労働者が団結して闘うことに選択肢と希望を
最近、1994年に発表された論文を読む機会があった。07年に制定された労働契約法の音頭を取った著名な労働法学者が書いたもの。これを読むと、労働基準法などによる労働条件の集団的決定から、労働契約(法)に基づく個別労働条件の決定へと転換させること、そして労働争議については労働組合による集団的労使関係から労働審判や個別労働紛争解決制度へと転換させる意図が簡潔明瞭に書いてある。筆者は労働法の世界では最高権威者ともいうべき人物だが、明晰な経済評論家が書いたような論文で、これが、日経連報告「新時代の日本的経営」の前年に発表されていたことを知って背筋が冷たくなった。
残業代ゼロ制度もそうなのだが、労働基準法の労働時間規制などを適用除外にして、個別に労働条件を設定していく志向が強烈に強まっている。労働契約法は採用から契約終了までの個別労働条件を民法的発想で規制する法律である。まだ未完の法律と言われており、今後、労働条件の全領域を包括する法律になっていくことが予想される。
いま安倍政権が狙っている金銭解雇制度なども労働契約法の制定時から議論されているし、出向や転籍、有期雇用問題なども包括する構図になっていくと思われる。
いろいろありますが、一番大切なことは、本来、労働法は労働組合の闘いと工場労働など集団労働に規定されて、労働条件を集団的に設定することに意味があります。集団的労使関係は労働組合だけの問題ではありません。
労働者が団結して自らの労働と生活を守る――このこと自体を葬ることが画策されています。労働者が団結して闘うことに選択肢と希望があることを示す。これが私たちに何よりも求めらていることだと思います。
(書記長)
ちば合同労組ニュース 第77号(2016年12月1日発行)より