月8万円の手当のペテン! 介護職員特定処遇改善加算の実態
経営主義的な労務管理強化を図る政府
先日、法人から「介護職員特定処遇改善加算」について要件の変更について説明がありました。安倍政権下の2019年に制度ができた当初は「10年以上の介護福祉士に月8万円の手当がつく」と話題になりましたが、実態としては平均2万円の賃上げとなっています。
しかも職員にどう分配するかは事業者が設定することが可能となっています。このためすべての介護職員を3つの区分に分け、「誰に」「どんな基準で」「どのように支払うのか」は法人の専権事項となっているのです。
チームケアで労働者が協力して働く介護労働が、細かいキャリア段位制度によって階層化され、分断や競争が持ち込まれ、賃上げが法人の勤務評定で決まることはけっして好ましいとは言えません。
制度は非常に分かりにくく容易には理解できませんが今回の提案を聞いたベテラン職員の多くが直感的にモチベーションを低下させました。
研修・資格の偏重
この制度では、全職員をA「経験・技能のある介護職員」、B「他の介護職員」、C「その他の職種」と3つのグループに分け、グループで賃上げに大きな差があります。
Aグループ(経験・技能のある介護職員)については、必ずしも経験がある現場のベテランが対象ではなく、経営者サイドに立つマネジメント従事者に偏重する傾向があるのです。つまり経営主義的な人事評価制度を政府の肝いりで推進しているのです。
しかも、そうした人事評価は現場での労働ではなく、キャリアアップ・インセンティブ制度を偏重。机上の研修や資格が重視され、新人教育やサポートなど現場をより良くするための努力は必ずしも評価されません。
研修については、自己負担の受講料の高さに加え、研修期間が長い。介護現場は慢性的な人手不足、しかもコロナ禍の中、毎月のシフトを組むのも神業なのに、それだけの期間、現場を空けて研修に参加できる人はごく一部の人だけだ。これでは一部の特権階層を養成する結果にしかならないのではないか?
その前に、増員し、みんなが有給休暇を取れる環境を作ることが先決だ。
しかも「キャリアパス(格差)」を動機に個々の努力と金で資格を取らせるのは、いかにも現代的な労働者支配のやり方だ。こんなやり方に大いに疑問を抱く。
チームケアが叫ばれながら実際には現場労働者はますます分断され、自己責任論に突き落されている。そこでは努力が強要され、本来使用者が負うべき責任が労働者に転嫁されている。
自己研鑽や自己責任を強める方向ではなく、現場労働者の相互信頼と団結を目指し、そしてすべての介護労働者の生活向上という観点から処遇改善を進めることが必要なのではないでしょうか?
(介護分会A)
ちば合同労組ニュース 第133号 2021年8月1日発行より