書評『沈みゆく大国アメリカ〈逃げ切れ!日本の医療〉』

『沈みゆく大国アメリカ〈逃げ切れ!日本の医療〉』

市場原理が徹底した介護の実態

n0060_04_01a 5月に出版された『沈みゆく大国アメリカ〈逃げ切れ!日本の医療〉』(堤未果著)を読んだ。

米国の老人医療や介護産業の実態などを暴露し、医療と介護をビジネスにするモンスター「医産複合体」が次に狙うのは日本の医療と介護だ、と警告を発している。
米国の医療費は総額2・8兆㌦(200兆円)。製薬会社と保険会社、そしてウォール街が結託する「医産複合体」は、病気を抱える弱い立場の人々を標的に天文学的な収益を上げている。
日本のような国民皆保険制度がない米国では医療や介護には莫大な費用がかかる。
盲腸手術200万円、ケガで一針縫って30万円……。
近年、投資家のビジネスの種になっているのが介護産業だ。日本同様、第2次大戦直後に生まれたベビーブーマー世代が高齢期を迎え民間老人ホームの需要を爆発的に押し上げているのだ。

米国の介護の実態

市場原理が制圧した介護職場の恐るべき実態とは?
全米500カ所以上の施設を持つある大型チェーンの老人ホーム。
施設の最大の特徴は、介護スタッフが最低以下の人数に抑えられており、時給は平均5・5㌦(600円程度)。一晩で50人以上の高齢者を1人の介護スタッフがみることも日常茶飯事。死亡・虐待事件で訴えられるのも頻繁という。
米国における高齢者介護施設は、営利企業であっても、建設から設備投資、施設内でのサービスから介護関連機器まで莫大な政府補助を受けることができる。このため民間老人ホームが乱立され、それが頭打ちになると、今度はウォール街の銀行と投資家が利権のにおいをかげつけた。

投資家たちの手口

投資家が率いる持ち株会社が医療法人チェーンを設立し、地域の介護施設や老人ホーム、診療所や中小病院をまとめて買収して傘下に入れてショッピングモールのように統合する。彼らの目的は資産価値を高めて株主利益を増やすことだ。
病院では、利益率が低くて医療事故のリスクが高い小児科や産婦人科、救急部門は次々に廃止する。逆に、人工透析や緩和ケアなど儲かるところを充実させるのだ。
老人ホームでは、①スタッフ削減、②給与削減、③入居者の回転率を速める――この3つを徹底的に推進することで事業の資産価値を高める。そして約5年で施設を売却し多額の売却益を得るのだ。
日本でも優良老人ホームのM&A(企業売買)が活発になってきている。以前、村上ファンドの村上世彰が高級老人ホームを買収したことがニュースになっていた。
日本でも政治家や地域ボス、建設業界が福祉利権に群がる構図があるが、それが牧歌的に思えるような重大かつ深刻な状況が迫っているのかもしれない。
――そんな感想を持ちました。介護労働運動からも世の中の核心が見えるのかもしれません。(S)

ちば合同労組ニュース 第60号 (2015年7月1日発行)より

【編集後記】ニュース60号(2015年7月1日発行)より

【編集後記】

“妖怪も労働組合!?”今月、子どもたちに大人気のアニメ『妖怪ウォッチ』でこんなネタがありました。ジバニャン(オレンジ色のネコ)は、妖怪労働組合に加盟し、有給をシッカリ取得するという話。働き過ぎの人間界に対するメタファーに笑い。(K)

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安倍政権は、6月24日までの国会会期を9月27日まで95日間に延長し、安保関連法案を成立させ、派遣法改悪と残業代ゼロ法案も成立させる構えだ。なにやら安倍の祖父・岸信介のようです。岸は安保条約を強行した時、30万人のデモ隊に包囲され、首相官邸で死を覚悟し自衛隊にも治安出動を要請(防衛庁長官が拒否)しました。闘う側も覚悟と決意が問われている。(S)

安倍総理が押し進める戦争法、憲法改正、沖縄・辺野古の基地建設、労働組合つぶしなどを独裁政治のごとく進めようとしている。70年前の戦争を彷彿させる。自民党からは言論の自由を奪えという声が聞こえてきた。祖父母から戦争の悲惨さや虚しさをよく聞いていた。このような誰の得にもならない戦争は絶対にさせてはいけないと思った。
だから今こそ労働運動を復権させ、全国いや全世界の労働者と連帯し世界中から安部総理の暴走を止めないといけない。「万国の労働者よ、団結せよ」のスローガンのもとに一致団結しないといけない。団結こそ政治家が恐れているものだと感じている。今の若者(私も結構若いが〈笑〉)の獲得も今後の日本の未来にかかっていると思う。
選挙権の対象者年齢が引き下げられ安部総理はその青年の獲得に必死である。その新たな青年を獲得し国民投票で何としてでも憲法改正を行おうとしている安部総理の暴走を世界の労働者とともにとめていきたいと思っている。(青年部)

ちば合同労組ニュース 第60号 (2015年7月1日発行)より

永続的な派遣制度を狙う法律の大改悪!

