映画紹介『ラストマイル』

 昨年8月に公開された日本映画。ほぼアマゾンを想起させる巨大物流センターを舞台にしたサスペンス作品。物語はブラックフライデーの前日、倉庫から発送された商品を開封すると爆発する事件から幕を開ける。

 爆弾事件が連続発生するなかでも、売り上げ目標や稼働率を死守せよとの本部長の指示。配送を止められない現場は混乱を極め、警察の捜査も始動。物流が滞ることで、医療機関への物資供給にも影響が広がり、運送会社との摩擦も激化していく。そして、5年前に配送センター起きた過去の事件が徐々に明らかになっていく。

 数人の正社員は、数値目標の達成を迫られ、失敗の許されない重圧に押しつぶされそうに。下請け・孫請けの運送会社にまでプレッシャーが波及する。親子で運送業務にあたる家族の姿も描かれる。長年トラックを走らせてきた父親と、倒産で物流現場に身を投じた息子。2000人の非正規・派遣社員が出勤する風景も描写され、巨大物流システムを支える人々のリアルが浮かび上がる。

 物流業界の「ラストワンマイル」とは、倉庫や配送センターから顧客の自宅や店舗に荷物を届ける最後の区間を指す。ドライバー不足や低賃金、長時間労働など多くの課題が集中する部分だ。ピッキング業務は自動化が進み、タブレットの指示で人間労働も最大限に効率化されロボットと一緒に働く。

 爆弾事件を軸に展開するサスペンスでありながら、物流業界で働く多様な人びとの姿を通して、現代社会の構造的な問題を鋭く映し出す。「お仕事映画」としても印象が残る作品だ。

ちば合同労組ニュース 第183号 2025年10月1日発行より

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