『ブラック企業―日本を食いつぶす妖怪―』(今野晴貴著)

〈書評〉『ブラック企業――日本を食いつぶす妖怪――』(今野晴貴著)

 その名は、『ブラック企業』。

まだ、この言葉が聞き慣れないという方もいるかもしれません。「ブラック企業」とは、劣悪な労働環境のなかで働く若者がインターネットなどに悪辣な会社への恨みつらみを書き込みはじめたことでじわじわと広がって、“自然発生的”に生まれた言葉です。学者や専門家などによる正式な定義はありません。ワタミ、ユニクロ、SHOP99、ゼンショーなどが典型的な「ブラック企業」だと言われています。
この『ブラック企業』の著者は、1500件を超える労働相談をもとにしてきた現場の経験から、リアルな実態を生々しく暴いています。

●ブラック企業の特徴

ブラック企業の特徴は、①「君の代わりはいくらでもいる」というような圧力で長時間労働を強いる、②大量に採用し、採用直後から徹底的な競争をさせて、大量に辞めさせる、③優秀・従順でない社員にはパワハラで精神的に追い込み、「自己都合」で退職させる、など大企業の正社員に対して横行されていることです。
特筆すべきところは、“戦略的なパワハラ”です。意図的にうつ病にさせる、労基署に駆け込まない程度にとどめる退職強要、いわゆる「ソフトな退職勧奨」と呼ばれるものです。法の網目をかいくぐるような「辞めさせる技術」には驚くべきものがあります。結局、洗脳とも言えるような巧妙な圧力で、大量の若者が「自己都合」退職に追い込まれ、使い捨てにされ、「自分が悪い」「甘えだ」と思わされ、再就職する気力すら奪われていくのです。

●多くの企業で広がる「ブラック企業の技術」

この「ブラック企業の技術」とも言うべき手法が日本の多くの企業で広まってます。2012年、低迷する電機産業において、大量の希望退職を募る、10回を超える退職勧奨をおこなうなど、「ブラック企業」の中で紹介されている手法がとられています。怒りなしには読めませんが、これは全産業に広がる可能性があります。
ちば合同労組は、労働組合として、このような「ブラック企業」と立ち向かうことが求められています。労働相談や争議など、このブラック企業と争うなかでしか明確な答えはありません。
よく合同労組は、労働相談に来た人は解決すると労働組合には残らないと言われてきました。しかし、本書でも書かれていますが、当該の相談者には「自分一人の問題」「自分だけで被害が終わらない」という意識が広がっているということです。相談者どうしが連携して争議にあたるケースもめずらしくありません。大卒の正社員も「人ごとではない」と、労働法や労働組合に関心を持ち始めています。いま労働組合への期待は高まっています。
労働組合そのものが存在感をなくし、労使関係や「企業倫理」が崩壊したこと、ここに、「ブラック企業」が発生した最大の原因にあります。いよいよ労働組合の真価が求められています。「自己責任論」の押しつけに対し、「会社が悪い!」という労働者として当然の怒りを共有することが重要です。悪辣な企業に対しては、労働組合として徹底的に社会的責任を追及していく必要があります。
同時に、労働組合内では「自己肯定感」のもてるような人間的つながり、信頼できる仲間づくりも必要です。うつ病に追い込まれないような知識をつけることも必要です。これからの合同労組運動を構想していくためにも、ぜひ一読してみてください。青年部で貸し出しもしています。(組合員K)