項がある
⑦出席人数を制限しろ

 ――などを理由に交渉を拒否するケースがありますが、①は組合への内部干渉、②要求過大と交渉するしないは別問題、③別の日時を提案、④誰を交渉員するかは組合の自由、⑤組合員の範囲は組合自治、⑥労働条件に影響があるものは交渉事項、⑦交渉委員の数は組合が決めること……であり、いずれも交渉拒否の理由にはなりません。

労働協約

 労働協約は、労働組合と使用者との間で組合員の賃金、労働時間、休日・休暇などの労働条件や、労働組合と使用者との関係に関する事項について団体交渉で合意に達した事項を①書面にし、②労使双方が署名または記名押印したものをいいます。
 この2つの条件を満たしていれば、「協約」「覚書」「確認書」などの名称やスタイルにかかわらず労働協約としての効力があります。労働協約は、労働契約や就業規則に優先して使用者と労働者との関係を決める効力があります。

争議行為

 労働組合の正当な争議行為は、刑事上の処罰や民事上の責任が免除され(労組法1条2項、8条)、さらに不当労働行為制度で保護されます。
 ストなどの争議行為で業務の運営を阻害しても刑事上の罪にならず、使用者は損害を受けても、組合や組合員に対し損害賠償請求できません。また争議行為の指導・参加を理由に解雇などの不利益な取り扱いはできません。
 スト権は、組合規約に基づき組合員または代議員の直接無記名投票の過半数による決定が必要です。一般にストは開始よりも収拾が難しく、組合内部の意思統一などをしっかり行う必要があります。

不当労働行為

 労組法は、使用者が行ってはならない反組合的行為を不当労働行為として禁止しています(労組法7条1項)。不当労働行為に対しては、団体交渉や争議ではね返し、団結権を回復することがまずは大切です。その一環として労働委員会に救済の申し立てもできます。労組法が禁止する行為は次の通りです。

1. 不利益取り扱い(組合員であること、組合に加入・結成を理由に解雇その他の不利益取り扱い)
2. 黄犬契約(組合に加入しない、脱退を雇用条件にする)
3. 団体交渉の拒否
4. 支配介入(組合の結成や運営に使用者が介入)
5. 経費援助(組合の自主性・独立性を損なう費用援助。交渉時の勤務解除や最小限の事務所提供はOK)
6. 労働委員会の申し立てを理由とした不利益取り扱い
 労働委員会は、不当労働行為かどうかを判定し、救済命令を出します。二審制で都道府県労働委員会と中央労働委員会があります。(S)

ちば合同労組ニュース 第81号 2017年4月1日発行より

実践的に考える職場と労働法/労災保険制度の歴史と仕組み

実践的に考える職場と労働法

故意・過失の有無問わず労災の補償

労災保険制度の歴史と仕組み

 かつて労働災害の補償は、労働者や遺族の側に、使用者に過失があったこと、さらには使用者の過失と災害との間に因果関係があることの立証が要求されました。大変な手間と費用などが必要でした。しかも労働者側に過失があれば過失相殺によって賠償額は減額されました。
 労働災害をめぐる長い苦闘の末、〈そもそも労働災害は企業の営利活動に伴う現象であり、企業活動によって利益を得ている使用者に当然に損害の賠償を負わせて労働者を保護しなければならない〉との考えが社会的に形成され、やがて法律として労災補償が制度化されました(法律は労基法と同じく1947年)。
 こうして、雇用に起因して生じた事故による負傷や疾病、障害や死亡、職業病などについて、使用者は、故意・過失の有無を問わず労災補償を労働者になすべきこととなったのです。
 労災保険は、使用者の加入が強制的に義務づけられている政府運営の保険制度で、被災労働者に対する使用者の補償責任を保険料(と一部国庫)を財源として補填します。
 労働者を一人でも使用している事業主は原則として強制加入。現在では小規模な個人経営の農林水産業を除く全事業が強制適用事業となっています。保険料全額を事業主が支払い、その事業所で働く労働者の賃金総額に保険料率を掛けて算出します。
 保険関係は、届出とは関係なく、事業が開始された日に法律上当然に成立します。事業主は10日以内に届出を出す義務がありますが、仮に未届けで保険料を収めていない事業所での労災でも労働者への保険給付は行われます。この場合、事業主は保険料を追加徴収され、故意や重大過失の場合には保険給付に要した費用も徴収されます。

