会計年度任用職員3年雇止め問題
総務省解釈で全国で数十万人が雇止め対象
国や地方自治体で働く非正規公務員の多くが年度末となる3月に雇止めとなる恐れが強まっている。
2020年4月から始まった会計年度任用職員制度について、総務省が任用(雇用)契約の更新を2回までとする方針を示したため、制度スタートから丸3年となる今年3月末を前に職員の公募試験を実施するため、すでに2回の更新が行われた会計年度任用職員は雇止めとなり、仕事を続けるには公募試験に受からなければならない。
総務省は、会計年度任用職員制度の導入にあたり、従来の「更新」という考えを否定するために、「再度の任用」の解釈を打ち出した。1年ごとに雇止めし、再度の公募選考を経て、毎年改めて採用(任用)するというものです。毎年4月に試用期間が生じるのもこれが理由です。
他方で、毎年の雇止め―公募は社会的批判や膨大な事務量、そして非正規公務員の闘いを恐れて、3年公募制を〝推奨〟したのです。更新回数の上限を設けない自治体もあるが、総務省の調査では1割以下となっている。
「3年働いた」という理由だけで雇止めとなる。こんな不条理な話はない。
数十万の雇止めも
全国でどれぐらいの雇止めかは不明だ。総務省は取材に対し「(公募の規模については)調べていない」と答えている。昨年11月の東京新聞の報道では、全国の自治体の7割程度で雇止めの方針。公務非正規女性全国ネットワーク(ハムネット)は「年度末にかけて数十万人の雇止めが起きる」と指摘している。
1月19日付の『北海道新聞』によれば、道や市町村で働く会計年度任用職員について、道内の上位12市のうち8市で雇止めをする方針で、集計していない札幌市を除く7市だけで3200人を超える。
総務省調査によれば、会計年度任用職員を含む非正規地方公務員は全国で約70万人。正規地方公務員が約276万人なので非正規率は約30%。保育士や司書、各種相談員など経験や専門知識が必要な職務を担う人も多い。非正規の4人に3人が女性だ。雇止めの対象は、コロナ禍で最前線で働く労働者も多い。
まったくの無権利
公務員は、一般的な労働法規が適用除外されている。特に国家公務員は労働基準法も適用除外(地方公務員は一部適用)となっている。他方、公務員は労働組合の結成やスト権が制限されているため、その代償として「身分保障」がある。政治介入などによる解雇はできません。
しかし非正規公務員は、労働法による権利や保護もなく、また公務員の「身分保障」からも排除されている。
民間の労働者であれば、雇止めには制限がある(労働契約法19条)、あるいは通算契約期間が5年以上になれば無期契約に転換する権利がある(労働契約法18条)。不十分ながら法的な保護や権利がある。しかし非正規公務員は、公務員との理由で労働法は適用されず、しかし有期雇用であるため毎年雇止めのリスクにさらされているのです。
そもそも常時勤務を必要とする恒常的な業務については任期の定めのない正規職員とすべきである。それをあえて業務を細分化したり、勤務時間や勤務日数を短縮して非正規化しているのだ。
正規化闘争の歴史
この間の非正規公務員の低賃金問題は際立っている。
1月18日付の毎日新聞によれば、賃金水準が最低賃金を下回る事態が生じている。茨城県で「市が広報誌で最低賃金割れの職員を募っている」との情報が寄せられ、取材したところ、昨年9月15日付の茨城県桜川市の広報誌で、昨年11月からの会計年度任用職員を時給897円で募集していた(茨城県の最低賃金は昨年10月から911円)
毎日新聞の確認では茨城県内の24自治体で同様の事態が生じた。年度初めの賃金水準が低いため、10月の最低賃金の引き上げで最低賃金を下回ってしまったのだ。一部の自治体では賃金を改定したが、対応できず最低賃金以下の公務員が存在する事態に。
上述のように、最低賃金法は公務員には適用されないため、直ちに違法とはならない。
戦前から雇員(行政職)・庸人(技能・労務職)、あるいは嘱託などの形で非正規公務員は存在してきた。朝鮮戦争とレッド・パージの時代、1950年頃から国における「常勤的非常勤職員」の常勤化(定員化)闘争、地方自治体の「臨時職員」の正規化(定数化)闘争が闘われた。
東京では1954年に「臨時職員協議会」に約1万4千人が結集し、正規化闘争が展開され、57年に正規職員化が実現、60年代に23区で闘いが継続し、正規職員化がかちとられていったそうです。
こうした闘いの歴史の経験を掘り起こし、新たな課題に立ち向かっていきたい。
ちば合同労組ニュース 第151号 2023年02月1日発行より