来年4月に会計年度任用職員制度
更新上限と公募による再度任用で選別が可能に
来年4月の会計年度任用職員の施行を前に各地で交渉やストライキなどの激しい攻防が起きている。
17年に地方公務員法・地方自治法が改定され、地方自治体において「会計年度任用職員」という働き方が新設されることとなった。1950年に制定された地方公務員法としては70年間で初めて有期雇用の公務員を公式に認めるものとなった。
これまで地方自治体で働く非正規公務員は、「臨時職員」「特別職非常勤職員」「一般職非常勤職員」等と名称もまちまちだった。そもそも地方公務員法は正規職員による行政運営を前提としているため、臨時・非常勤職員の明確な法的根拠は存在しない。
非正規公務員の任用根拠になってきたのは、職員の急な退職や死亡を臨時に補充する規定や、国税調査員など年に数日程度の業務などの規定であり、これらを強引に拡大解釈して非正規職員を採用してきたのだ(21世紀に入って任期付職員を制度化)。
しかしながら1980年代の「行政改革」以降、民営化や退職不補充が劇的に進行し、非正規公務員や民間に置き換えられてきたのだ。
非正規公務員は法的根拠もはっきりしない雇用ということもあって正規職員とおよそかけ離れた低賃金や手当なしの状態で働かされてきた。正規職員と同様の業務を行う非正規職員も多く、近年、相談員や図書館、保育所などの専門的・有資格の職種で非正規率が高まっている。
全国各地での闘い
あまりに劣悪な賃金・労働条件の改善を求める闘いは、自治労や自治労連などの全国組織・単組の取り組みだけでなく、非正規公務員は労組法が適用されるため地域合同労組・ユニオンに加入して各自治体との粘り強い交渉を展開し、雇い止めを撤回させたり、処遇改善を運用によって実現してきた。
しかし抜本的な制度改善(正規雇用化や全面的な労働条件の改善)は自治体労働運動として大きな課題だった。
非正規の標準化
会計年度任用職員制度は、非正規公務員の存在を公式に規定することで正規雇用の4分の1~3分の1程度の賃金の非正規労働者を公務職場の標準労働者とするもので、正規職員の削減と非正規への置き換えが加速する。きわめて重大な雇用破壊の問題だ。
しかも長年に渡る非正規公務員の闘いでかちとってきた雇用継続措置や労働基本権(スト権や交渉権)を奪い、会計年度ごとにリセットし、毎年新人扱いするものなのだ。
結論的に言えば、会計年度任用職員制度から生じるあらゆる不利益変更や矛盾を徹底的に暴き、闘いを組織し、遠からず制度そのものを破綻に追い込むことが必要だ。その観点からもう少し詳細に検討したい。
有期雇用の一般職
会計年度任用職員は一般職の地方公務員という位置づけとなる。このため守秘義務や職務専念義務、政治的行為の制限などの服務規制がかかる。公務員としての身分保障もある。しかしながら正規職員とは決定的な違いがある。会計年度任用職員は、有期雇用であり、1回の任期が会計年度(4月1日~翌3月31日)ごとの最長1年なのだ。
フルタイム型とパートタイム型の2つあり、前者には給料や期末手当を含むすべての手当・退職手当が支給され、後者には報酬と通勤費、期末手当が支払われる。
最長1年を超える任用の設定ができず、再度の任用や任期の更新はあるが、大半の自治体が回数や年数の上限を定める。東京23区の多くは5年上限で、足立は最大10年、文京や板橋は上限なし。
ちなみに民間労働者であれば、労働契約報18条による無期転換5年ルールが適用されるが、会計年度任用職員は無期転換が適用されない。
期末手当が支給されることになった。しかし期末手当の原資を捻出するために月額が切り下げられ、年収ベースでも現行水準かわずかの賃上げが大半だ。地域手当や経験加算は無視されている。
会計年度任用職員は、人事評価の対象になる。再度任用・任期更新を行う場合の判断要素にもなる。雇い止めで人事評価が使われることになる。
さらには会計年度任用職員は正規採用であるため1か月間の「条件付採用期間(試用期間)」。1年後に再度任用・任期更新を繰り返しても、そのたびに試用期間がつく。
公募の実施という形で再度の任用の際に選別が可能となるような制度の運用が多数の自治体で行われようとしている。会計年度制度の悪質さがここにある。来年4月の制度移行の際に公募を実施し選別を行ったり、業務の統廃合や民間化も画策されている。
大田区では15年も非常勤保育士として働いてきた労働者を同じ条件(時間)で働かせない態度に終始し、経過措置さえ取らないことに怒りのストライキが決行された。
更新上限(公募)をめぐって板橋区や習志野などで撤廃させた闘いが話題となっている。制度を維持できないぐらいに各地で闘いをつくることが重要ではないか。
ちば合同労組ニュース 第113号 2019年12月1日発行より