実践的に考える職場と労働法 労災事故と労働安全衛生法

実践的に考える職場と労働法

労災事故と労働安全衛生法

使用者責任の追及と労使の不断の闘争が必要

 『労働安全衛生法のはなし』(畠中信夫著)に「安全規則は先人の血で書かれた文字である」という言葉が出てきます。確かにそういう面がある。
 労働災害防止に関する法律の歴史は、多くの場合、労働災害の発生という結果が先にあって、それに対する労働者や遺族の闘い、あるいは世論の圧力で法令などの規制が行われ、事業主による防止策・対応策の義務づけがなされるかたちで進んできた。
 近年でも、1996年12月に長野県と新潟県の県境にある姫川で土石流が発生、下流で砂防工事を行っていた14人が死亡する事故が起きた。この事故後に初めて「土石流による労災防止のためのガイドライン」が制定され、①事業者による作業場所や上流域の地形や過去の土石流の発生状況などの事前の調査、②土石流の発生・把握・警報・避難などの基準の設定、③警報用・避難用設備の設置―などの措置が定められた。
 99年に茨城県東海村で起きた核燃料加工施設での臨界事故では3人の作業員のうち2人が死亡。この事故で「電離放射線障害防止規則」の大きな改定が行われた。

鶴見と三池の事故

 資本主義初期の時代には、「契約の自由」のもとで児童労働や長時間労働、労働者の酷使が行われた。また雇用主に直接的な故意・過失がなければ責任が問われない「過失責任主義」をタテに労働災害や健康破壊の多くが労働者の不注意・自己責任とされ、補償もなされず生活困窮が生じた。日本の状況については『女工哀史』『ああ野麦峠』などが有名だ。
 こうした労働者の状況に対する内外の批判、あるいは労働者の積極的・消極的な抵抗が生じ、明治維新から40数年後の1911年に初めて日本で工場法ができたのである。
 工場法は、15歳未満と女性の深夜業を禁止し、労働時間を12時間に制限した。これは「労働条件」「権利保護」というより工場労働による年少者・女性の体位低下や結核蔓延を防ぐことが主眼だった。
 工場法はその名のとおり工場だけしか適用されませんでしたが、その後、建設業や貨物運送業などに安全衛生法令は拡大されていきました。
 ようやく敗戦後の1947年に労働基準法が制定され、5章には「安全及び衛生」として安全衛生に関する章が設けられ、「労働安全衛生規則」が定められました。
 ここにはじめて戦前のように対象業種や規模が限定されていた状況から、病院や商店、事務所で働く労働者にも、健康診断、安全衛生教育、休業などの規定が適用されるようになりました。それでも独立した労働安全衛生法は72年まで制定されませんでした。
 60年代、高度経済成長のなかで職場環境が激変しました。そんな時代の63年11月9日、同じ日に歴史に残る2つの労働災害が発生しました。
 国鉄東海道線の鶴見駅(横浜市)で死者161人を出した列車の二重衝突事故。福岡県の三井三池炭鉱における死者458人の炭塵爆発事故です。三池では救出された労働者の9割以上839人も一酸化炭素(CO)中毒となり、長期にわたって労働者と家族を苦しめました。戦後最大の労災事故でした。
 三池の事故は、1960年の三池争議からわずか3年で発生しました。三池労組は「闘いなくして安全なし」を掲げ、坑内の安全が確認できないときは入坑を拒否して闘った労働組合でした。
 しかし、組合側の敗北により大規模な合理化が強行され、保安要員が大幅に削減され、争議前には施されていた炭じんの清掃や水まきも無視されていました。炭じん爆発を防ぐ技術は戦前にすでに確立され、戦後一度も事故はなかったのです。適切な対応があれば事故は防げた。危険が認識できていなかったわけでも、事故防止技術がなかったわけでもなかったのです。
 この2つの労災事故で「生産優先」から「人命尊重」の〝一定〟の流れができ、数年後に労働安全衛生法が制定される。この法律には「事業者は、職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない」(3条)と明確に規程された。

