図書館司書がストライキ!!
非正規公務員の現実を闘いで変えよう
東京都練馬区の区立図書館の司書らが加入する労働組合が民間委託に反対してストライキを構え、SNSで支持表明が拡大し、新聞やテレビでも大きく報じられた。
ストライキを準備したのは「図書館専門員」と呼ばれる非常勤の司書57人で作る練馬区図書館専門員労働組合。練馬区は、12の区立図書館のうち9館をすでに民間企業に運営を委託し、さらに2館で5年以内に指定管理者制度を導入、区の運営は1館のみとする方針だ。
今回のストの舞台となった練馬図書館は、館長を含めた職員合わせて35人のうち32人が非常勤。1年契約で事実上継続雇用となっている。20~30年以上も業務に携わる労働者もいる。実態は常勤だが非常勤を偽装しているだけなのだ。
組合員はすべて女性で全員が非正規。組合員は、図書館専門員であり、常勤職員と変わらない蔵書や選書のチェック、ネットからレファレンスできるサービスなど、図書館業務の中枢的な業務を行っている。「指定管理者制度が導入されれば、司書として必要な現場のノウハウも蓄積されず、図書館運営の崩壊をもたらす」と危機感を募らせる。
今回のストライキは、前夜までの労使交渉で「一定の合意に至った」として当面延期された(交渉期限は19年1月18日)。しかし区側の回答は本質的にゼロ回答であり、闘いはこれで終わらない。
加速する民間委託
実は全国の公立図書館の数は増えている。1996年から15年の間に実に1・4倍になっている。しかし、この図書館運営の担い手の大半が非正規なのだ。職員の7割が有期雇用。非正規職員の平均賃金は205万1000円だ。指定管理者制度は03年に始まり、公立図書館の6館に1館の割合で導入されている。東京都では225の図書館のうち112が民間委託。
あまりに非正規が増え、民間運営になっても経費は減らないと指摘される状況にさえある。とはいえ指定管理者制度(民間委託)が非正規化に拍車を掛けていることは間違いない。
時給180円も
ツタヤが運営する公立図書館は、スターバックスが併設されてTポイントカードが使えるとか。そして新規購入書籍の半分が料理本だったとか、『旧約聖書出エジプト記』『カラマーゾフの兄弟』が旅行コーナーに置かれていたなどのニュースは知っていた。
とはいえ不勉強なので少しネットや書籍で調べてみたのだが、公立図書館の民営委託がいかに雇用を破壊し、ワーキングプアを生み出しているのか認識の甘さを痛感した。月十数万円の手取りで働くシングルマザー司書などの記事があふれている。
足立区では、民間委託された図書館で小学校出張読み聞かせ会などの企画を実施した館長が退職に追いやられ、盗難防止シールを貼る作業を時間外に1枚7円―時給換算で180円程度で行わせて裁判となり、いずれも使用者敗訴となった。
「民間に委託すれば少ない費用でより充実したサービスが受けられる」はまったくのデマで、現実には受託した民間企業が利益を確保するために人件費を低く抑えているだけなのだ。
そもそも図書館は民営化になじまない事業だ。守谷市の図書館では、館長や職員の退職が相次ぎ、指定管理者制度が撤回された。水道事業と同じく、民営化が失敗し、「再公営化」する自治体もある。
変化の可能性
今回の図書館ストライキだけでなく、東京23区では公務員労働者への大幅賃下げへの怒りが人勧実施を止めた。
全国の自治体で会計年度任用職員制度が導入されようとしている。今回のストライキに対して官製ワーキングプアの現実を闘って変える兆しと感じる人も多い。これまで官製ワーキングプアの問題は、労働者の悲惨な現状としか報道されてこなかった。
しかし、これまでの公務員労働運動のあり方、イメージ、スタイルを非正規の主体的な怒りと闘いで塗り替えつつある。図書館司書たちの怒りと一つになり、千葉地域でも闘いをつくり出したい。
(組合員K)
ちば合同労組ニュース 第102号 2019年01月1日発行より