労災認定

 業務災害の認定に必要な条件として、「業務遂行性」と「業務起因性」が挙げられます。簡単にいうと、その業務に従事していれば、ほかの人でも同様の災害が生じる可能性があった場合は、おそらく労災に該当すると思います。
 そもそも「業務遂行性」「業務起因性」は、法律による根拠がない厚生労働省独自の基準です。労災認定の枠を限定しようとする傾向に多くの労働者や遺族が苦闘してきた歴史でもあります。
 近年は、脳・心臓疾患の業務災害に関する判断については厚生労働省の判断基準にとらわれず労働者に比較的有利な判断をするケース、精神障害による自殺について労働基準監督署長の業務外認定を覆す裁判例も増えています。
 石綿による疾病の業務上認定についても長く放置されてきましたが、21世紀に入ってから健康被害の拡大と長期進行性が社会問題化し、石綿健康被害救済法が制定され、医療費や療養手当の支給、労災保険上の遺族補償給付に準じた特別遺族給付などが行われるようになりました。
 業務中、トイレに行く途中で転んで骨折した場合なども業務災害となります。出張中の業務災害も広く認められます。自然現象による災害も、職場に定型的に伴う危険であれば業務起因性があります。阪神大震災や東日本大震災による災害も多くが業務上の認定を受けています。

保険給付

①療養補償給付:診察、薬材・治療材料の支給、処置・手術、入院など

②休業保障給付:療養のための休業の4日目から支給。1日につき給付基礎日額の6割。これに加え2割の休業特別支給金で計8割を補償

③障害補償給付:治癒後に障害が残ったとき、その障害の程度に応じて年金や一時金

④遺族補償給付:原則的には年金、例外で一時金
 その他、葬祭料や介護補償給付などがあります。通勤災害については、療養について200円の一部負担金があるほかは業務上災害と同じ内容の保険給付です。

労災隠し

 建設現場は重層的な請負関係が大半なので建設現場を一つの事業単位とみて元請が一括して保険関係の適用を行うことになっています。下請B社や孫請C社の労働者がケガをした場合でも、元請A社の労災保険を使って保険給付が行われます。
 ところで、労災保険には労災事故が少ないと保険料が安くなり、事故が多いと保険料が高くなる〝メリット制〟という仕組みがあります。建設業は保険料率も高いので大規模な建設現場になるほど保険料の額が大きくなり、メリット制の影響も拡大します。
 このため、元請企業の圧力や下請の自主規制で「治療費はすべて面倒みるから健康保険で治療してくれない?」という「労災隠し」が起きるわけです。こうなると労災原因も究明されず、ケガが悪化した場合の補償もなされません。〝ケガと弁当は自分持ち〟の悪弊は昔の話ではありません。

ちば合同労組ニュース 第80号 2017年3月1日発行より

連載・介護労働の現場から〈働き方編8〉 それ労基法違反

連載・介護労働の現場から〈働き方編8〉

それ労基法違反ですから

 介護業界は、人手不足と命を預かる現場だからという理由で、労働基準法違反の労働慣行が平気でまかり通っている。違法な職場ルールをチェックしてみよう。

①サービス残業

 人手不足だと、当然、時間内に仕事が終わらない。次のシフトにその仕事を押しつけて、「ハイ、さよなら」と帰ることはできない。
 それに、利用者に不測の事態、救急搬送とか介護拒否がある場合、これも帰れないで、何時間もの残業になったりする。
 あと、委員会やイベントの準備は業務時間内に時間がとれないので残ってやるのが暗黙のルールで、職場の人間関係上、「帰れない」。
 問題は、それがほとんどの介護の現場でサービス残業になっていることである。なぜタダ働きなのか? 残業未払い問題は、働き方改善の突破口なので、稿を改めて論じたい。

