実践的に考える職場と労働法
年休ちゃんと使ってますか?
年次有給休暇は法律で定められた労働者の権利
皆さんは年次有給休暇(年休)をちゃんと使っていますか? 意外に細かいルールを知らない人も多いと思います。
年次有給休暇とは、その名の通り「有給」で休むことができます。つまり休んでも賃金が減ることがない休暇です。厚生労働省は「一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇」と解説しています。
●法律上当然に発生
年休が発生する条件は、
①働き始めた日から6か月経過していること
②その期間の全労働日の8割以上出勤したこと
――この2要件を満たすことで法律上当然に労働者に生ずる権利です。会社の裁量で与えるものでも労働者が請求して発生するものでもありません。必ず発生します。
最初に年休が発生した日から1年が経過すると、それまでの1年のうちに8割以上出勤していれば今度は11日間の年休が発生します。その後も同様に②の要件を満たすことで最大20日間の年休が発生します。
労働時間が少ないパート労働者にも年休は発生します。労働日数による比例付与となり、例えば週4日なら7日の有休からスタートして最大15日が発生します。
年休を使わずにいると発生から2年で時効消滅します。
例えば2017年4月1日に入社した人なら17年10月1日に10日、18年10月1日に11日分の有休が発生します。しかし最初に発生した10日の有休をまったく使わずにいた場合、2年の時効に当たる19年10月1日に消滅し、同時に12日間の年休が新たに発生します。
年休は発生日から2年以内であれば繰り越すことができるので、上記の例であれば、19年10月1日に10日間が時効消滅し、11+12日の年休の権利を持つことになります。
●理由は必要なし
年休は労働者の「休む権利」なので休む理由は自由です。申請書の提出などが必要な場合でも「私用」と書けば問題ありません。実際は、冠婚葬祭や病気など「遊ぶ以外の用事」がなければ年休が請求しにくい職場も多いですが、法律上は「理由を会社に伝える義務はない」と言えます。
裁判でも「年休の利用目的は労基法は関知しない。年休をどう利用するかは使用者の干渉を許さない労働者の自由」となっています。
原則として労働者が指定(請求)した時季に使用者は年休をを与える必要があります。「時季指定権」と言います。
他方で法律は「ただし、請求された時季に年休を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季に与えることができる」と規定しています。会社側の「時季変更権」です。
ちなみに時季となっているのは「バカンスのように季節的であることが望ましい時期」ということらしい。あまりピンときません。
会社はいつでも変更できるわけではありません。時季変更権の行使の適否は、事業の内容・規模、労働者の担当業務、事業活動の繁閑、他の労働者の年休とのとの調整など様々な要因を考慮して判断されることになります。
使用者は労働者の希望が実現できるように配慮が求められ、いつも要員ギリギリで「君が休むと操業できない」は理由になりません。
●様々な付与の方法
労使協定により時間単位で使えるようにできます。
同じく労使協定により5日を超える年休について、協定で定めた時季に使えるようにできます。①一斉休業方式、②班・グループの交替休業方式、③年間計画表による個人方式などがあります。この場合、時季指定権・変更権は共に消滅します。
●年休中の賃金
年休の期間・時間の賃金は次の3つのいずれかです。
①平均賃金
②通常の賃金
③健康保険の標準報酬月額の30分の1(労使協定)
分かりやすいのは②で実際に労働したものとして扱う賃金の支払い方式で、実際、最も一般的なケースです。
●皆勤手当はどうなる?
厚労省の調査では皆勤手当は全企業の3分の1以上で制度化されています。年休を使うと「休み」として扱われ皆勤手当がなくなると思われがちですが、年休を使った人の皆勤手当を減らしたり、支給しないことは違法です。
労基法附則136条は、年休を取得した労働者に対して不利益取扱い(精皆勤手当や賞与の減額、欠勤扱いとすることによる不利な人事考課など)は禁止しています。ただこれについて罰則は設けられていません。
●労働基準法に違反
年休は、労働基準法39条が定める労働者の権利です。労働者に年休を与えなかったり、取得を拒否すれば、労基法違反です。違反は「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」が科せられます。
▼年休を使った日の分に決められた賃金を払わない
▼正当な理由もなく会社が時季変更権を行使し、年休を取る日を変更させる
▼年休取得日に出勤を命じる
――などはすべて違法です。(S)
ちば合同労組ニュース 第93号 2018年04月1日発行より