労働者を守る道

 安全衛生法令の歴史をみると、あらかじめ法律が労働者を守ってきた歴史ではけっしてなく、劣悪な労働環境や、労働者の生命が奪われて初めて制定されたことが分かる。
 確かに「後追い的性格」が否めない領域なのかもしれません。しかし、多くの事故は、後知恵で言えば防げるものが大半だ。つまり職場において常態として存在しているのは「安全」ではなく、「危険・有害の要因」だということです。
 これを使用者・企業の責任として明確化し、労使の対抗関係において不断の闘争がなければ事故を減らし、労働者を守ることはできないことを示していると思います。
 労働組合としては何よりも、職場の仲間の中に「事故と弁当は自分持ち」ではなく労働者が団結して資本と闘うことを通してしか自分と仲間を守ることはできないという認識や気持ちをどう議論していくかが課題だと思います。

ちば合同労組ニュース 第86号 2017年9月1日発行より

連載・介護労働の現場から〈働き方編14〉労働組合という選択肢(1)

連載・介護労働の現場から〈働き方編14〉

労働組合という選択肢(1)

労働組合? 役に立つ?

▲働かせ方
 なぜ、働くか? 生きていくためには日銭稼がなきゃ。多少、おかしいと思ったことでも、割り切って働けば、そのうち慣れてしまうもんだ。労働とはそんなものだ。
 でも、たとえば、同じ職場で働く仲間が、会社のためにめちゃ残業して、身体はボロボロ、精神不安定、あげく家族とは離別し自殺してしまったら…、弱いやつは仕方ないと割り切れるか? いのちを奪ったのは、経営側の働かせ方、いずれ自分も同じ運命とわかっているが、残された労働者はその職場で漫然と働き続ける。生活は貧困ライン。そんな労働者が介護現場には多い。

▲労働組合、いやだぁ~

 介護のきつい搾取の現場に労働組合は役に立つのだろうか?
 新興産業である介護分野は労働環境が未整備のまま、ひとつの低賃金サービス業界となり、失業者や女性、若者が送りこまれてきた。女性や非正規が多い介護労働者は、労組にはなじみがない。労組の活動内容を知らず、「時代遅れ」「左翼」というイメージ。
 あるいは、この国の労働組合が企業別、男性中心の正社員クラブなので、自分には関係ないと思っている。あるいは、組合費取られて動員かけられるだけで、自分には役に立たないものという認識。会社に搾取され、労働組合に搾取され…、嫌だぁ~という元組合員もいる。
 介護労働の大半が移民の外国では、労組の組織率も高いが、この国の介護分野での労組の組織率はわずか5%。その大半が自分たちの既得権を守っているだけのナショナル労組傘下で、御用組合化している罪は大きい。

▲NEW労働組合

 もうひとつの労働組合のイメージはなぜか「ストライキ」。高齢者は一分一秒でも目を離せないから、ストライキできない。労働組合を作ってもストライキ不可能では意味ないじゃんというもの。
 ストライキの方法なんていくらでもあるし、外国では警察などの公務員もストをやってるではないか。こういう人はストうんぬんというより、介護=聖職、労働組合は反逆者のイメージをもっているかもしれない。
 労働組合のネガティブなイメージをそのままに、いきなり労組結成を説いてもムダ、摩耗するだけ。
まして、最初から政治運動、社会運動と関連づけるのは、労組嫌いを増長させるようなもの。
 労働条件を良くするには、何らかの組織をつくり交渉したほうが有利だし、そもそも、労働組合というのは労働者の相互扶助が目的。そういう前向きでシンプルな議論から始め、新しいイメージの労働組合を介護現場につくることを、来月の最終回のテーマとしたい。(あらかん)
ちば合同労組ニュース 第86号 2017年9月1日発行より

