急激な変化・再編進む介護業界

制度・政策

投資ファンド主導の業界再編とデジタル化の狙い

急激な変化・再編進む介護業界

人手不足の加速

介護職場の人手不足は本当に深刻だ。都内の介護関連職種の有効求人倍率は48倍(今年8月のハローワーク品川)。全国でもホームヘルパーの求人倍率は15倍前後だ。人手不足が原因の訪問介護系の倒産も増加の一途。高齢者の女性が多く、結果として負担の大きい若手が辞める構図だ。
 65歳以上の高齢者の数がピークを迎える40年度に介護職員は280万人が必要となるが65万人が不足すると政府は推計している。東京・神奈川・大阪など都市部が深刻だ。
 グループホームなどでの1人夜勤の状態化も頻繁に報道される。しかし実際のところ、国の最低基準では、ユニット(5~9人)で1人以上、特養は25人以上で1人以上となっており、事実上容認されているのだ。介護労働安定センターの20年調査によると、深夜(午前10時~翌朝5時)の勤務時間帯で52・8%が一人夜勤。

キャリアパス制度

 岸田政権は、介護・保育・看護・障害福祉で賃金3%引き上げの方針を打ち出した。
 現状では、介護労働者の賃金は全産業平均を大きく下回る。日本介護クラフトユニオンの調査で働く組合員の19年の平均年収は約360万円。全産業平均(463万円)。地方では手取りで18~20万円が相場だ。介護職は昇給額が低く、賃金体系が右肩上がりではない。30歳代後半が年収のピークとなっている。
 安倍政権時代から介護職員の待遇改善施策が打ち出されているが、待遇底上げではなく、キャリアパス制度(階層や等級を設定し、査定・評価の制度を導入し、賃金その他の待遇の差をつける仕組み)の導入が図られている。
 つまり、労働者を分断し、階層化し、使用者の評価が良い者のみを好待遇とする施策なのです。職場をピラミッド(階層)型につくりかえ、格差拡大・管理強化を図ることで職場の矛盾や困難を押さえつけようとしているのです。

介護は儲かる?

 昨年、外資系買収ファンドがニチイ学館やツクイホールディングスなど介護大手を買収し、非上場化したことが大きなニュースとなりました。投資ファンドの間で「介護は儲かる」の見方が広がっているのです。
 ニチイ学館は昨年11月に上場廃止となり株式市場から姿を消しました。米買収ファンドによる経営陣による買収(MBO=マネジメント・バイアウト)が成功し、買収に反対した株主の株もすべて買い取られました。
 ニチイ学館は、グッドウィル系コムスンを買収するなどして急拡大し、昨年3月期の連結売上高は2525億円、従業員3万4000人の業界最大手です。

ファンドの狙い

 投資ファンドなどのM&Aは何が狙いか?
 SOMPOケアが損害保険業から介護事業に参入したのは2012年ですがが、大手のメッセージやワタミを買収して今や業界2位。デジタル技術による介護の〝効率化〟を加速させています。
 SOMPOケアの介護付きホームでは、センサーで寝ている人の体動を検出してデータを送り、睡眠・覚醒・起き上がり・離床といった状況、心拍や呼吸の数を携帯端末やパソコンのモニターにリアルタイムで表示。カメラと連動させて呼吸や心拍に異常があればアラートを送り、居室内をカメラで映す。
 膀胱の大きさを測定して排尿のタイミングを知らせる装着型の機器によりトイレ誘導を行う技術もある。
 国の基準では職員1人が介護する入居者は3人まで。だがSOMPOケアは現状の2・4人を4人まで増やす効率化プロジェクトを進める。
 デジタル化とスケールメリットのカラクリがここにあります。収入は政府の公定価格である介護報酬単価で決まるので取りっぱぐれがない。したがって支出を効率化・合理化すれば巨額の利益を出せると考えているのです。
 業界再編と合理化については、実は投資ファンドと厚生労働省の思惑(職員配置基準の改悪)は合致しているのです。(S)

ちば合同労組ニュース 第138号 2022年1月1日発行より