美容大手・ミュゼは未払い賃金を支払え!

ミュゼ

美容大手・ミュゼは未払い賃金を支払え!

労働者に倒産責任を転嫁した社長

 脱毛サロンなど全国に168店舗を展開する美容業界大手ミュゼプラチナムで驚くべきことが起きた。

 ミュゼの従業員3200人のうち2000人を超える従業員に賃金未払いが発生。これが4か月以上にわたって続く。不払い総額は5億円に上る。「貯金を切り崩しながら生活している」という元従業員の悲痛と怒りの声が、SNS上で発信されて話題となっている。

 なぜこのような事態になったのか。24年9月、ミュゼは新たに「MPH株式会社」を設立したが会社上層部の権力争いで経営が悪化。そこから従業員への給与の遅配・欠配が始まった。今年3月に突如、高橋社長は従業員に解雇を通告。

 社員説明会で高橋社長は次の言葉を発した。

皆さんにも僕にも少なからずミュゼプラチナム全体で売り上げが上がらなかった原因があるんじゃないですか?公務員じゃないので売り上げからしか給料って払われないです。(従業員は)そこが理解できていない

 経営責任を労働者に転嫁する発言に怒りが殺到した。社長は解雇通告を「退職勧奨」と言い換え、退職承諾書の提出を呼びかけた。そして4月に入り「休業」を宣言。今も店舗事業を放り投げた状態だ。会社は機能不全に陥り、従業員には離職票も出ず辞めるに辞められない混乱状況が続いている。新入社員や約400万人の会員(顧客)も放置されたままだ。

団体交渉に応じよ

 我慢ならないと数人の従業員が都内労組に加入し、ミュゼで労働組合を結成。5月14日に社長に対して団体交渉を申し入れた。しかし、今だに何の反応もないという。

 続けて東京地裁に破産申し立てを申請するも、社長は事業継続を表明。破産手続きが未完了のため、国の「未払賃金立替払制度」の適用も受けられない。さらに6月1日、突然ミュゼの「解散」を発表。多くの従業員はいまだに未払い賃金は支払われず、苦境に立たされている。

いきなり倒産の現象

 ミュゼ問題は一会社の問題にとどまらず国会でも取り上げられた。脱毛サロンの倒産は業界全体を超えた社会問題にも発展している。03年から創業し急成長したミュゼのように新自由主義化の流れのなかで美容業界は急拡大した。

 しかし、うま味のある儲けを狙って多くの会社が参入し、競争も激化。顧客の争奪戦となり過大な広告費や好条件の立地の確保に資金がまわされ、資金繰りが困難になった。この中で労働者はコストカットの対象となってきた。

 似たような現象は、美容業界だけではない。保育所や学習塾などでも同様だ。年間で先払いした利用者が突然のサービス停止によって大きな損失を被る。

 これらの現象は、「いきなり倒産」とも呼ばれる。新興産業における労働環境の整備不良のために、とんでもない経営者が、労基署の指導にも耳を貸さず、幅を利かせているのだ。

 こうした事態を打開できるのは唯一労働組合だけだ。ミュゼの労働問題は、労働者に一つの選択肢を投げかけている。

(ちば合同労組ニュース 第179号 2025年6月1日発行より)

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