第2次トランプ政権で2025年はどうなる?

主張
労働と戦争は表裏一体の問題
第2次トランプ政権で25年はどうなる?
 「不法移民を追い出す」「グリーンランドを領土に」「パナマ運河を取りもどす」――1月20日、米国に誕生した第二次トランプ政権、世界中で衝撃が走っている。さらに、トランプは「アメリカがガザを所有する」として、米軍の直接統治によってガザ190万人を追放する(民族浄化)を宣言した。
●就任式に大富豪
 まさに「言いたい放題」、様々な報道で騒がれているがポイントは何か。4年前と変わった特徴的の一つに、アマゾンやグーグルなどビックテック(巨大IT企業の相称)の大富豪が急速にトランプ支持に回ったことだ。就任演説は大富豪がトランプを支えるように勢ぞろい。
 政府効率化省のポストを得たイーロン・マスクに注目が集まるが、黒幕には「影の大統領」も言われるピーター・ティールも。その正体はオンライン決済サービスを開発して一攫千金した「ペイパルマフィア」だ。シリコンバレーで培ったノウハウや人脈をトランプ政権下で国家を使って拡大することを狙う。
●ビックテック企業
 ビックテック企業は、AIバブルの陰りやAI・ビックデータへの警戒の声を前に軍需産業へ一挙に傾注する。その契機がウクライナ戦争だ。この3年で戦争の形態は一挙に変わった。重厚長大な産業が製造する戦車やミサイルからドローンやビッグデータを使用した「無人」戦争への大転換だ。
 ピーター・ティールが創業したパランティア社は、戦場で発生するデータを解析しAI技術を駆使したネットワークシステムを開発。敵陣を突破し、打ち勝つための最適な目標・作戦を提示する。
 このシステムによってウクライナがロシアの進攻を抑え込むことに成功したと宣伝する。これを「台湾有事」に応用し、すでに作戦計画を立案しデータ解析したとも。ビックテック企業は軍産複合体までも飲み込みつつある。

Peter Thiel, co-founder and chairman of Palantir Technologies Inc., speaks during a news conference in Tokyo, Japan, on Monday, Nov. 18, 2019. The billionaire entrepreneur was in Japan to unveil a $150 million, 50-50 joint venture with local financial services firm Sompo Holdings Inc. Palantir Technologies Japan Co. will target government and public sector customers, emphasizing health and cybersecurity initially. Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg via Getty Images

●医療にも食い込む
 パ社は、米国防総省だけではなくCIAや宇宙省、さらに医療福祉や住民サービスにも手を伸ばす。英国の公的医療機関・NHS(国民保健サービス)のネットワークシステムを受注。ピーター・ティールはNHSの民営化を要求し、医療費無料というNHSを根幹から解体しようとしている。英国の医療労働者はこれと対決している。
 日本では、損保ジャパンがパ社と提携、400施設、1万7500人の「介護のAI化」と称して、大合理化を画策する。生命保険の顧客や病院や行政を「サイバー攻撃から守る」と称してパ社が様々な領域に触手を伸ばす可能性が高い。現代の軍事技術は、労働者の職場生産点・生活分野まで浸透している。
●加速主義による新しい資本主義支配
 イーロン・マスクの「効率化」は、政府の形が変わるまで徹底的に破壊し、すべてを民営化、つまり資本家に安く売り飛ばすことだ。マスクは海外の極右政権を焚きつけ全世界を金持ち優遇の世界に変えようとしている。
 第二次トランプ政権は、さらなる資本家による資本家のための政治の始まりだ。米労働運動はこれらとの全面対決となって燃え広がるだろう。
ちば合同労組ニュース 第175号 2025年2月1日発行より