イラン危機と沖縄・台湾の最前線化

no war iran

中東から東アジアへ、戦争と核の危機

 米国がイランの核施設への空爆を行った。これに先立ちイスラエルはガザ地区への軍事侵攻を周辺国のヨルダンやシリアに拡大し、ついにはイラン攻撃にまで踏み込んでいた。中東全域に戦争や内乱が広がり、地域の混乱や新たな難民増加の懸念が高まる。

 イスラエルは「イランの核と弾道ミサイルの脅威を取り除く」などと主張しているが、そのイスラエル自身が100近い核弾頭を保有している。イラスエル軍の空爆では、イランの科学者や軍幹部が家族ごと、家屋ごと爆撃によって殺害された(写真)。

 米国は、03年のイラク戦争と同じように、国際法や国連安保理決議も無視して、世界最大級の貫通型爆弾(バンカーバスター)を使った。歴史的な中東侵略戦争への踏み込みであり、米国・イスラエル両国の行為は非人道的な戦争犯罪にほかならない。

 当初、トランプはイスラエルに距離を置く姿勢を示したが、軍事的「成功」を前に一転してイラン攻撃を行った。トランプは戦争を取引し管理できると思っているかもしれないが、様々な意味で歴史に禍根を残した。

帝国主義の時代

 国際法や国際機関を理想化する気はないが、今日の米国やロシアの振る舞いは、20世紀初頭に世界を覆った帝国主義の初期設定そのものだ。19世紀末の列強諸国は植民地や勢力圏拡大をめぐって競争・対立を繰り広げ、勢力均衡の破綻の末に第一次世界戦争に突入した。

 当初、どの国の戦争指導者たちも「戦争は短期間で終わる」と信じていた。実際には戦火は際限なく拡大し国家総力戦となった。戦車や毒ガスなどの大量殺戮兵器が出現し、1千万人以上の命が失われた。

 第一次大戦後、不戦条約が制定され、国際連盟も生まれたが、世界大恐慌を経てナチス・ドイツや日本が「生存権」や「自衛」を掲げて再軍備を進め、満州事変やポーランド侵攻などが強行され、世界は再び世界大戦に向かった。

軍拡の連鎖が

 2025年の今年は戦後80年、昭和100年にあたる。6月23日は、沖縄で日本軍の組織的戦闘が終わったとされる「慰霊の日」だった。戦後、沖縄には最大で約1300発もの核弾頭が米軍によって配備された。50年代の台湾海峡危機では、アイゼンハワー大統領は核兵器の使用を真剣に検討した。その報復として、ソ連の核兵器が台湾や沖縄を攻撃することも覚悟したとも言われる。キューバ危機に似た核戦争寸前の局面が、台湾・沖縄で何度もあったのだ。

 72年の日本返還後も、日米両政府は「核密約」を交わし、有事の際には核兵器の持ち込みを黙認してきた。密約は生きている。核戦争の危機は過去のものではない。

 いま沖縄・南西諸島では自衛隊基地建設やミサイル配備が急ピッチで進む。今回のイラン危機も一歩間違えば全面戦争だったが、東アジアでも日本も当事者として戦争の危機は現実味を増している。

 トランプ大統領はNATOに対し、軍事費をGDP比5%に増やすように求め、日本へも3・5%への引き上げを要求した。世界は再び軍拡のスパイラルに突入し、帝国主義的な対立と核戦争が現実のものとなる時代に生きている。そのことを真正面から見据える必要がある。米日の中国侵略戦争をとめよう!

ちば合同労組ニュース 第180号 2025年7月1日発行より

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