アマゾン・スタバ労組が全米を揺るがす
米レイバーノーツ大会 労働運動の価値観変えた
米国の労働運動が新時代を迎えています。全世界の労働運動関係者が注目したのが、レイバーノーツ大会(6月17~21日・シカゴ)でした。
レイバーノーツは、既成の労働組合を現場から変えようという労組活動家の運動体です。同組織の労組結成マニュアル本が日本でも翻訳・出版されています。コロナ禍の影響で4年ぶりの開催となった大会は過去最多の4千人を超える参加で開催されました。この大会の教訓を見たいと思います。
特筆すべきは、スターバックスやアマゾンのユニオン結成が大きな化学変化をもたらしたことです。
アマゾン労働組合(ALU)のクリスチャン・スモールズ委員長は「百の倉庫で組合をつくろう」と訴えました。スタバの現場バリスタも「1千店舗で労組結成をめざす」と宣言。参加者の大歓声に包まれました。たった1つの職場での労組結成の勝利が、全米の労働者の意識を大きく変革しています。
従来の運動との違い
2つの労組の勝利は以前と何が違うのか? これまでレイバーノーツのような左派活動家集団の常識では、職場の過半数を超える支持がなければストライキをやったり、組合投票には勝てないと考えられていました。
実際、米国のアマゾン倉庫では労組活動家やオルガナイザー(職業的に組織化に従事する人)が総がかりになっても会社側の妨害で労組結成の選挙に勝てませんでした。
しかし4月、ALUはアマゾン倉庫において初めて投票に勝利しました。スタバ労組も既存の労組の支援を受けずに、組合結成の選挙に勝利し、約半年間で全米150の店舗に拡大しました。
もちろん、この2つの労組も1対1の対話や系統別の組織化など既存の米労働運動の組織化戦術も重視していたことは言うまでもありません。
他方で、職場の多数が支持しなくても大胆にストライキに入るダイナミックな方針を採用しました。これは「旋風の組織化」とも言われています。会社との対決行動の焦点をつくり、一気に労働者の意識を変えていく戦術です。
また法的・制度的な労組結成だけにとらわれず、職場内の人間的紐帯を大事にし、団結形成に基礎においた組織化が行われました。さらに上部団体の丸抱えではなく独立労組として現場が主体となった組織化が行われたのです。
アマゾンとスタバの二つの勝利によって、「いかなる労働組合をめざすべきか?」との白熱的な議論が全世界で交わされているのです。
労組が社会を変える
レイバーノーツの大会参加者は、非常に若く、有色人種やクイア(性的少数者)が目立ったと報告されています。リーマンショック以降の不況期、コロナ禍の時代を生きてきた世代です。
彼らは「自分や隣の仲間が立ち上がらなければ誰も何も守ってくれない」「変化をつくり出せるのは労働組合」「労働組合だからこそ、アメリカ社会を変えられる」という自覚と意識の変化がダイナミックに起きているのです。
この新たな波を日本の労働運動に活かしていきたいと思います。
ちば合同労組ニュース 第145号 2022年8月1日発行より