映画紹介『国際市場で逢いましょう』

映画紹介『国際市場で逢いましょう』

 戦後の韓国の歴史を生き抜いた人間の一生を描き、非常に濃密な物語だ。韓国では歴代動員2位の大ヒット作。
 朝鮮戦争、中国軍参戦で米軍が一般市民1万7千人と共に興南港から撤収した有名な作戦がある。冒頭シーンは迫力映像。まだ幼い主人公は背負っていた妹を見失う。父が「今日からお前が家族を守れ」と言い残して妹を探しに下船する。
 父と再会を約束した釜山の国際市場で主人公は母と2人の弟妹と共に育つ。やがて成長した主人公は、弟の学費や家計のため西ドイツの炭鉱への出稼ぎに。さらにはベトナム戦争に民間技術者として従軍。危険な炭坑や戦場で何度も死線をさまよって…という話。映画は、現代から過去を回想する展開なのだが、国際市場で学生たちが外国人労働者に嫌がらせをするのをみて老人となった主人公が激怒し、学生とつかみ合いになる場面が印象的で、重要な伏線になっている。
 60~70年代、韓国からは大勢の炭鉱労働者・看護師が西ドイツに出稼ぎに行った。危険で過酷な労働。韓国はベトナム戦争には延べ30万人もの兵士を送った。これにより朴正煕政権は米国から巨額のドルを獲得し、ベトナム特需で韓国の財閥は生まれた。韓国労働者には日本とは違う歴史がある。
 終盤、生き別れの妹と再会する。韓国の放送局が83年に特別番組「離散家族を探しています」を企画。当初100分の放送予定が大勢の離散家族が押し寄せて138日453時間余の生放送が続いた実話に基づく。ただ圧倒される。
 韓国の歴史における重要な出来事と1人の人間の歴史を1本の映画にした力作。『3丁目の夕日』より断然おすすめ。

ちば合同労組ニュース 第86号 2017年9月1日発行より

東京大学で8千人を雇止め 18年無期転換めぐり焦点化

東京大学で8千人を雇止め
18年無期転換めぐり焦点化

 「450万人の衝撃 無期雇用、迫る新ルール」。〈最低賃金の正社員〉が社会に膨大に生みだされようとしている――8・9日経新聞が実態を暴露した。郵便局では8万人の「アソシエイト社員」という形で進む。東京大学での約8千人の雇い止めが大きな波紋を呼んでいる。

トップ大の大量解雇

 2018年4月からの労働契約法施行に伴う「無期転換」 に際して、東京大学当局は、長年働く470人は無期転換するが、約8千人の有期雇用の教職員を雇止めすることを明らかにした。
 雇止めの対象となるのは、①「短時間勤務有期雇用教職員」と呼ばれる大学の事務や、大学病院での看護スタッフなどの約5300人。②「特定有期雇用教職員」と呼ばれる特任の准教授・講師・助教・研究員や、大学病院などの看護師・薬剤師・医療技術職員など約2700人。これに加えて③東大に通う非常勤講師が1200人。①~③をあわせると1万人を超える。
 これまで東大は有期雇用の教職員について雇用期間「上限5年」と3カ月間のクーリング期間を適用してきた。労働契約法が改定され、3カ月のクーリング期間は認められなくなると、これを6カ月に延長する就業規則改定を実施した(これを「東大ルール」などと呼んでいる)。
 批判の的になるや「無期転換ルールと東大ルールは、考え方が異なる」と言い訳に終始。約1万人の労働者の無期転換権の行使を阻むために、大学自らが労働契約法の脱法・違法行為を行う極めて悪質なものだ。
 東大当局は18年4月から「職域限定雇用職員」という非正規教職員を公募すると発表。毎年秋に実施される試験を受け、それに合格すれば、非常勤ながら定年まで働くことが可能になるという。
 ただし、「専門的かつ高度な仕事をする教職員であり、予算の裏付けがある部署に限っての募集」と言われ、大学にとって採算のとれない部署で働く人は、そもそも対象外だ。
 8千人のうち再び大学に雇用される労働者が何人いるかはまったく未知数。大学と組合側は平行線のままだ。