②欠勤は代理を探さないと認めない

 介護現場はシフト制。決まったシフトに欠員がでると、業務がまわっていかないので、代わりのスタッフを探さなければならない。でも、それがなぜ労働者の義務なのか? 欠員の補充は事業者側の責任。「代わりの人がいないなら出勤して」という命令は違法。欠員対応は事業者にまかせましょ。

③遅刻・欠勤の罰金制度

 遅刻や欠勤を減らすために、遅刻30分5千円、欠勤5万円減給なんてペナルティ、信じがたいが、介護業界にはまだまだある。減給は就業規則に記載がなければ違法。就業規則にあっても、労基法では、1回の額が平均賃金1日分の半額を超えないこと、額が月給の賃金の10分の1を超えないことという上限が決まっている。激務で体調壊して休んでいる人間から、さらに大金をぼったくる雇い主にだれがついていくかよ。
 ④時間外の仕事や連絡
 オフの日でも、電話やメールをバンバンよこして、業務対応させたり、職場に来るように呼び出す。呼び出しで出勤しても、休日扱いで賃金払わない。これも労基法違反ですから! 

⑤有給休暇を理由によって却下

 いちいち有休の理由を聞いたり、書かせたりする職場がある。「遊びに行くなら出勤してよ」「家族旅行、他の日に行けないの?」とうるさい。理由は「私用」だけで充分。労働者に有休日を決める権利がある。ただ、事業者は「時季変更権」というのがあり、繁忙期などは取得をずらしてくれないかをお願いする権利はある。
 これ以外にも多々あるが、業界に巣くう暗黙のルールなんか無視して、まず勇気をだして「それ、労基法違反ですから!」と言ってみよう。(あらかん)

ちば合同労組ニュース 第80号 2017年3月1日発行より

職場と労働法 年間1千人を超える労災死亡者の現実

実践的に考える職場と労働法

今なお年間1千人を超える労災死亡者の現実

あなたの職場の安全衛生は?

労働災害で死亡する労働者は今なお年間1千人を超えます。戦後の労災死亡累計は20数万人。日清日露戦争の戦死者数を超えます。高度経済成長末期で労働者の安全は二の次だった1971年の労災死亡は6712人とピークを記録。翌年、労働安全衛生法が制定されると75年には年間3725人に激減しました。
労働安全衛生法規が〈先人の血で書かれた文字〉と言われる由縁でもあります。
安全衛生は、労働者の生命・身体・健康を守る最も根源的な労働条件です。職場に存在する危険を減らし、設備・環境・体制を整えて、事故や病気を発生させないことは何よりも大切なことです。
しかし、効率や経済性のために安全衛生がしばしば犠牲になるのが現実です。生活の糧を稼ぐために危険な仕事をせざるをえない場合、労働者の直接的な関心の対象にはならない面もあります。
安衛法は、事業者とその他の関係者に対して、①職場における安全衛生管理体制の整備、②危険・健康障害の防止措置の実施、③機械・有害物などに関する規制、④安全衛生教育・健康診断などの実施――を義務づけています。
案衛法の行政監督の仕組みは基本的に労働基準法と同じで、罰則や労働基準監督制度による監督・取締りも行われます。