生涯派遣もたらす派遣法改悪を止めよう!
永続的な派遣制度を狙う法改悪!

2015年6月

みなし制度 10・1施行前の廃止が狙い

国会で派遣法の改定案が大急ぎで審議されています。強行採決とも言われています。実は大きな秘密があります。政府と財界は、現行派遣法のまま10月1日を迎えることを避けたいのです。なぜ急ぐのか?
現行法では今年10月1日に「労働者契約申し込み・みなし制度」(みなし制度)が施行されます。この制度は、派遣先が違法派遣と知りながら派遣労働者を受け入れている場合、違法状態が発生した時点において、派遣先が派遣労働者に対して労働契約の申し込み(直接雇用の申し込み)をしたものとみなす制度です。
例えば、3年間の制限期間を超えて働いている派遣労働者は、違法状態が発生した(つまり3年を過ぎた)時点で、使用者が労働者に対して直接雇用を申し入れたとみなされます。
この制度は08年のリーマンショックで派遣村などが問題になって制定されました。財界の抵抗もあって施行が猶予されていたのですが、いよいよ10月1日に施行が迫っているのです。
しかし企業の経営者たちは、派遣労働者を安価でいつでもクビを切れる存在として考え、「みなし制度」を闇に葬ろうと必死なのです。

◎みなし制度が標的

こうして財界の大きな期待と使命を帯びた安倍政権と自民党は、派遣法を改悪して「みなし制度」を廃止しようとしているのです(みなし制度実施は10月1日で、改定案の施行は9月1日)。
今回の大改悪が実施されれば、企業は永続的に派遣を使用できます。企業にとって極めて有利で、労働者には著しく不利な制度です。
派遣法の改悪と並んで、残業代ゼロ法案や安保法制関連法案の国会審議も始まっています。安倍政権がやろうとしていることは、労働者の生命と権利の破壊です。

永続的な派遣制度を狙う法改悪

永続的な派遣制度を狙う法改悪

みなし制度10・1施行前の廃止が狙い

国会で派遣法の改定案が大急ぎで審議されています。強行採決とも言われています。実は大きな秘密があります。政府と財界は、現行派遣法のまま10月1日を迎えることを避けたいのです。

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なぜ急ぐのか?

現行法では今年10月1日に「労働者契約申し込み・みなし制度」(みなし制度)が施行されます。この制度は、派遣先が違法派遣と知りながら派遣労働者を受け入れている場合、違法状態が発生した時点において、派遣先が派遣労働者に対して労働契約の申し込み(直接雇用の申し込み)をしたものとみなす制度です。
例えば、3年間の制限期間を超えて働いている派遣労働者は、違法状態が発生した(つまり3年を過ぎた)時点で、使用者が労働者に対して直接雇用を申し入れたとみなされます。
この制度は08年のリーマンショックで派遣村などが問題になって制定されました。財界の抵抗もあって施行が猶予されていたのですが、いよいよ10月1日に施行が迫っているのです。
しかし企業の経営者たちは、派遣労働者を安価でいつでもクビを切れる存在として考え、「みなし制度」を闇に葬ろうと必死なのです。 Continue reading →

安倍政権の改憲と戦争に反対の行動を

安倍政権の改憲と戦争に反対の行動を!

特定秘密保護法の制定(13年12月)、武器輸出三原則の撤廃(14年4月)、そして集団的自衛権行使容認の閣議決定(同年7月)と、安倍政権は改憲に一気に突き進んでいます。安保法案の審議も始まりました。
国会で安倍首相は「海外派兵は一般に禁止されている」と断言した直後に、ホルムズ海峡での機雷掃海は「例外的に認められる」と悪びれずに答弁しています。「米軍艦船が相手国の領海で襲われたら」と聞かれると自衛隊の武力行使の可能性を否定せず……という感じです。

