書評 『ルポ保育格差』小林美希著(岩波書店)

保育現場からの迫力のレポート

改善進むぬ実態

 『看護崩壊』『看護の質』などを描いた社会派ジャーナリスト小林美希氏が保育園の実態を克明に捉える。本書は『ルポ保育崩壊』から3年経った保育現場を描いた〈続編〉だ。
 「待機児童解消」「保育士の処遇改善」の名のもとで保育園は変わったのか? 現場はまったく逆であることを本書は教えてくれる。
 それは「委託費の弾力的運用」のもとに進められる極限の規制緩和・民営化だ。急激に増加する保育施設の間には、質の格差が大きく広がり始めている。まさにタイトルどおり「保育格差」だ。
 本書で圧巻なのは、保育の質を「改善」するために出される公費が目的通りに使われていない実態を、具体的な数字を挙げて浮かび上がらせていることだ。
 例えば「ブラック保育園」を表す一つ指標として、「保育者人件費比率」を紹介。国は、公費の7~8割を保育士の人件費に掛けることを想定しているが、実際には5割にも満たず、わずか2割の施設もたくさんある。そういう都内の「ブラック保育園」が実名で上げられている。
 いくら法制度を変えても保育士への人件費には回されず、施設側が儲けるかに回される現実がある。保育士は月収15万円に対し、園長は月収100万円以上という施設も多くあるそうだ。
 巻末では、著者が全国の先進的な取り組みを紹介し、労働組合による改善も呼びかけている。

 

保育所ストライキ

 こうした中で保育所でもストライキの動きが起きている。ストが準備されたのは、宮城県の保育所。この保育所は、賃金は基本給が14万円。そのうえ園長のパワハラがひどく、保育士が全員退職したこともある。園長の気分で方針が変わり現場は混乱。保育士への教育や指導も適切になされない結果、保育環境が崩壊する結果に陥ったのです。
 保育士たちは辞める選択肢も考えたそうですが、労働組合の存在を知り、「いい保育園にしたい」との思いで仲間を募って組合に加入。要求書を提出し、団体交渉を開始しました。
 団体交渉の結果、園長のパワハラは改善されましたが、賃金未払いや保育の質について不誠実な対応を続けたため、労働組合は市役所への申し入れや、保護者への署名運動で園に改善を迫りましたがまたも無視。やむなくストライキを決意し、予告。 
 ストを安全に実施するために、実施日にはできるだけ子どもを預けないよう保護者に呼びかけ、労働組合側で保安要員を配置するなど体制も整えました。
 すると、市役所は強く指導を行うと約束し、運営会社はスト実施前に改善案を労働者に提示しました。未払い残業代はタイムカードの通りに支払い、休憩時間もきちんと確保し、パワハラを止めることなどを約束させました。
 地べたからの労働者、労働組合の闘いこそが必要です。
(組合員K)

ちば合同労組ニュース 第96号 2018年07月1日発行より