「誰でも入れる労働組合を!」

英国一般労組の歴史から学ぶ

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今年1月に岩波書店から出版された『労働組合運動とはなにか』(熊沢誠)を斜め読みしました。著者も「まえがき」で書いてますが労働組合をタイトルに冠した書籍が岩波から出版されるのは、やはり労働組合の復権が要請され、期待される社会状況を反映していると思います。
労働組合の一番大切なことは「社会の主人公としての労働者の誇り」や「団結のすばらしさ」をつかむことにあると思うので、著者の「労働力販売会社」的なニュアンスには大枠でちょっと賛同しかねますが、労働研究を志してから50年という著者の言葉から刺激を受けることは多々ありました。
最初に受けた印象は「労働組合を日常、身近なものに」というスタンスです。資本主義の道徳「競争せよ!」の中で人々はアトム(原子)のようにバラバラになって、労働者同士が厳しい競争関係に陥っていることに対して、著者は「労働者の居場所」「労働者の絆」の大切さを語り、労働者のコミュニティーとしての労働組合の思想を訴えます。
イギリスの労働運動の歴史を取り上げた章では、20世紀初頭のロンドン港の港湾労働者のストライキから生まれた一般労組(ジェネラルユニオン)について書いていました。
当時の労働組合の加入資格は熟練工に限られ、3分の2以上の労働者は労働組合の枠外に貧民のまま放置されていました。その典型が港湾労働者です。100人の応募者の中からその日に仕事をさせる10人をピックアップする。どうやって選ぶのか。ケンカさせて勝ち残った10人を採用するのです。これは本当にあったエピソードです。
社会主義者たちの「このままでいいのか」とよばれるソープボックスキャンペーン(石鹸箱の上に立って決起を呼びかけた)に答えて歴史的なストが始まったのです。
貧しい「人夫」のストライキで敗北は必死と思われたのですが多額のカンパが集まり、世論も支持、スト破りも集まらずストライキは勝利を収めたのです。老エンゲルスはこのストを見て「生きていて良かった」と涙したそうです。現在も英国最大の労働組合である運輸一般労働組合はこうして生まれたのです。
「誰でも入れる労働組合を!」。これがこの組合の合言葉になります。それまで英国の労組は熟練工だけが組織化の対象でしたが、一般労組はあらゆる産業の労働者に門戸を開き、あらゆる産業に組合員を持つ横断組合として発展しました。
港湾労働者やトラック労働者、化学産業やサービス産業、商店やレストランにも組合員がいます。ブティックで解雇があれば、作業着を着たおじさんたちがおしゃれな店に抗議に押しかけ、仰天した店主に解雇を撤回させます。
地域の労働者を「組織労働者」として団結させる地域合同労組をつくるために、こうした本なども材料にもっと熱く語り合う場をもちたいと思いました。
同じく岩波書店の『仕事と暮らしを取りもどす』は米国での新しい労働運動の挑戦を描いたもの。労働者のアイデンティティと発言力を取りもどす試みに問題意識を感じました。介護職などで、知識と技術を労働者に授けることで雇用主との競争力を獲得するというもの。(S)