大学が大きな焦点

 現在、全国の国立大学で働く非常勤教職員は約10万人にのぼる。改定労働契約法が施行された2013年、多くの大学で教職員の無期転換を阻むための「5年上限」が次々に計画された。
 しかし早稲田大学をはじめ上限5年枠撤廃の闘いが各大学で巻き起こり、早稲田では15年秋の和解で3千人が無期転換権を認められた。この結果を見て、5年上限撤廃に転換する大学が増えてきた(千葉大学もその一つ)。
 ただ無期転換をすると発表している国公立大学は90のうちわずか6大学にすぎない。ほとんどの大学が様子見の状態と言われている。東京大学の攻防が、全国の大学や無期転換を控えた450万人の労働者の状況に波及していくのは間違いない。
 東京大学はかつて全共闘運動がもっとも活発に闘われた大学でもある。これ以降も、全国の教職員組合の中心的大学となり、大学における新自由主義化の「抵抗勢力」をなしてきた。これをつぶそうというのが今回の大量雇い止めの狙いだ。
 隣の韓国では、非正規雇用撤廃の先頭に学校における非正規労働者がゼネストの先頭に立っている。教育現場での闘いは非常に重要な位置を占めている。この闘いに注目し、支援連帯の輪を広げたい。
(組合員・K)

ちば合同労組ニュース 第86号 2017年9月1日発行より

夏休み保養が無事に終了

今年も夏休み保養が無事に終了

 7月21~25日、福島より8家族23名を迎え、12回目となる夏休み保養プロジェクトが無事に終了しました。初夏の暑い夏休みでしたが、福島の家族は5日間を元気いっぱい過ごしました。ボランティアに参加された組合員のみなさんをはじめ、ご支援いただいたすべての方へ心からお礼を申し上げます。詳細は、会報『ニュースレター』をご覧下さい。

ちば合同労組ニュース 第85号 2017年8月1日発行より

【編集後記】ちば合同労組ニュース 第86号 より

【編集後記】

8月28日のJアラートの範囲が茨城県まで入り、その影響で千葉でも成田線が朝から動かないなど影響があった。現代版・空襲警報になんともいえない感覚を持った人も多い。問題の構図をねじまげるような言説と対決し、再び日本に戦争をさせないように、教育の軍事化、行政の軍事化、権利破壊や言論圧殺、そして改憲に反対せねばならない。B

ちば合同労組ニュース 第86号 2017年9月1日発行より

改憲・労働法めぐる連合の混乱と流動化/労働運動変革は最前線の課題

改憲・労働法制をめぐる連合の混乱と流動化

労働運動の変革は最前線の課題

 連合の神津会長が7月13日に安倍首相と会談し、連合は「高度プロフェッショナル制度」(残業代ゼロ法案)の容認に転じました。
 今回の件は、逢見事務局長(UAゼンセン)が主導し、3月末から水面下で交渉を進めていたと報じられています。残業時間上限規制100時間を決めたときも同じ構図でした。逢見が2年前に事務局長に就任し、派遣法改悪などでもずっと同じ手口でした。次期会長は逢見で最終調整が進んでいました。
 これに対して「逢見出てこい」の横断幕を掲げたデモ隊が連合本部を包囲し(写真)、後日の中央執行委員会でも反対と反発が噴出して、連合は残業代ゼロ反対を堅持、逢見は次期会長を断念しました。
 安倍首相の改憲政策の最重要の柱が連合=労働組合対策にあることは間違いありません。安倍首相と逢見が手を握って連合を自民党の別働隊にして改憲翼賛の運動を展開したのです。自民(公明)・維新・小池新党だけでは改憲投票は乗り切れません。
 さらに安倍政権は改憲レベルの問題として戦後労働法制(雇用と賃金)を破壊しようとしています。詳細しませんが、07年労働契約法の制定以来、①非正規のままで無期雇用とか②労働時間規制の撤廃、③金銭解雇制度など戦後的なあり方を根本から覆す労働分野の改憲です。

