裁量労働制適用拡大の動きに警戒を
厚生労働省は6月25日、「裁量労働制実態調査」の結果を公表。さらに「これからの労働時間制度に関する検討会」を新設して裁量労働制やその他の労働時間制度の在り方について検討する方針を示しました。
18年1月、裁量労働制の適用対象の大幅な拡大を目指す安倍首相が「一般労働者より(裁量制の人の労働時間が)短いというデータもある」と国会で答弁。しかし、根拠とした厚労省の調査データの偽造が発覚し、断念に追い込まれた経過があります。日経新聞は6月30日付の社説で「裁量労働制の拡大に向けた議論がようやく再開する……厚労省は時間の空費を自省し……て議論を迅速に進めるべきだ」と主張。
「働き方改革」関連法案から削除された裁量労働制の適用範囲拡大をめざす動きが本格的に再開されたとみる必要があります。裁量労働制は、簡単に言えば1日8時間・週40時間の労働時間規制の適用を解除し、何時間働いても一定のみなし時間で働いたことにする制度です。
経団連は昨年10月に「『働き方改革関連法案』の審議段階で削除された『課題解決型提案営業』と『裁量的にPDCAを回す業務』を早期に対象に追加すべき」と要望。かなり広い範囲の営業職や管理職を対象にすることを求めています。
18年段階の法案では、裁量労働制の適用範囲の拡大については年収要件も雇用形態の制限もなく、残業代ゼロ制度と批判された高度プロフェッショナル制度よりも危険で、こちらが本命だとの指摘もありました。今後、裁量労働制をめぐる動きに警戒が必要だ。
ちば合同労組ニュース 第134号 2021年9月1日発行より