職場における熱中症対策の強化

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企業による対策が義務化され罰則の対象に

職場における熱中症対策の強化

 今年の夏も全国的に平年より気温が高いと予想されています。太平洋高気圧の北への張り出しが強まり猛暑日(35度以上)が多くなりそうです。昨年も猛暑日が過去最多を記録していますが、今年も厳しい暑さが予想されます。
 熱中症による労働災害の増加は身近な場面で体感します。厚生労働省は6月1日から改正労働安全衛生規則を施行し、企業に対して熱中症対策を罰則付きで義務づけました。熱中症の恐れがある労働者を早期に発見し適切な対処を促すことで重篤化の防止を図ると説明されているます。
 昨年(24年)の職場における熱中症による死亡者数は30人、3年連続で30人以上となった。休業4日以上の死傷者数は23年に1106人。6~8月の夏季の気温偏差は増加傾向にあり熱中症リスクは年々高まっている。
 業種別の熱中症による休業4日以上の死傷災害の発生状況(過去5年間)は、建設業、製造業、運送業の順で多く発生している。死亡災害では、建設業が最も多く54人、次いで製造業、警備業の18人。建設業の死亡が際立つ。
 厚生労働省の分析によると死亡災害の約7割は屋外作業で発生し、その多くが初期症状の放置、対応の遅れにより死亡災害に至った。具体的には、症状が重篤した状態で発見される〈発見の遅れ〉と、医療機関に搬送しないなどの〈異常時の対応の不備〉の2つに大別される。
 可能な限り熱中症の症状を早期に発見し、そして作業からの早期離脱や早期の身体冷却、有効な休憩設備の利用、躊躇なく医療機関に移送することが有効だ。
 そのためにも、作業内容や作業環境に伴う熱中症リスクや早期発見・早期対応の具体的実施方法をあらかじめ検討し、管理者や作業者に共有することが重要だ。

罰金や懲役も

厚生労働省による義務化の内容は次の通り。

▨熱中症の恐れがある作業者を早期に発見するための「体制整備」

▨熱中症の重篤化を防止するための「措置手順の作成」

▨整備・作成した体制や手順等の「関係者への周知」

 対象となるのは暑さ指数(WBGT)が28度以上、または気温31度以上の環境下で連続1時間以上か1日4時間を超えて実施される作業。

 企業が対策を怠ると罰則の対象となり「6ヶ月以下の懲役」か「50万円以下の罰金」が科される場合がある。

 労働安全衛生法22条は「事業者は、次の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない」と定めており、第2号で健康障害の具体例として「放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、異常気圧等による健康障害」を挙げている。

 そして第27条で事業者が講ずべき措置及び労働者が守らなければならない事項を厚生労働省令で定めるとしており、ここに上記のような規定が新設された。具体的には次のような措置が必要となる。

企業はきちんとした熱中症対策を

 体温調節機能が阻害されるような温度の高い場所のこと暑熱な場所で連続して行われる作業を行う際には、あらかじめ熱中症の自覚症状または疑いがあることを発見した場合に備えた報告体制を整備し、周知させる。

 また作業場ごとに作業からの離脱、身体の冷却、医師の診断や処置を受けさせるための措置を及びその手順を定め、周知させる。

 WBGT値(暑さ指数)は暑熱環境による熱ストレスの評価値で、身体作業強度によって区分される。デスクワークでは33度、軽作業では30度、土木など激しい作業は、暑さに馴れた人の場合で25度となっている。

 事業者が講ずべき熱中症対策として厚生労働省のホームページには次の具体例が示されている。

①作業環境管理/直射日光の遮蔽や冷房の設置、涼しい休憩場所の確保など

②作業管理/作業時間の短縮、計画的に熱に慣れさせる、水分・塩分の摂取、通気性の良い服装など

③健康管理/健康診断結果に基づく対応や、睡眠不足・体調不良・前日の飲酒など熱中症に影響与える恐れがある日常の健康管理についての指導や確認

④労働衛生教育/熱中症症状や予防方法、緊急時の救急処置や過去の事例などについての教育

 労働者の健康と安全を守るためにも職場の熱中症対策は労働組合の重要な課題だ。

(ちば合同労組ニュース 第179号 2025年6月1日発行より)

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