映画紹介『富士山頂』/台風観測のため巨大レーダー建設

労働映画

映画紹介『富士山頂』

 石原裕次郎が主演の1970年の映画。原作は新田次郎。
 富士山頂にある富士山測候所に台風観測のための巨大レーダーを建設する様子を描いた作品。昭和初期から1950年代にかけて伊勢湾台風など巨大台風が来襲し甚大な被害をもたらした。しかし当時は気象レーダーも気象衛星もなく日本列島から海上の台風を捉えることは困難だった。富士山頂に巨大レーダーを設置すれば800㌔先の台風を監視できる。
 実は原作者の新田が建設責任者(気象庁課長)として従事した。映画では新田役を芦田伸介が演じた。三菱電機技術部員を石原、大成建設の現場監督を山崎努、建設資材を運ぶ地元の馬方組合の組合長が勝新太郎など。
 工事ができるのは夏季だけ、しかも晴れの日はわずか。極寒、強風、降雪、高山病と作業は難航。作業員の逃亡など500㌧に及ぶ資材運搬や現場の建設作業もトラブルが続く。冬季の予備調査時には遺書を書いて赴いた人も。
 建設工事の山場はパラボラアンテナを保護する球状の骨組みをヘリコプターで輸送するシーン。操縦士(渡哲也)が乱気流のなか直径9㍍、重さ600㌔の鉄骨を運ぶ。これほどの重量物をこの高度まで空輸した例は世界にはなかった。NHKのプロジェクトX第1回でも取り上げられた話だ。
 富士山レーダーは着工から2年かけ1964年10月1日に試験運用を開始した。同じ日に東海道新幹線が開業し、9日後に東京オリンピックが始まった。1999年まで運用された。
 宇野重吉など大御所俳優がやたら出演し、壮大なストーリーかつ大味なのだが、そこが当時の雰囲気で魅力かも。

 ちば合同労組ニュース 第147号 2022年10月1日発行より