「物流2024年問題」が焦点化

物流倉庫・運輸

「物流2024年問題」が焦点化

関生のような産業別労組も必要

 3月末に対応協議で政府閣僚会議が開催されるなど「物流2024年問題」が焦点化している。直接には24年に「働き方改革関連法」の労働時間規制がトラック運転手にも適用されることを指す。加えてネット通販の拡大などによる荷物の増加、慢性的な人手不足や高齢化で荷物の35%が運べなくなるとの試算もある。
 19年から時間外労働の新たな規制が開始し、運輸や建設、医師は5年の猶予が設けられたので24年から規制が始まる。原則は時間外労働は年360時間(労使合意があれば720時間)だが、運輸に関してはプラス240時間の960時間が上限となる。
 つまり上限規制でも月80時間、最大百時間まで残業させることができる。労災保険の過労死認定基準が月80時間なので規制の上限の方が上回る。21年度には脳や心臓疾患で労災認定を受けた全労働者の3割がトラックドライバーだ。

長時間が前提

 ドライバーの賃金には次の2つの特徴がある。
 (1) まず歩合給の比率が高い。トラック協会の調査では平均で賃金の半分が歩合で支払われている。つまり労働時間ではなく荷物量と距離で決まる。とはいえ荷物量や輸送ルートにおいて労働者の裁量は小さく、結局、運ぶ荷物が減れば賃金が減る。

 (2) 結局、より長時間を働くとのマインドになる。長時間の残業をこなしてようやく全産業平均賃金に近くなるのがドライバー賃金の実態だ。
 つまり労働時間が規制されればそのまま賃金が減る可能性が高く、それが離職につながると懸念される。ドライバー不足の背景には明らかに長時間労働と低賃金がある。
 加えて労働負荷も高い。運転だけでなく、荷物の積み降ろしも求められる。運転職種なのに手荷役も多いのだ。重量物も多く10㌧車に積み込むのに2~3時間かかるのが普通だ。それから長距離の運転を行うのだ。

 海外はトレイラーやコンテナが主流なので手荷役は少ない。運転手に手荷役をさせれば労働組合も黙っていないし、高額の費用も発生する。
 パレット輸送ばフォークリフトで積み降ろしでき負担は減るが、現実には、積載量を増やしたい、パレット回収が面倒と言う荷主も多い。
 高齢化も進む。21年の統計データで平均50歳前後(全産業平均は43歳)だ。かつては若い人が多い職業だったが、近年は高齢化が進む。
 賃金水準が低下したことが背景にある。90年代の規制緩和で事業者数が1・5倍に増加したがバブル崩壊で荷物が減って競争激化で運賃が下がった。「きついけど稼げる」は昔日のイメージ、今は〝きつくて稼げない〟。
 荷主も運送会社もドライバーの長時間労働に依存している。1~2時間の待機時間は日常茶飯で長時間労働の原因になっている。翌日納品が当たり前の商習慣の業界ではドライバーの休憩・睡眠を削るしかない。スーバーの売り場に収穫翌日の野菜が並ぶためにどれだけ過酷な労働がなされているのか。
 深夜や早朝の運転も多く、その日の帰宅も難しい。4~5日も帰れないケースもある。これを若者が敬遠しているとの指摘もある。
 ネット通販の拡大に伴い宅配は増えている。物流倉庫の新設など投資も盛んで労働者が流入した面もある。と言ってもアマゾン配達業務などでは個人事業主が増えている。軽貨物の宅配は手荷役が多く、繁忙期は超長時間労働になりがちで、逆に閑散期には運ぶ荷物がなくなる。

産業別労組を展望

 労働時間規制は、健康確保のために絶対に必要だが、賃金水準が下がれば、生活が立ち行かない。賃上げが課題だ。
 運送業界は中小企業の割合が多く、従業員10人以下の会社が半分、百人以下が9割を占める。下請けにいくほどピンハネされる構図だ。
 標準運賃の設定も話題になるが、実際に標準運賃を獲得している事業者は少ない。
 トラックドライバーには切実に労働組合が必要だ。関西生コン労組のような産業別労働組合を展望し、企業内・地域を問わず組合の組織化を進めたい。賃上げには貨物運賃アップも必須だ。だが運賃アップを求めれば「他社に変えるぞ」と脅迫される。やはり関西生コン支部のような闘い方、組織化が必要だ。

 ちば合同労組ニュース 第154号 2023年05月1日発行より