映画紹介『西部を駆ける勇者』

 1850年代の米中西部を舞台とした映画。鉄道技師リードの野望はミシシッピ川を越えて西へと線路を拡張すること。物語の軸は、広大な荒野に鉄路を敷きミシシッピ川に鉄道橋を架けようとする「鉄道会社」と、これまで物流の主役として川の覇権を握ってきた「蒸気船会社」の闘争だ。

 当時、ミシシッピ川は米最大の物流の生命線。1810年代に蒸気船が登場して以来、川を上ることが可能になり物流が爆発的に増加した。河口の港町ニューオーリンズは全米最大の輸出港へと成長。南部で収穫された綿花や、中西部で採れた小麦やコーンなどの農産物が、蒸気船に積まれて川を下り、ニューオーリンズ経由で欧州や東海岸へ輸出された。

 実話でもあるのだが、鉄道橋が完成した直後、蒸気船が橋に衝突し炎上する事件が起きる。船会社は「危険な橋を撤去しろ」と裁判を起こす。鉄道側の弁護士として「一握りの船の権利よりも、国を発展させる何万人の移動の権利の方が重い」と主張し、勝利を収めたのが後の大統領リンカーン。

 この裁判を機に交通の主役は一気に鉄道へとシフトし、鉄道ブームは加熱の一途をたどる(10年間で地球1周半分を敷設)。しかし56年にクリミア戦争が終結すると欧州の資金が引き揚げられ、さらに「計画だけで実際には線路を一本も敷いていない鉄道会社」の不正や経営破綻が発覚。これが引き金となり米国発の金融恐慌(57年恐慌)へ発展し、多くの銀行や鉄道会社が連鎖倒産した。

 西部劇なのだが、最近の生成AIやデータセンターをめぐる過熱ぶりを想起させ、当時の雰囲気の中に現代的な共通性を感じさせる映画であった。

ちば合同労組ニュース 第192号 2026年7月1日発行より

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