低賃金と人手不足の打破を

制度・政策

低賃金と人手不足の打破を

施設系の利益率はすべてマイナスに

 今年7~9月に実施した全国老人福祉施設協議会の調査結果によると全国の特別養護老人ホーム(特養)1600施設のうち6割で22年度の収支が赤字でした。赤字施設の割合は前年度より20ポイント近く増え、コロナ前と比べて2倍近く、05年度の調査開始以降で最大となっています。
 補助金を除く収支が赤字だったのが62%で、前年度の43%から大幅に増えています。補助金を含めても赤字だった施設は前年度の39・8%から51%に上昇。
 厚生労働省の調査では特別養護老人ホームの22年度の利益率は▲1%、介護老人保健施設は▲1・1%、地域密着型の特別養護老人ホームも▲1・1%。施設系はすべてマイナス利益率に。厚労省は「光熱費や水道代の高騰でコストがかさんだ影響で介護施設の経営が厳しくなっている」と分析しています。
 物価上昇の影響で光熱費や食材費、燃料代などの出費が増えことなどが直接の要因ですが、一般企業など全産業の平均利益率(22年度)は6・2%であることを考えると、業界全体がマイナスの利益率で極めて困難な状況にあることは間違いありません。
 経営困難は、具体的には低賃金と人手不足として実感されます。離職が多く、残った職員の負担が増え、悪循環的に現場を回せなくなる。食事介助がデイサービスなど他部門の応援がないと成り立たない。施設が老朽化しても修繕は後回しに…
 こうした状況に厚生労働省は、ロボットやセンサー、ICT(情報通信技術)を活用した〈介護分野における生産性向上〉を打ち出しています。
 実際、組合員が働く介護施設でも高齢者の話し相手としてペットロボットが市の補助金で導入されています。しかし、人間が雑務に追われ、高齢者とのコミュニケーションをロボットに任せることには違和感があります。

社会保障の崩壊

 介護サービスの7月の有効求人倍率は3・88倍。平均の1・15倍を大きく上回っています。介護労働者の賃金水準の低さは長年の懸案ですが、今年の春闘での賃上げ率は全産業平均で3・6%だった一方、介護労働者は1・4%にとどまっています。
 政府は補正予算で介護職の賃金を月額6000円相当を引き上げることを盛り込んだが、介護業界の人手不足は深刻な状況が続きそうです。
 賃金などの待遇改善は急務です。しかし介護報酬は公定価格なので、物価が高騰しても価格に転嫁できない。賃上げのための増額には公費(税金)投入や保険料の引き上げも必要だ。「このままでは事業継続が困難となり、地域の介護基盤が崩壊してしまう」との分析も。
 しかし、岸田政権が、子育て支援などの財源(明言はしていないが防衛費の財源も)として歳出削減で狙っているのは医療や介護などの社会保障分野なのです。「医療と介護をどう切るかが大事」(財務省幹部)との声もある。
 すでに国民所得に占める税金や社会保険料の割合(国民負担率)は47・5%(22年度)が現状で、5公5民との怨嗟の声が世間に満ちている。
 社会保障の崩壊と対決する社会運動的な指向も含めた医療福祉系の労働運動の展開を模索していきたい。

 ちば合同労組ニュース 第161号 2023年12月1日発行より