安全衛生管理体制

一定規模以上の事業場は、総括安全衛生管理者を選任し、その下に所定の資格をみたす安全管理者および衛生管理者を選任することが義務づけられています。労働者の健康管理を担当する産業医の選任や特定作業について作業主任者の選任も定めています。
もちろん一定規模に満たない小さな職場でこそ安全衛生体制は大切です。10人規模以上の職場で工業的な職場では安全衛生推進者、それ以外の職場では衛生推進者が必要です。10人以上が働いていればどんな職種でも衛生推進者が必要です。みなさんの職場ではどうでしょうか?
さらに製造業や運送業などで常時50人以上が働く職場では安全委員会、その他の業種の事業場では衛生委員会の設置が義務づけられています。議長以外の委員の半数は、事業場の過半数組合・代表者の推薦により指名されます。
衛生委員会は、衛生に関する重要事項について調査・審議して事業者に意見を述べます。長時間労働やメンタルヘルス対策も衛生委員会の付議事項です。
常時50人以上の労働者を使用する使用者は産業医を選任しなければなりません。産業医は、健康状態に問題のある労働者を発見した時は事業者に対して休ませたり作業を軽減させるなどの措置を勧告できます。産業医は毎月1回は職場巡視し作業実態をチェックしなければなりません。
産業医が職場巡回しないなど形骸化したり、主治医が職場復帰を認めたにも関わらず会社の意向に沿って「復帰不可」と判断するなど問題ある産業医もいます。

健康診断

労働者を1人でも使用している事業者は、雇い入れ時と年1回の健康診断を実施しなければなりません。費用は事業主の負担が原則です。事業者が健康診断の実施義務を怠った場合は50万円以下の罰金となります。しかし一般健診は、業務遂行との関連において行われないとして賃金の支払いは義務づけられていません。厚生労働省は賃金支払いが望ましいとは言っています。有害業務に従事する労働者が対象の特殊健康診断は、所定労働時間内の受診が原則で賃金支払いは必須です。

安全衛生教育

「労働者の危険又は健康障害を防止するための措置」では、事業者の講ずべき措置として「危険防止措置」「健康障害防止措置」「作業場の整備措置」「作業場からの退避措置」「労働者の救護措置」などが規定されています。
「機械等並びに危険物及び有害物に関する規制」と合わせてボイラーやクレーンなどの検査証、機械の防護措置、危険物・有害物の製造禁止や有毒性の調査などが規定されています。
「労働安全衛生規則」をはじめ、「ボイラー及び圧力容器安全規則」「クレーン等安全規則」「四アルキル鉛中毒予防規則」「電離放射線障害防止規則」「粉じん障害防止規則」「事務所衛生基準規則」などの詳細な規則が体系的に設けられています。
安全衛生教育の実施や無資格者の就業制限などを定めた「労働者の就業にあたっての措置」として3種類の安全衛生教育が定められ、雇い入れ時にすべての業務について安全衛生教育が義務づけられています。危険有害業務や職長着任時にも特別の安全衛生教育が必要です。これらは臨時労働者を含むすべての労働者が対象です。
仕事中に発生した労働者の傷病事故は労災保険で補償されます。バイトや日雇い労働者もすべて対象です。労災保険料は労働者の負担はなく、事業者が支払う賃金総額に掛金がかかる仕組みです。詳しくはまた今後に紹介したいと思います。

ちば合同労組ニュース 第78号(2017年1月1発行)より

実践的に考える職場と労働法-賃金/賃金闘争の闘い方

jissen-hou-1実践的に考える職場と労働法

賃金/賃金闘争の闘い方

賃金は、労働者にとって生活を成り立たせるための重要なものであり最重要の労働条件の一つです。
労働基準法には、労使が対等の立場で決定することを原則としつつ、法律でその支払い方法などについて様々な保護規定を置いています。
労働基準法では、賃金については、労働契約の締結時と就業規則において労働者に必ず明示しなければならない事項として規定されています。
「賃金規定」「給与規定」を就業規則とは別の規則として作成し、社員に見せない使用者がいます。賃金規定も就業規則の一部なので周知義務もあります。もちろん、その作成・変更にあたっては所定の手続きが必要となります。つまり、賃金規定の改定は一方的にはできないのです。
労基法では、労働協約・就業規則・労働契約であらかじめ支給条件が明確になっているもの(慣行も含む)は、すべて賃金とされ、以下の法的保護を規定しています。
とはいえ、最低賃金の設定や各種差別待遇の禁止などの規制はありますが、賃金の決定そのものについては、つまり賃金体系・ベースアップ・定期昇給・人事考課などは、労使で自主的に決めることになります。