安倍という人物は、ウソをついても罪悪感は一切もたない。自分の言動に責任をとる気がまったくない恐るべき人物です。そんな人間が目の前の支配の崩壊とその危機に衝動的に突き動かされて改憲や戦争に突き進んでいます。
日米戦争を始めた時の首相で東条英機という人がいます。きわめて真面目・几帳面な性格。他方で反対者にはきわめて狭量。現状把握もできず憲兵を使って反対派を抑え込み戦争に突き進んだ。
もちろん東条のキャラで戦争になったわけではありません。が、現実の歴史はこういう人物によって展開されるものなのかもしれません。

とはいえ、今はそんな皮肉を言っている場合ではありません。老若男女、戦争に反対する気持ちは奥深くしっかりあると思います。みんなの気持ちを動かす闘いが必要です。60年安保闘争やベトナム反戦のように労働組合の役割は重要です。
機会があれば、ちば合同労組でも国会へ行ったり、集会にも参加したいと思います。(T)

ちば合同労組ニュース 第59号(2015年6月1日発行)より

連載・介護労働の現場から〈25〉 自己都合/会社都合

連載・介護労働の現場から 〈25〉

自己都合/会社都合

社長は、顧問の社労士と相談する、と私の要求を持ち帰った。職場に行くと和田さんが近寄ってきた。
「どうして辞めるの? ケガが治るまでレク担当やれば? 他の仕事はみんな引き受けるから」
「辞めるとは言ってないよ。ケガしたから管理者がクビだって言ってるだけ。社長は管理者がクビだという者を雇い続けられないんだって」

力石が来た。「あらまぁ、この腕じゃもう居座れないでしょ。ケガの多い人だね。もう歳なんだし、ぶっちゃけ、あらかんさんは介護には向かない性格だと思うよ」
うるせぇ~、私はほんとは介護の仕事が中途半端になっていることがいちばん気がかりなのだ。もっと介護を極めたい。でも別にこの施設でなくてもいいのだ。

和田さんが「私はあらかんさんがいるからガマンしてきたのよ。私も辞めようかな?」と言ったので、私が社長に要求した3条件について話した。
これまで毎月のように人が辞めていったが、社長によると、私みたいに手続きをした人は皆無。突然無断欠勤し、フェイドアウトするのが一般的。
利用者たちは私のギブス姿に一様に驚き、口ぐちに慰めてくれた。これまでずっとギブスはからかいの対象だったから、利用者の心がこもった言葉に泣きそうになってしまった。
利用者たちにもう会えなくなると思うとつらかったし、初めてケガをしてしまったことを悔いた。「もう辞めるかも?」とは、とても言い出せなかった。

休憩室にある私物を持ち帰れという力石を無視して職場を離れた。辞めると言っていない以上、私物を持ち帰ることはできない。
和田さんが力石さんに「(私の私物を)勝手に処分したら、窃盗だからね」と言ってくれた。和田さん、私に似てきたなぁ、後継者になってくれるかも…。

n0059_03_01a社長からは次の日に電話がきてその日の午後、社長に会った。要求のうち、(2)の有給は支払う。(3)の傷病手当金は自分で手続をとることでOK。ただし、(1)の解雇予告は出せない。有給を消化した時点で、会社都合ではなく、自己都合の退職届を出してくれということだった。
「私は、辞めると言ってないから、自己都合ではないでしょ。なぜ会社都合にしないの?」
社長は、「管理者からは、あらかんさんが辞めたいと言ったと報告を受けている」と繰り返していたが、そんなものいまさら理由にならない。食い下がると、社長は本当の理由を明かした。
「詳しくは言えないけど、社員を会社都合で辞めさせると、もらった助成金が無効になる」。

あぁ、そうなんだ。(あらかん)

ちば合同労組ニュース 第59号(2015年6月1日発行)より

映画紹介–『ノーマ・レイ』

映画紹介『ノーマ・レイ』

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保守的なアメリカ南部のとある町の紡績工場で働くノーマ・レイ(サリー・フィールド)。高校を出てすぐに結婚するも夫を酒場の喧嘩で亡くしたシングルマザー。両親も同じ紡績工場で働いている。この工場には組合もなく労働者は酷使され搾取されるまま。年老いた両親は疲れきっていた。

ある日、この町にニューヨークからルーベンという男がやって来た。全米縫製繊維産業労働組合からこの町の工場に労働組合を組織するために派遣されて来たのだ。
ルーベンは、毎朝出勤して来る労働者にビラを配布しながら彼らが工場から不当な待遇を受けていることを知らせて組合に勧誘した。ルーベンと親しくなったノーマも労働者としての意識が目覚めていく。そして父の死……
ノーマに恋人ができたり、組織化がうまくいかず口論になったり、ノーマとルーベンは信頼関係を強めていく。