9条改憲と労働分野の改憲

 いま「人手不足なのに賃金が上がらない」が書籍や記事で話題になっています。
 安倍政権は「雇用者数が増加した。アベノミクスの成果だ」と言っていますが、その実態は65歳以上と中高齢の女性の非正規労働者が増えているだけです。わずかに賃金上昇傾向はありますが、それを上回る勢いで低賃金の非正規雇用が増えているため賃金平均が上がらないのです。
 人口減少問題は大変な問題で、簡単に言えば安倍政権は、正規雇用を徹底的に破壊しつつ限定社員などの非正規で高齢者や女性を総動員し、さらには労働時間規制も撤廃して極限的に〝生産性〟を向上しようということです。
 〝1億総活躍〟〝女性が輝く社会〟は、結婚・出産・育児・介護・病気……労働者の数十年の職業人生を前提にした年功賃金・終身雇用、社会保障制度などを最後的に解体し、若年者・女性・高齢者などをその都度、低賃金でいつでも解雇できる限定社員として動員していこうというもの。いわば「戦後標準モデル」の雇用を文字通り最後的にメチャクチャに破壊しようとしているのです。
 今回の件は、安倍の思い通りにはならないことを示しました。UAゼンセンだけで連合は制圧できない。週刊誌は連合内における製造業と非製造業の対立と書いてますが、その本質は、雇用の徹底破壊と改憲をめぐり、連合内で動揺と混乱、流動が始まったのです。
 地方組織では今回の件で怒りが噴出し、「改憲だけは絶対に止めなければならない」という声が出ています。いまこそ堡塁を守り抜いてきた組合・職場・活動家の点を線につなげ面にするときです。
 労働者の中に募る危機感を現実的な展望のある運動へ転化させよう。労働者が団結して闘うことに信頼を寄せてくれる運動を始めよう。


労働学校へご参加を

テーマ 資本主義とはどういう社会か
日時 2017年8月19日(土)13時~ /講師 鎌倉孝夫(埼玉大学名誉教授)

ちば合同労組ニュース 第85号 2017年8月1日発行より

実践的に考える職場と労働法/育児・介護休業法

実践的に考える職場と労働法

所定労働時間の短縮、残業・深夜業の制限も

育児・介護休業法

 育児・介護休業法は、1育児休業、介護休業の制度、2子の看護休暇、介護休暇の制度、3子の養育や家族の介護を容易にするための残業や深夜業の制限、所定労働時間の短縮などの措置――などを定めています。
 頻繁に制度が変わるので注意が必要です。制度・法律の基本的な知識を知り、有効に活用すれば闘いの大きな武器になると思います。

育児休業制度

 1歳に満たない子を養育する労働者は、開始予定日の前日までに事業主に申し出ることにより育児休業をすることができます。両親ともに育児休業をする場合は、最大で子が1歳2か月まで育休が取得できます。保育所に入れなかったなどの事情があれば1歳6か月まで可能です。
 育休中の賃金支払い義務は規程されていませんが、雇用保険から育児休業給付金が出ます。育休開始前の2年のうち1年以上、雇用保険に加入している労働者が対象です。
 給付額は、一時金などを除く賃金の約3分の2(67%)が支給されます(平均賃金日額×休業日数×67%)。育休開始から半年経過後は50%になります。休業制度と同様に給付金も最大で1歳6か月まで支給されます。
 育休中の健康保険や厚生年金の保険料は免除されます。

