連載・介護労働の現場から〈働き方編4〉
介護スキル
誰に教えてもらうか
「愛されキャラ」必須最低条件は、身体介護ができること。
そのスキルを習得するのに、一番だめなのは、引っ込み思案。自分の業務で手一杯の先輩は、待っていても丁寧に教えてくれない。だから短期間でスキルを習得するには、刷り込み学習しかない。
これは、と思う先輩を決め、その後を生まれたてのアヒルのようにずっとついて回る。ひたすら真似をし、自分でやってみて先輩に見てもらう。
この先輩の選び方が肝心だ。身体介護のやり方は人によって違う。「介護はこころ」派は×。職人的超絶技巧の持ち主も×。スキルはほどほどで、やり方を根拠をもって説明できる先輩がベスト。
利用者がラクで、職員に負担がかからないということをコンセプトに経験を積んできた人。そういう人は利用者をモノ扱いしないので、利用者の信頼が厚い。その弟子になるのだ。
派閥のボスの弟子になるのが近道だと思うかもしれないが、ボスは権力志向だけで、改革の意思を持たない。後々、ややこしい人間関係に苦しむのが目に見えている。誠実に介護をやっている人とつながるべきなのだ。
リフトを導入する
身体介護のやり方には身体メカニズムによる根拠がある。本来は、生まれたてのアヒルは刷り込みじゃなく、きちんと研修を受けるべきなのだが、途中入社だと、少人数や一人で研修なんかやってくれない。現場で対応するので、いい加減で、半年もたてば腰痛が慢性化する。
施設外で研修を受けるのもいいが、半日で1万円近くの講習費をとられる。書籍、無料ネット動画で我慢するしかない。
移乗(ベッド⇔車いす⇔椅子・トイレ)、入浴、排せつなどの肉体労働は過酷だ。これらの仕事を介護者が直接、利用者を抱きあげたり、持ち上げたりしているのは、外国では見られない。リフトを使う。日本でリフトが普及しないのは、費用の問題と、やはり「介護はこころ」、冷たい機械でなく暖かい人の手でという妄想のせいなのだ。
想像してほしい。華奢で小柄な若い女性のケアワーカーが体重60㌔の利用者の両脇に腕を入れて抱き上げ移乗する。利用者の顔はケアワーカーの肩にうずもれているから、何も見えない。力のない人に持ち上げられているので超こわい。この身体介護のどこが暖かい介護なのか? リフトに乗せられて、顔と顔を合わせて、やさしい言葉を掛けられて移乗するほうが、よほど暖かいし、安全だ。
いいかげんに、この国は補助機器による身体介護を標準化すべきである。機械化を導入している施設は、利用者にも評判が良く、職員も健康理由による離職が減り、定着率がいいという。
(あらかん)
ちば合同労組ニュース 第76号(2016年11月1日発行)より