あの日のオルガン

労働映画

映画紹介『あの日のオルガン』

 保育園を丸ごと集団疎開させる決断した東京・戸越保育園の保母(保育士)と園児たちを描いた実話を映画化。小学生の疎開は見聞きするが、保育園の疎開は投稿一覧初めて聞いた。
 東京にも戦火が迫る1944年、戸越保育園は園児を空襲から守るため親元から遠く離れた疎開先を探していた。最初は幼い子と離れることに反発した親たちも「せめて子どもだけでも生き延びて欲しい」と我が子を託す。
 ようやく見つけたのは埼玉の廃寺。風呂もなく便所は1つ、ガラス戸もない荒れた寺だ。約50人の3~6歳の子どもと数人の保育士だけの生活はどれほど困難か。食料を村人から分け与えてもらうがその量は少なく、村人からも疎まれる。それでも懸命に保育士たちは子どもたちを守る。 

 戸田恵梨香が演じる主任保母・楓先生は、いつも怒っているが類まれな指導力を発揮。いつもドジばかりのみっちゃん先生(大原櫻子)はオルガンを奏で子ども目線で接する。
 そして45年3月10日。東京大空襲で10万人の命が奪われる。楓たちも家族や同僚を失いながら、園児たちに家族の死を伝え、空襲警報があれば必死に園児を守り続ける。そして8月15日、無条件降伏が発表され戦争は終わりを告げる。
 疎開保育園に園児の親や親族が引き取りにやってくる。最後の園児が引き取られ保育園は終わりを告げる。いつも怒ってばかりだった楓はようやく皆の前で泣き崩れる。

 2019年に映画化されたが、原作者のインタビューを読むと、なぜこのタイミングで映画化されたと思うかの質問に「70代、80代の戦争体験者の危機感だ」と回答したことが印象に残った。

ちば合同労組ニュース 第139号 2022年2月1日発行より