労働者の視点で物事をみる、世界をミル

組合活動

ちば合同労組ニュース 第46号より

労働者の視点で物事をみる、世界をミル

news46_01_01a 介護施設で働いているが、施設に慣れない利用者によく「早く家へ返して」「こんな年寄り、どうして閉じ込めておくのよ」と言われる。
そこで考えた。――「金儲けのため」だ。
昔はこんな施設はほとんどなかった。あるとすればやんごとない事情で独り暮らしできない身寄りのない老人を、国の措置として受け入れる施設だ。普通のお年寄りは家族に見守られて人生の最期を迎えた。
高度経済成長とともに少子化が進行する。核家族化の中で親の介護の負担は大きくなる。労働者の賃金はさらに削られ、夫の給料だけでは家族を養えなくなり夫婦共働きが当たり前になってくると、もはや家庭での介護は不可能に。やんごとない事情が全社会的に強制されてきたとも言える。
そこに救世主として現れたのが介護保険法。介護を金儲けの道具に、市場の食い物にする施策だ。
もともと老人の世話などしたところでなんの「生産性」もないわけだから、資本家にしてみれば「早く死ね」というのが本音なんだろうが、そうも言えないので邪魔になんない所へ閉じ込めておく。それに加えて、日本の繁栄を築いてきた世代はそれなりに懐(ふところ)に蓄えている。その富を全部吐き出させるのが眼目だろう。
良心的な社会福祉法人などは淘汰(とうた)され、より獰猛(どうもう)な株式会社が新規参入し、ハイエナのごとき外注化が利用者からでは飽き足らず労働者からも骨の髄までしゃぶり尽す。
――こうやって私はいまメシが食えているわけである。私の労働そのものが資本家に富と力を与えていると考えると実に虚しくなるわけだが、労働過程を押えておかなければまずは自分の力にもならない。
でもまあ、このように私のない脳みそで適当にこしらえた理屈なぞ世間一般じゃ通用しないというか、適当なこと言ってオルグしても労働者は見向きもしないだろうから、ちゃんと勉強しなきゃなと痛感させられる。
毛沢東曰く「調査なくして発言権なし」である。
9・11や3・11で明らかなように、この世界は嘘と捏造(ねつぞう)と厚顔にも大々的に繰り返される宣伝とに満ちている。
あらゆることを疑って自分の頭で考えることが大事だし、新しい仲間と運動を創っていく上で「車輪の再発明」も無駄なことだとは思わないが、自分一人の空想を語っちゃいけない。自分の頭で考えるとは他から学ぶことと対立することではないんだ。
news46_01_01b 何を芯に据えて学ぶのか。デカルトは「我思う、ゆえに我あり」を哲学の第一原理に据えたが、私たちは労働者であるということを芯に据えて学ぼう。労働者の視点で物事を見る。世界を見る。それを教えてくれるのが労働学校だ。5月17日、ぜひ労働学校に結集しよう!
——————————————————
【編集後記】
〝レジリエンス力〟という言葉が流行しています。日本語にすると〝逆境力〟〝回復力〟ということらしいです。つまり、競争社会の中で、会社員が心が折れないように、メンタルヘルスにならないようにするために、企業やコンサルタントで、学術・心理学の世界で開発が進み、ビジネスになっているそうです。
「逆境に耐える」という言葉から来るイメージは、三国志に出てくるような武将だとか、五輪に出場するアスリートなどを連想します。しかし、以外にも楽観性だとか柔軟性な考え方、ポジティブな心の持ち方が、逆境を乗り越える力だともと言われています。ただ、一番のベースには、愚痴を言ったりいろんな気持ちを共有したりできる人間関係(夕人や家族)の力が不可欠だそうです 。これらを見ても、労働組合にとって仲間の存在を大切にすることが、とても大事なことだと思いました。(組合員K)