日本の労働組合の組織率の現状 自治労と日教組で組合員数が大幅に減少
数十年の低下傾向
今回は日本の労働組合の現状についてデータなどを少し見たい。今年6月に連合総研が発行した報告書『労働組合の未来を作る』を参考にしました。
日本の労働組合の組織率はこの数十年低下傾向が続く。これは世界的な傾向だ。
過去40年の組織率の推移を見ると、米国は17・4%(19
85年)→9・9%(19年)、ドイツは34・7%(85年)→16・3%(19年)、英国は45・3%(85年)→23・5%(19年)となっている。
デンマークやスウェーデンなど北欧諸国は60%前後の高い組織率を維持。また韓国では組織率が上昇し、10・1%(15年/ILOのデータ)→14・2%(21年/韓国雇用労働部)に上昇している。
インドネシアの13%(19年)、バングラディッシュの11・9%(18年)、マレーシアの8・7%(18年)など、経済成長国で必ずしも組織率が上がるわけではない。
製造業で働く労働者の減少や賃金上昇率の低下、政府や資本による労働組合に対する攻撃など、様々な理由が分析されている。
産業構造の変化でブルーカラー労働者が減少しホワイトカラー労働者が増えたこと、他方で非正規労働者が増えたことで労働条件の格差が広がり、集団的な交渉が難しくなったことは否めない。
米国では、もともと公務員や公共サービス部門の組織率が高かったが、民営化の進展が組織率を引き下げた要因だ。移民の増加や雇用形態の多様化も組織率を下げた要因と分析されている。
90年代後半の激変
日本ではどうか。
厚生労働省の「労働組合基礎調査」によれば、22年の推定組織率は、16・5%と過去最低の水準。1970年代半ばから一貫して減少しているが近年、減少傾向は鈍化している。組織率は低下しているものの女性や高齢者の就労で雇用者総数が増加しているため、組合員数はほぼ横ばいの状況だ。
同報告書によると、組合員数の変動について4点が指摘されている。
①大企業などでユニオンショップ協定を結んでいる場合は、製造業の縮小などで従業員が減少したことが組合員の減少につながった
②加入率が減少した
③正規雇用が減少し非正規労働者が増えた
④労働組合の解散や自然消滅
90年代後半から2000年代半ばかけては、労働組合のある企業で従業員数が減少した結果、組合員数が減少した(1)。同時期に解散する労働組合も多かった(4)。そして雇用が激増したことにより労働組合の組織率が低下した。
企業規模別の組織率を見ると、特に中小企業で組織率が一貫して低下してきている。現状、組合員の約7割が大企業労働者となっている。
99人以下の小企業では、00年に33万人の組合員だったのが現状で4割減となっている。
産業別で見ると、製造業が1番多く262万人(26・6%)で、卸売業・小売業が154万人(15・6%)、建設業85万人(8・6%)、運輸業・郵便業81万人(8・2%)となっている。製造業で大きく減少し(29万人)、卸売業・小売業で大きく増加している(56万人)。
劇的な減少が公務員関係で過去20年間で47万人(39%)の減少だ。
公務員労組の減少
組合の登録人員数の増減を見てみよう。大きく増加したのはUAゼンセン。スーパーやドラッグストアなどの組織化や労組結成が組織拡大をもたらした。航空連合は、航空産業で働く労働者の数が増えたことが背景にある。
他方、自動車総連や基幹労連(鉄鋼や造船など)は大きな変動がない。電機連合やJAM(金属関係)、情報労連は1~2割程度減少した。製造業の減少傾向が背景。自動車は期間工の組織化などが反映したと分析されている。
大幅に減少した組織が自治労と日教組だ。自治労は過去20年で約30%、日教組は約40%の減少となっている。組織率が高い地域(単組)と組織率が急速に低下する地域(単組)が併存しているのが特徴だ。組織率が一定比率を割り込むと組合加入のハードルが上がる。
ちば合同労組ニュース 第173号 2024年12月1日発行より