ウクライナ戦争めぐる大情勢
世界は大軍拡と戦争の時代へ

ウクライナ戦争をめぐり分裂する世界
ウクライナ戦争の開始から3年が経過した。米トランプ政権の登場で停戦をめぐる動きが強まっているが、世界は平和でなく混沌とした状況に突入しているように思う。
トランプは「ゼレンスキーは独裁者」と言いなし、敵対していたロシアと手を結び、停戦を条件に東部にあるレアアース(希少鉱物)の共同開発を打ち出した。
戦争3年でウ軍の戦死者は約4万6千人、ロ軍は9万千人以上(これは政府機関などの発表でこれ以上に推計されている)。住民の死者も万を超える。700万人が国外難民となり900万人が貧困生活。ベトナム戦争における米兵の死者(約6万人)と比較しても戦後史に残る大戦争だ。
22年のロシア進攻時は「力による現状変更を許さない」の看板を掲げた米国だが、結局は大国同士の利害、領土や資源の権益のための戦争だった。そのために膨大な労働者兵士が犬死させられた。
トランプ政権は、独AfD(ドイツのための選択肢)など極右政権を焚き付けるなど欧州政治に介入を強める。これはNATOの事実上の崩壊――戦後的な世界秩序の終焉だ。米国が自ら壊している。
ウ戦争の終結は「欧州vs米国」の形で世界が再び分裂とブロック化の道へ進み、帝国主義・大国間の戦争への幕開けになりかねない。

大資本によるむき出しの専制支配
トランプ大統領は「ガザを米国が所有する」(2月4日)と発言。ガザを更地化し、不動産用地と見立てた再開発計画として現実に進行する。これは強制移住・民族浄化であり、中東一帯の軍事支配の第二段階の始まりだ。
巨大な戦争に備えトランプ政権は米軍の近代化や核の高度化を進める。米政府の縮小とリストラを一挙に進めるイーロンマスクは「広島と長崎は爆撃されたが今では再び都市に」と言い、核開発に巨額の予算投入を主張。テック業界主導の軍産複合体の再編がドラスティックに進む。AIや無人機、核兵器を駆使した「コストのかからない」戦争が動き出している。

大軍拡と一体で進む社会保障の解体
日本はどうか? 世界の軍事費は1年で7・4%増大し、過去最高を記録(24年)。国会では8・7兆円の大軍拡予算が可決された。南西諸島―九州―日本列島を軍事要塞化するための軍事予算だ。
2月7日の日米首脳会談でトランプは中国を名指しで非難し「核を含むあらゆる能力」で対抗すると確認。さらに日本に対し「軍事費をGDP比3%に上げろ」と要求した。
国会では、後期高齢者医療費上限引き上げによる受診控えで1950億円の医療費削減が試算された。医療をあきらめざるをえない人たちが出てくる不安が噴出した。これは国民皆保険制度の解体まで行きつく問題。あらゆる社会的資金が軍事費補填につぎ込まれていく。
戦争は日本の労働者にとってなんの利害もない。沖縄・南西諸島の軍事要塞化を阻止しよう。戦争のための5月武器見本市反対! 中国侵略戦争を止めよう。
ちば合同労組ニュース 第176号 2025年3月1日発行より