賃上げ春闘

従来、日本の労働者の賃金は、定期昇給とベースアップが昇給の一般的な形態でした。定昇は、一定の時期に年齢や勤続年数、職能資格の上昇に伴って賃金額が年功的に上昇する仕組みです。ベースアップは、賃金の基準額(賃金表)そのものを改定し賃金の全体的底上げを行うことを指します。
日本では、1955年ごろから全国一斉の春闘が始まりました。鉄鋼・電機・造船・自動車などの民間主要企業で妥結された結果が「春闘相場」を形成し、この相場が他産業・他社の交渉、組合のない企業の賃上げ額などにも影響を与えました。公務員の賃金(人事院勧告)にも連動しました。
かつては春先になると春闘ストライキで交通機関が止まるニュースが流れました。街中に組合の赤旗がたなびきました。春闘ストを指導したとして日教組の委員長が逮捕されこともあります。
動労千葉の中野前委員長は、労働者を分断する一番基本的でオーソドックスな手段は賃金であると指摘し、それを賃金闘争の重要性の理由としています。「賃金闘争で一番大事なことは、賃金と賃金闘争を通しての分断攻撃を許さないこと」と言っています(中野洋著『甦る労働組合』)。
近年、賃金の集団的決定が著しく後退し、個別賃金化が進んでいます。これを打ち破る賃金闘争が求められています。確かに会社は、労働者には容易に把握できない複雑怪奇な賃金体系をつくります。
これによって「会社の言うことを聞けば賃金を上げる(逆も)」「会社が儲かれば労働者もよくなる」という考えに染まっていきます。労働者の分断を打ち破って団結を生み出す大幅一律賃上げの闘いが必要です。
千葉県の最低賃金は10月1日から時給842円となりました。東京は932円。これ以下の労働契約は無効となり、最低賃金額に書き換えられます。罰金は50万円。

賃金の支払方法

賃金を確実に支払わせるための4原則は以下の通り。

1通貨払原則 通貨による賃金支払いを義務づけ、価格が不明瞭で換金に不便な現物支給を禁止しています。労働者が真に自主的に同意すれば銀行口座への振込はOK。労使協定で定期券の現物支給などもできます。

2直接払原則 親権者・親方・仲介人・代理人など第三者による中間搾取を防止するための規定です。賃金の差し押さえも4分の3の部分は禁止されています。

3全額払原則 戦前の芸娼妓契約が典型ですが、親が多額の金銭を借り受け、子どもが無報酬で働いて借金を返すような不当な人身売買・労働者の足止め策は、労基法17条で禁止されていますが、直接払・全額払原則にも違反します。

4毎月一回以上一定期日払原則

休業手当

使用者の責めに帰すべき理由による休業の場合、使用者は、平均賃金の6割以上の休業手当を支払う必要があります。民法では、賃金全額を請求できます。
労基法上の休業手当は、労働者の生活保障のために、使用者の帰責事由をより広い範囲で認めています。使用者に故意や過失がなく防止が困難なものであっても、使用者側の領域で生じた、機械の故障や検査、原料不足、官庁による操業停止命令なども含むと解釈されています。
未払い賃金の時効は2年、退職金は5年です。労働基準監督署に申告して指導・勧告させることもできます。
倒産した場合、労働者健康福祉機構の未払賃金立替払制度が倒産した企業に代わって8割を支払ってくれます。

