映画紹介『パラダイス・ナウ』
先月に引き続きパレスチナ映画。イスラエル・ナザレ生まれのハニ・アブ・アサド監督による05年の映画。自爆攻撃に向かう2人のパレスチナ人青年を中心に描く。
舞台はヨルダン川西岸地区の町ナブルス。かつてはオリーブオイルを原料とした石鹸の製造で栄えた街だ。第2次インティファーダ(パレスチナ人による反占領抵抗運動)でイスラエルの過酷な軍事弾圧を受け4千人以上の死者を出した。40か所あった石鹸工場は2つになった。現在、四方をブロック塀とフェンスで囲まれ、どこに行くにも検問所を通る。
幼馴染のサイードとハーレドは自動車修理工として働くが、未来も希望もなく貧しい家族の生活を助けるためにできることは何もない。「閉塞感とフラストレーションと絶望がないまぜになったどん底の生活」
ある日、サイードは車の修理に来たスーハと出会い、互いに惹かれる。彼女の父は「殉教者」として周囲から英雄視される。裕福な家庭に生まれ外国で教育を受け、自分の意見をハッキリと語るスーハ。他方、スラム街育ちで寡黙なサイードの父はイスラエルへの密告者だった。この対照性は重い。
そんな時に、サイードとハーレドは仲間が殺された報復として自爆攻撃を命じられる。サイードは母親に「父親がどのような人間だったのか」と尋ねる。
ひげを剃りスーツに身を包み爆弾を体に装着。フェンスを切断し、イスラエル側に侵入。ところが思わぬアクシデントで2人は離ればなれに…
サイードの独白やハーレドとスーハの口論の場面などを引用したいが、ぜひ直接観て欲しい。
ちば合同労組ニュース 第161号 2023年12月1日発行より