広く深くなる現代の労働の闇

「スキマバイトの隙間」
1月冒頭からの『東京新聞』による労働連載が話題だ。数年で2900万人まで登録者を伸ばし急拡大するスポットワーク。スマホ1台で空いた時間にアプリを通じて履歴書も面接もなしに「日ごと」「時間ごと」の労働に従事する〝新しい〟雇用業態だ。
しかし、報道も労働界もこの全体像に追いついていない状況だ。ここに一石を投じたのが今回の連載記事だ。
「カイジ」の世界
連載では「偽装請負」「日雇い派遣」「労災隠し」「給与中抜き」……信じがたい労働実態を暴く迫真のルポが続く。「最短1分で給料GET!」の打ち出しで募集され、スタッフの当日欠員の代わりに出動するために待機する〝スタンバイバイト〟だ。
労働者は、何かあるかその日、その時間に現場に行ってみなければ全くわからない。
高校生が行った深夜の勤務の現場では、識別のために腕に輪ゴムをつけさせられ、休憩時は何もない冷たい床の上で百人以上が一斉に雑魚寝をさせられる。「輪ゴムの人」と呼ばれ奴隷のような扱い。日本の裏社会・最底辺を描いた「漫画『カイジ』の世界」との感想をもらす。
多発する労働問題
「なんらかのトラブルにあった」スポットワーカーは46・8%に及ぶ。多くの労働者がおかしいと思いながら働いている。「仕事内容が求人情報と違った」(19・2%)、「業務に関して十分な指示や教育がなかった」(17・7%)、「一方的にスポットワークサービスの利用を停止・制限された」(16・9%)と続く。
しかし、19・2%が誰にも相談できなかった。その多くは「その日限りの仕事だったので我慢すればよい」と回答している(連合調査)。ありえない労働契約だが「それでも働けなくなるよりはマシ」とスポットワークを選ばざるをえない現実がある。

国家主導で推進
スポットワーカーの内面にももちろん問題はある。だが、そのように国家・財界が意図的に仕向けてきたのだ。
急拡大の背景には、アプリ開発という技術発展、物価高騰のほかに14年以降の第二次安倍政権下での「働き方改革」による規制緩和が背景にあると指摘される(図参照)。
「働き方改革」は電通社員の過労死自殺問題に端を発したこともあり長時間労働の法規制の問題が焦点化した。そしてスポットワークが可能となる分野が見落とされた。これらの規制緩和によって「闇バイト」がはびこる社会的土壌が一気につくられた。
近年の物価高騰・人手不足などを背景に郵便局をはじめ大手もスポットワークに頼らざるをえない。もはや日本はこのグレーな労働なしに成り立たないとも言われる。
最大の問題は、厚生労働省や労働基準監督署は、この脱法的な労働環境がはびこることを百も承知で見て見ぬふりをし、ブレーキをかけていないことだ。
しかし少しずつだが社会的にこの業態に疑問が投げかけられ、対策を講じる動きも同時に紹介されている。労働組合でも英知を集め、対抗する動きを始めよう!
ちば合同労組ニュース 第175号 2025年2月1日発行より