介護休業制度

 要介護の状態にある家族を介護する労働者も、2週間前までに事業主に申し出れば育休と同じように介護休業を取ることができます。
 介護休業は、同一家族について3回まで計93日間まで取得できます。介護休業給付金も育休給付金とほぼ同じで最大93日まで支給されます。
 育児・介護休業は、日々雇用労働者は適用除外となっていますが、それ以外はパートや契約社員、派遣社員も取得できます。
 要介護状態とは、病気やけが、高齢などで2週間以上の介護が必要な場合を指します。介護保険法の要介護認定ではありません。対象となる家族は、事実婚を含む配偶者・実父母・配偶者の父母・子、同居かつ扶養している祖父母・兄弟姉妹・孫です。親以外でもOKです。

子の看護休暇

 小学校に入る前までの子を養育する労働者は、1年間に5労働日まで、けがや病気の子の世話や通院のための休暇を取得できます。半日単位で使うことも法律に規程されています。子が2人以上の場合は10日まで取得できます。
 病気は風邪などの短期で治る病気でも、小児ぜんそくなどの慢性疾患でも特に制限はありません。予防接種などもOKです。
 厚労省の通達では、書面の提出に限定されておらず当日、電話で口頭で申し出ることも可能としています。年次有給休暇と違い、使用者は時季変更もできません。有給・無給の賃金の扱いは法律で規定していません。

介護休暇

 要介護状態にある家族の介護を行う労働者は、1年に5日(2人以上の場合10日)まで介護休暇を取ることができます。こちらも半日単位の利用も可能です。対象家族は、介護休業と同じです。食事介助などの生活介護だけでなく、必要な買い物や書類の手続きでも利用が可能です。

残業の制限

 3歳までの子を養育する労働者、要介護状態の家族を介護する労働者が請求した場合、事業主は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定労働時間を超えて労働させてはなりません(育児・介護休業法の規程)。
 また小学校に行く前までの子を養育する、あるいは家族を介護する労働者が請求した場合、事業主は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、残業は、1月に24時間まで、年に150時間までに制限されます。

深夜業の制限

 小学校前の子の養育、家族介護の労働者が請求したときは、上記と同様に、事業主は午後10時から午前5時までの深夜時間帯に労働させてはなりません。

所定労働時間の短縮

 育児休業をしないで3歳前の子を養育する労働者が申し出たら、所定労働時間を短縮し、労働者が働きながら育児を容易にする措置(育児のための所定労働時間の短縮措置)を講じなければなりません。

家族を介護する労働者に関する措置

 介護休業をしていない労働者からの申し出により、所定労働時間の短縮その他、労働者が就業しつつ家族を介護することを容易にするための措置を講じなければなりません。

 ※

 上記の規程は、それまでの雇用期間が1年未満や、週2日以下勤務の労働者は除外などの規程もありますので、注意して下さい。厚生労働省が出している「育児・介護休業法のあらまし」という分厚いパンレットはそれなりに参考になります。

ちば合同労組ニュース 第85号 2017年8月1日発行より

連載・介護労働の現場から〈働き方編13〉/仲間づくり(3)フットワーク

連載・介護労働の現場から〈働き方編13〉

仲間づくり(3)フットワーク

▲茹でガエル

 国から事業所に払われる介護報酬はどんどん削られて、経営側は経費のコストを下げている。
 いきなり人員を解雇したりはないが、離職した人員の補充をしないとか、パートの増員で補う。ボーナスや手当減給、業務体制の見直し。光熱費、物品などの経費削減…。
 労働者がモチベーションを下げないように、少しずつコストをカットしている。いわゆる茹でガエルの法則で労働者は少しずつ労働強化やブラック化に慣れてしまう。カエルじゃあるまいし、そのたびに労働者は漠然と気づいているが、その不満は声にならない。
 でも、もう労働者はかなり茹で上がっているのだ。これ以上、どんな小さな労働強化にも黙っていてはいけない。

