映画紹介『戦場記者』

労働映画

映画紹介『戦場記者』

 須賀川拓はTBSテレビの中東支局長として世界中を飛び回る特派員。映画は須賀川が取材に向かった3つの戦地を取り上げる。
 パレスチナ・ガザ地区では4人の子どもと妻を空爆で失った男性を取材する。他方、イスラエル側では、ハマスのロケット弾と迎撃ミサイルが空を行き交う光景が映し出される。
 アフガニスタンでは、タリバン政権の下で「パン、仕事、自由」を訴え女性の権利を求めるデモを取材。タリバンの戦闘員たちが威嚇射撃を行う緊迫した場面も。首都カブールでは、橋の下に大勢の薬物中毒者たちが住む。刺激臭と腐敗臭と熱気が混ざった〝薬物地獄〟とも言うべき様子が映し出される。その背景にはとてつもない貧困があると指摘される。
 ウクライナではクラスター爆弾が降り注ぐ街の住民やロシア軍の攻撃にさらされる原発の現地取材を行う。
 数年前にガザ地区の様子を知りたくて探した映像で須賀川記者を知った。経験も行動力もある力強い取材スタイル。日本の戦場記者として最前線で活躍し貴重な映像を提供する。
映画ではいつもと違い須賀川が取材対象だ。ロンドンにある中東支局のデスクや近くの公園でのインタビューの部分が面白かった。
 戦場取材には危険は当然ある。イラクでの人質事件やシリアでジャーナリストで武装勢力に拘束された事件などで〝自己責任論〟が吹き荒れ、日本のジャーナリストの取材は困難が多い。だが彼らのような存在と取材がなければ届かない情報は確かにある。取材を支える仲介者やコーディネーター、通訳やカメラクルーなど仲間の存在なども印象に残った。

ちば合同労組ニュース 第176号 2025年3月1日発行より