介護労働の現場から〈21〉役割分担

介護労働の現場から〈21〉

役割分担

現場の労働条件が労働者本位で改善されていき、みんなに連帯意識が生まれ、笑顔で励ましあいながら仕事に取り組むと、あれほどつらかった仕事が、楽になってきたような気がした。
職場の雰囲気がいいので、本社のフランチャイズ担当が加入志願者を連れてよく見学にくるようになった。社長も評価してくれて、みんなを居酒屋でおごってくれたりした。
そのような中で力石さんのサボリがクローズアップされるようになり、仕事を公平に分け合うために、役割分担マニュアルを作ることになった。

担当するのは、経験豊富な女性パートの安川さん。
力石さんは反発し、「そういうのは責任者が作るもの」とクレームをつけたが、責任者は「俺は素人だからできねぇよ。提案があるなら、安川さんにどんどん言ってね」。いいぞ! 体育会系の実力主義。
力石さんはそれでも「パートがやる仕事じゃないよ。組織の秩序が……」なんてごねていたが、かなわないとなると、その矛先は安川さんへの露骨な嫌がらせに変化した。
嫌がらせというのはオープンにして、笑い飛ばすのに限る。さっぱり系の安川さんはそのことをよく心得ていて、さっさとみんなからヒアリングをして、役割分担表をパソコンで作ってきた。
役割分担表をみて、責任者は「いいね。なるべくこれに従ってやってね。やれないときは俺に言ってね」と、お墨付き。それ以来、力石さんがサボってると、この表を指さして、「力石さん、○時までにこれやってね。ヨロシク!」と指サイン。力石はしぶしぶやる。
さて、力石、やりきれない管理者への不満を次にどこにぶつける? やっぱり私にきた。
「あらかんちゃん、いつまで腰痛? もう一か月半も経つよ」。

昼間は二人しかいないので、安川さんは役割分担を身体介護系のAと家事・レクレーション系のBに分けた。私は腰痛のため、圧倒的にB担当。安川さんによると、「それぞれ得意分野や体調があるので、AとBの交代は自由」。
責任者も「あらかんさんは腰痛で当分Bになるけど、料理得意だし、レクも評判いいし、困ったときはお互い様。フォワードもいれば、ディフェンダーも必要」とフォローしてくれてたのに、力石は「そもそも介護で腰痛なんて甘えたことを…」とチクチクいじめる。
「まだ医者にかかっているし、もう少し待ってね。ごめんね」としか言えない。
責任者が休憩交代に来た。「力石さんは、サッカーでいえば、ミッドフィルダーだよ。攻め、守りなんでもできる。社員は違うね。なぁ、あらかんちゃん」
力石はほめられて何も言えなくなってしまった様子。いいね、サッカー野郎。拍手!
(あらかん)