終盤、ノーマが「UNION」と手書きしたボードを掲げて立ち上がり、延々と続く機械音の中、1人ずつ労働者が機械を止めていくシーンは感動的です。
労働組合を結成するには職場投票で過半数が必要とされるアメリカの事情はありますが、労働組合の組織化と労働者の人間的成長を描いた良い映画だと思います。

ちば合同労組ニュース 第59号(2015年6月1日発行)より

港合同・中村委員長の人生列伝–みんなが読んで欲しい本

3396日――“さんざん苦労”の経験

港合同・中村委員長の人生列伝

合同労組のみんなが読んで欲しい本

n0059_04_01a 労働者学習センターから『団結こそ命・闘いこそ力/港合同の闘いの歴史と教訓』が発行されました。昨年の労働学校での中村吉政さんの講演録です。薄くてすぐに読めるブックレットです。

教訓に満ちた闘い

中村さんは、毎年11月に日比谷野外音楽堂で開催される労働者集会の呼びかけ3労組の一つである大阪・港合同の委員長です。この本は半世紀にわたる港合同の労働運動の実践の数々が描かれています。

特徴的な点は、港合同の労働者が争議が勃発している工場へ総力で泊まり込みに行き、寝食を共にし 、地域の労働者どうしの団結をつくっていったことです。
その中でも、3396日という超長期の争議(矢賀争議=写真)に勝利した教訓です。“さんざん苦労”したという表現からも、労働運動がすぐに成果があがるような短絡的なものではなく、地道な積み重ねの先に成功があることがしみじみと伝わってきます。
大阪都構想の住民投票で橋下を倒した力も、港合同のような労働者たちの闘いの教訓や蓄積が根っこにあるのだと感じました。若い世代に労働運動を引き継ごうと奮闘される中村さんの話も、新たな人を合同労組に組織するという観点からも学ぶべき点が数多くあります。

労働者が集まる場

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個人的な感想を一つあげれば、組合事務所の維持についてです。中村さんは こう語っています。
「大阪でも合同労組さんの苦労というのは、組合の事務所を持っているというのは限られています。今、大阪でもどこの組合でも、相談があっても組織を残してというようなことをあまり聞きません」
「やはりスペースといのは労働者が団結する場であるし、それが発信の基地となるだろうと思います」
橋下が最初にやった攻撃は、区役所にある組合事務所を徹底的に排除したことだそうです。これで、労働者どうしの交通がなくなり、一気に闘えなくなったのだと。

組合員の団結を守りぬくとは、やはり事務所・拠点を維持し、堅持していくことが基礎です。
ちば合同労組は、DC会館の一角を間借りしていることもあり、自分たちの事務所を維持するという意識が希薄になりがちです 。“労働者にとって場所があるということが、かけがえのない財産である”――この中村さんの言葉に学び、動労千葉と一緒に闘い、地域に開かれた合同労組をつくっていきましょう。

全56㌻。頒価300円。DC会館で扱っています。

ちば合同労組ニュース 第59号(2015年6月1日発行)より

【編集後記】ニュース第59号(2015年6月1日発行)より

【編集後記】

先日、組合の会合で「鰯(イワシ)」のことが話題になりました。ちょっと気になったのでウィキペディアで調べてみました。【カタクチイワシは天敵から身を守るために密集隊形を作り、群れの構成員すべてが同調して同じ向きに泳いで敵の攻撃をかわす。これは他の小魚にも共通する防衛策である。対する敵はイワシの群れに突進を繰り返して群れを散らし、はぐれた個体を襲う戦法を取る】とのことです。なるほど、勉強になりました。小学校の時、国語の教科書に載っていた『スイミー』を思い出しました。(S)

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沖縄で5月17日、新基地建設に反対する県民大会が開催され、3万5千人が集まりました。1995年の少女暴行事件に対して8万人余が県民大会に集まったのが一つの出発点でした。日米政府は普天間基地の返還を打ち出し、他方で新基地建設と振興策をセットにしました。振興策の目玉は通信設備さえあればすぐ開設できるコールセンターでした。しかし今や振興策は破綻し、コールセンター閉鎖が始まっています。地元紙は「就労する従業員が非正規雇用である限り貧困状態……」と伝えています。(Y)

