ウーバーイーツ アプリで早押し競争
波止場のマフィアと同じだ
コロナ禍でフードデリバリー配達員など、「プラットフォームワーカー」とか「ギグワーカー」と呼ばれる労働者が増えています。
近年、フードデリバリー配達員の事故が増えており、ウーバー配達員が配達中に歩行者をはねて死亡させた事故で、東京地裁は2月18日、禁錮1年6ヶ月、執行猶予3年の判決を出しました。
しかし、ウーバー側は「配達員は個人事業主だ」として使用者責任を回避する態度を取り続けています。
ウーバーイーツユニオンは、事故やケガの補償、運営の透明性、適切な報酬などを求めて団体交渉を要求していますが、ウーバー側はこれを拒否、現在、東京労働委員会で争われています。すでに英仏では労働者性を認める裁判所の判断が出ています。
個人事業主と強弁
「プラットフォームワーカー」「ギグワーカー」と呼ばれる働き方は、個人事業主の形式で単発の仕事として行われます。従来であればピザやそばの配達は雇用労働者の仕事でしたが、近年はスマホのアプリを介した個人事業主の形式に変えられているのです。
このためギグワーカーらは労働基準法や労働契約法、労働組合法などが適用されない状態になっています。もっとも日本では現段階では裁判などの法的な判断はいまだ出ていません。ウーバーなどが一方的に運用しているだけなのです。
ウーバーイーツなどの利用経験のある人は少ないと思いますが、利用者がアプリで牛丼やハンバーガーなど店舗を選択肢、メニューを選んで配達を注文すると、配達員のスマホに業務依頼が表示され、これを配達員がアクセプトすることで業務が成立し、配達員は店舗で商品を受け取り、利用者の自宅などに配達して配達員が報酬を得る仕組みです。
配達員が受ける依頼はスマホにわずか十数秒しか表示されません。しかも同時に複数の配達員のスマホに同じ依頼が表示され、一番早くボタンを押した配達員が仕事を得るのです。最近、マクドナルド前などで配達員が自転車を止めてずっとスマホを見つめている光景をよく見ます。
ウーバー側は、配達員はあくまでアプリを利用している個人事業主だと強弁しています。しかし労働法の常識から言っても、それは主観や契約書の文言で決まるものではなく、実態に基づいて客観的に判断されるものなのです。
報酬も一方的決定
また配達報酬についても、ウーバー側が一方的に決定しており、配達員に交渉の余地はありません。配達回数や雨天時などに応じて加算など、可変的に運用されているようですが、その実態はブラックボックスで、賃下げも一方的にできるのが現状です。仕事の指示もウーバー側が一方的に行っています。
事故の問題や労災の問題もすべて配達員の自己責任で運用されています。最低賃金の規制もありません。
マーロン・ブランドの『波止場』という映画があります。ニューヨークの港でマフィアのボスに立ち向かう波止場の日雇い労働者の闘いを描いたものですが、ウーバーイーツは現代のマフィアです。IT技術は時代を超えて同様の事態を再生産している。
ちば合同労組ニュース 第140号 2022年3月1日発行より