業務起因の感染は労災保険給付の対象です

医療・介護労働の現場から

実践的に考える職場と労働法実践的に考える職場と労働法

業務起因の感染は当然に労災保険給付の対象

業務上の新型コロナ感染について

 新型コロナの感染者数は、集計されているだけでも1日2万人を超える過去最大規模で今後も予断を許さない状況です。業務上の感染について労災保険の相談を受けることが多くなりました。結論から言うと、業務に起因して新型コロナに感染した場合は、労災保険給付の対象となります。

 対象となるのは、
◎感染経路が業務によることが明らかな場合
◎感染経路が不明の場合でも、感染リスクが高い業務に従事し、それにより感染した蓋然性が強い場合(例えば、複数の感染者が確認された労働環境下での業務、顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下の業務など)
◎医師・看護師や介護の業務に従事する労働者は、業務外で感染したことが明らかな場合を除き原則として対象

 ――となります。業務に起因して感染した労働者は、雇用形態にかかわらず次のような保険給付を受けることができます。

■療養補償給付

 労災指定医療機関を受診すれば原則として無料で治療を受けることができます。大きな病院の多くは労災指定医療機関です。指定病院で業務上災害であることを伝えて受診すれば費用負担もなく、請求の手続きも楽です。
 やむを得ず指定医療機関以外で治療を受けた場合でも、一度治療費を自己負担し、後で労災請求をすることで、自己負担した費用の全額が支給されます。

■休業補償給付

 療養のために仕事を休み、賃金を受けていない場合に給付を受けることができます。休業3日目までは「免責期間」となり休業4日目から給付を受けることができます。給付額は、休業1日あたり給付基礎日額の8割(特別支給金2割を含む)。基礎給付日額は発症日直前3ヶ月の賃金を暦日数(90日とか91日)で割ったものです。

■遺族補償給付

 業務に起因して感染して亡くなった労働者の遺族は、遺族補償年金や遺族補償一時金を受け取ることができます。

医療・介護が3/4

 新型コロナ感染症に関する労災請求は、21年8月6日現在で1万6157件の請求があり、すでに1万1677件の支給が行われています。医療従事者は約8千件、介護事業は約4千件で全体の4分の3程度となっています。医療従事者等以外では、建設業や製造業、運輸業、飲食サービス業などが目立ちます。
 厚生労働省による具体的な労災認定事例によると、感染経路は特定されなかったが多数の感染が疑われる患者に対する診療や問診業務などに従事していたことが認められた医師や看護師、介護労働者などのケースがあります。
 医療従事者等以外では、飲食店内で接客業務に従事し、店内でクラスターが発生し、これによって感染したと認定された飲食店員、園内でクラスターが発生し感染した保育士、病院の清掃業務に従事しておりクラスター発生で感染した医療従事者との接触により感染したことが認定された清掃員、勤務中に同僚と作業車に同乗し、同僚が感染しており同僚から感染したと認定された建設作業員のケースなどが紹介されています。
 医師や看護師などの医療従事者や介護従事者は、業務外で感染したことが明らかである場合を除いて、原則として労災保険の給付の対象となります。
 それ以外の労働者についても、個別の事案ごとに業務との関連性が認められる場合は、労災保険給付の対象となります。感染経路が判明し感染が業務上のものである場合は当然に労災保険給付の対象となります。
 感染経路が特定されなくても、感染リスクが相対的に高いと考えられる業務に従事し、業務により感染した蓋然性が高いものと認められる場合は、労災保険給付の対象となります。
 工場や事務所で、感染した者が勤務していたことが確認され、一般生活で感染するリスクが低い状況であれば業務上の感染と認定されます。職場で複数の感染が確認された場合は、より業務上の感染の蓋然性が高いといえます。
 小売業や飲食サービス業、郵便や宅配業、バスの運転などで、感染経路を特定することができない場合であっても、たくさんの顧客と接触する場合、業務上の感染は認定されます。

労災補償は当然

 この間、感染しても受診・入院できず、発症から1度も医療機関を受診していない、PCR検査のみで診察を受けていないケースがあります。医師の証明が得られない場合でも、保健所が発行する「宿泊・自宅療養証明書」「就業制限通知書」などを添付することで休業補償の請求ができると厚生労働省は説明しています。

 ちば合同労組ニュース 第134号 2021年9月1日発行より