ちば合同労組ニュース 第77号(2016年12月1日発行)より

職場闘争と労働基準監督署の活用

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職場闘争と労働基準監督署の活用

みなさん、労基署に行ったことありますか?
労働基準法7章は、監督機関や罰則を定めています。監督の仕組みは、国の直轄機関として厚生労働省労働基準局→都道府県労働局→(管内)労働基準監督署があり、これらの機関には労働基準監督官が配置されています。
都道府県労働局長、労働基準監督署長などのポストは労働基準法によって、専門職員として独自に採用された労働基準監督官であることが要件となっており、その罷免には労働基準監督官分限審議会の同意を必要とします。これは、強力な監督権限を持つ監督官の資質の保障と、政治的圧力に左右されない身分の安定のためとされています。
労働基準監督官については、ちょっと前に竹内結子が主演した連続テレビドラマ『ダンダリン/労働基準監督官』で描かれました。
労基署には、監督・安全衛生・労災補償などの部署があります。
「監督業務」は、労働条件の最低条件を定める労基法や労働安全衛生法などの実効性を確保するために、監督官は、立入権限などを活用した監督指導によって、法違反の是正を促し、迅速に労働条件の確保を図るとされています。重大・悪質な事案は司法処分も可能です。
「安全衛生業務」は、労働者の生命と健康を守るため、労働安全衛生法の規定に基き、事業者が労働災害を防止するための具体的措置を実施できるよう専門技術的見地から行政を展開します。
「労災保険・徴収業務」は、使用者の災害補償責任を担保するための制度である労災保険の適用促進や徴収、給付などを行います。

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依存・期待は危険

労働基準監督署は、〈職場闘争や組合の団結強化のために利用する〉というスタンスがいろんな意味で大切だと思います。依存したり期待するのは危険です。
そもそも窓口に座っている相談員は、まず監督官でありません。大半は、非正規職員(約6割!)の総務・人事経験者や社会保険労務士。ハッキリ言って窓口にやってくる労働者を体よく追い返すのが仕事なのではないかと思うような人物がけっこういます。
解雇など判断が難しい案件は、受け付けないか、他の解決手段を勧めてきます。セクハラやパワハラを相談しても「労働基準法違反ではないので対応は難しい」と言われます。
賃金や解雇予告手当の不払い、36協定違反の時間外労働、最低賃金を下回るなど明確な法令違反は、証拠をもとに申告すれば、監督から是正勧告へと動く可能性はそれなりにあると思います。
とりわけ近年は、相談数が激増して、実際問題として対応しきれなくなっている実情があるようです。
監督行政は、〝通達行政〟ともいわれ、厚生労働省の行政通達を基準・根拠に処理されているのが実態です。
ドラマ放映後、労働者の味方を求めて労基署を訪れた人が「竹内結子はいないのか」とつぶやいたなんて話もあるようですが、監督官は、結局のところ、官僚的な対応に終始して、使用者から「労働者の味方か」と言われ、労働者からも「使用者の味方か」と言われているのが現状です。
救いを求めて労基署を訪れ、相談員の素っ気ない対応にショックを受ける人も少なくありません。労基署にとどめを刺されてメンタルヘルスになる話も聞きます。

職場闘争の戦術

とはいえ職場の労働基準法や労働安全衛生法の違反と闘うことは、労働組合の基礎的な活動であることは間違いありません。職場闘争と結びついた労基署の活用はあってしかるべきだと思います。労基署に一度ぐらい行くことも経験の一つだとも思います。
上述のように相談ではほとんど相手にされません。はっきりと違反事実をつかんだ上で是正を求める(申告)のか、違反者の処罰を求める(告訴・告発)が有効です。まずは相談員ではなく監督官を引っ張り出さなければなりません。相談案件として処理されるとうやむやで終わります。
申告は文書で口頭でも可能です。組合で労基署長宛で文書を提出し、回答を求めればなお良いと思います。申告を受けた監督官は、臨検(申告監督)を行うことになります。そこで法令違反が認められた場合には、その是正のための行政指導を行います。法令違反は是正勧告、改善が必要と判断された時は指導票を交付します。
職場のみんなで押しかけるとか、団体交渉と組み合わせるか、職場闘争の戦術として活用は可能ではないかと思います。

ちば合同労組ニュース 第76号(2016年11月1日発行)より

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