▲軽いフットワーク

 業務の小さな見直し、ちょっとした労働強化や定期以外の異動が、伝わってきたとしよう。黙って受け入れる前に「どうしてそれを行うのか?」「それで、どのようなメリットがあるのか?」「そのメリットは労働者の利益より優先するものか?」を経営側や担当者に聞いてみよう。
 人手不足だからと労働者側がなんでも受け入れてしまえば、納得したことにされてしまうのは自明の理。労働者サイドで考えても理解できないことは、どんなに小さなことでもすぐに訊きにいく。
 一日でも早く、一人でも二人でもいい。そして、上司との小さな交渉は、すぐにメールやSNSなどで発信する。そのフットワークの軽さは必要だ。自分たちだけで事実確認してる間に仲間が茹で上がって死んじゃったら取返しがつかない。また、決定事項でなく、誤報や噂だけの時もある。
 柔軟な行動力は、労働者本位の交渉力につながるだけでなく、労働者が自分の労働について問題意識を持つきっかけになる。介護労働者の自己犠牲的体質を方向転換しなければ、労働環境は良くならない。

▲上司と対等に話す

 介護労働者は、仕事のことで、職場の誰と本音で話せるだろうか? 後輩、同僚、リーダー、主任、部長、施設長…。主任あたりまでは、ふだん接触があるのだから、気軽に本音を話せるようになりたい。
 求人広告などで「風通しのいい職場」とあっても、ウソだろというのが多い。風通しは、自分がドアを開けなければ、よくならない。勇気が必要なら勇気を持とう。嫌な情報もそれが逃避できない現実なのだ。悪く思われたくない、損をしたくないとネガティブに考えず、当たって砕けろと楽観的な突破力を身につける。
 上司とヒラの労働者は、役割が違うだけで、人間としては対等だ。対等なやりとりをすればいいと思う。命令だから従わなければならないのではなく、仕事としてどうなのかで判断することによって、働きやすくなる。他人より自分自身の承認を優先して働く。
 (あらかん)

ちば合同労組ニュース 第85号 2017年8月1日発行より

映画紹介『リフ・ラフ』/ケン・ローチ監督-1990年制作

映画紹介『リフ・ラフ』

 労働者階級を描くイギリス映画は何本も観たが、労働者の連帯感や暖かみを感じる、そんな思いを強くさせる映画だ。ケン・ローチ監督で1990年制作の映画。サッチャー政権時代の最後あたりのロンドンが舞台。
 主人公スティーヴは刑務所を出た後、建設現場の仕事に就く。そこでは雇用保険も払わない雇用主がムショ帰りや偽名などワケありの労働者を日雇いしている。現場責任者の口癖が「毎週木曜日は給料日。しょーもない奴はクビになる日だ」。
 映画は主人公が路上で寝袋で寝ているシーンから始まるのだが、新入りに住む所がないことを知ると、みんなで「空きビル」へ引っ越し作業。スクワットと言い、空きビルや空き家を占拠して住むことは欧州ではよくあるらしい。
 建設現場では、互いにからかったり、助け合ったり。かと思えば、賭博や、偽名のため賃金の小切手を換金できない労働者から手数料をぼったくろうとしてケンカになったり…
 ある日、スティーヴは現場で忘れ物のバッグを見つけ、歌手志望のスーザンと知り合う。彼女が歌う酒場のステージに仲間と出かけるが、ちょっとした「騒動」が起き、スーザンが『With A Little Help From My Friends』を歌う。「自分は歌うのが下手だけど、君のような友達がいればなんとかやっていける」という歌詞。かつてなくビートルズの曲がイカした感じに聞こえた。
 映画は、スーザンともハッピーエンドにならず、組合活動家ラリーの解雇や仲間の転落死と続く。主演は『トレインスポッティング』に出演したロバート・カーライル。彼の軽快な感じが映画を成り立たせる。最終シーンはトレスポのノリだ。

ちば合同労組ニュース 第85号 2017年8月1日発行より

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