今回の派遣法の改定案は分かりづらいのですが、派遣法の「一時的・臨時的」のしばりがなくなり企業は派遣をずっと使えるようになります。しかし個々の派遣労働者が派遣先で働けるのは3年まで。企業は永続的に派遣を使い、個々の派遣社員は3年ごとに自動解雇。例外があり、無期契約の派遣という道があるとのこと。一生派遣で良いなら契約しますよ、と。(T)

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国鉄闘争6・7全国集会へ結集を

6月7日、東京・日比谷公会堂で国鉄闘争の全国集会が開催されます。国鉄1047名解雇をめぐる動労千葉の裁判は最高裁で行われ、署名も9万筆を突破しました。ちば合同労組は、組合として集会に賛同し、参加します。当日は同じ列車で向かいます。
日時 6月7日(日)午後12時30分
場所 東京・日比谷公会堂
ちば合同労組ニュース 第59号(2015年6月1日発行)より

報酬切り下げの中、賃上げを飲ませた!

介護職場に労働組合を

報酬切り下げの中、賃上げを飲ませた!

職場で夜勤食を要求したのは1年くらい前。これから夏場になり食中毒が心配される時季だ。

夜勤は夕方4時半から朝の9時半まで17時間も拘束される。夕食はもちろん朝食もつくって(あるいは買って)職場に入る。

この職場は初めての介護現場なので私は知らなかったのだが、どこの施設でも夜勤に食事を出すのは当たり前らしい。うちの施設でも宿直者には「検食」という形で夜食を出している。

夜勤手当が低いこともあり感染症予防の観点からも話を切り出しやすい夜勤食を会議の場で要求しようとなった。

会議というのは、業務改善を目的に月に一度開かれる現場労働者と事務や看護師など他の部署の人や施設長も参加する生産性向上の会議。この場を利用して人員を増やせなど現場の声を上げるようにもっていっている。

当初、施設の回答は「調理場を任せている外注会社ではどこの施設も夜勤食はやっていない」。食い下がると「アンケートを取る」「近隣の施設の状況を調べる」。

なかなか長引いたが、その間にも給与の低さについて職員間で不満が公然と上がるようになってきた。

中間管理職でさえ職員の待遇を良くしないと良い介護はできないし人も来ないと施設長に談判するほどになった。
施設の開設当初は、それなりに職員の応募もあったが今は周辺にどんどん施設が建ち、開設当初からの職員も人間関係などで辞めていき、人員不足の状態が常態化し、ついには派遣を入れてギリギリ現場を回している。人が減ることでますます労働強化され、「こなし介護」の毎日。

施設長は募集しても人が来ないと説明していた。本当かどうかは不明だが、この給料では来ないのはうなづける。
私の入職時、求人票には「試用期間3か月」と書いてあったのに最初に渡された契約書は2週間の雇用期間。それも時給は最低賃金。なぜ2週間なのかと訊ねると、いつでもクビを切れるという趣旨のことを言われた。単に給料の低さ以前的な問題だ。

話を戻して、下からの突き上げに押されて、施設長も動かざるを得なくなった。3月末に理事会の場で賃上げを要求したのだ。
要求額には遠く及ばないが理事会は賃上げを飲んだ。

理事会でどんな議論がなされたのかは分からないが、この4月の介護報酬改定で、特養では介護報酬6%も引き下げられた中で、介護職員への処遇改善加算(こちらは1・65%アップされた。ただしうちの施設では要件に満たず、現状のまま)の枠外で賃上げを認めさせた意義は大きい。]

これは憶測だが、労働組合でもできたら困ると施設側が先手を打ったのかもしれない。賃上げと同時に管理職ポストが新設され、パート労働者などは賃上げの対象外とする分断攻撃が起きている。

なぜ資本はこれほどまでに労働組合を恐れるのか。国家ぐるみで労働運動破壊を仕掛け、労働法制を改悪してまで労働組合を根絶しようとするのか。私たちの要求など人間としてごく当たり前の微々たるものでしかないのに。

裏を返せば、いかに今の社会が労働者、そして人間存在と相容れないものになっているのかが見えてくる。
安倍政権は、株価を吊り上げるために公的年金の財源さえ株に突っ込み、福島では小児甲状腺ガンが多発しようとも帰還を強制し、挙句の果てには戦争に突き進んでいる。
若者に戦場で死んでこいという社会で介護を必要とする人びとにどんな生活をしろというのだろう。

戦争情勢の中で先鋭的に矛盾が突き出される介護職場に闘う労働運動を作り出そう。

ちば合同労組ニュース 第58号(2015年5月5日発行)より

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