連載・介護労働の現場から 〈27〉 退職

介護労働の現場から

連載・介護労働の現場から 〈27〉

退職

「雇用保険の記録では、雇用保険に入っているのが3月からなので雇用期間が今日まで5カ月ですね。6か月以上ないと雇用保険はおりないですね」
入社したのは12月だ。もう8カ月以上になる。契約書と給料明細書を見せた。
「12月から3月まで、あなたは雇用保険料を払っていませんね。でも、入社した日から雇用保険は適用になります。払っていない分を今から支払えばいいんです」

まったく、人事、総務がなっていない会社だ。また、会社と交渉しなきゃならない。社会保険に関することは本社の女性社員が一人でやっている。悪気はないのだが、ほとんど労務事務ができず、給料計算もよく間違える。
電話をすると「試用期間3カ月は雇用保険は入れないですよ」という返事。それも、またハローワークに聞き、試用期間中も適用になることを確かめ、彼女に教える。
「遡って雇用保険料を払うことができるか、社長に聞いてみます」
社長は「そんな少額、今から払わなくていいよ」ということで、退職届を出さないまま、私は役所関係、病院、総務、社長との細かい手続きに時間を取られた。
しっかりした会社なら総務がすべてやってくれるのにと思った。でも言えばやってくれるだけマシなのだ。おとなしく辞めない人間には何もしてくれない会社も多い。

10日分あった有休が切れた。社長から連絡があり、「そろそろ退職届を書いてくれませんか」と言った。もうケガはほとんど治ったし各種手続きの準備は整っていた。会社から退職届の用紙が送られてきた。
理由の欄には「一身上の都合」と印刷されていた。その下に手書きで「ケガにより勤務継続困難と判断されたため」と書き加えた。せめてもの抵抗だ。社長から電話があり、「受け取りました。いろいろ大変でしたね。離職票を送ります。身体に気をつけてがんばってね。あらかんさんは介護に向いていますよ。うちのホープだったのに残念です」と言った。
その後もくみあい健保や年金事務所、市役所などに各種手続きに行ったが、どこも窓口担当はバイトなのか事務や仕組みに関しては知識がなく、時間を取られた。法律はあっても雇用先や役所の実務担当者に能力がないと、労働者の交渉力や説得力の力量が問われることになる。そこまでしなければ権利は守られないのかと、うんざりした。

n0061_03_01a施設に私物を取りにいくと、管理者も力石もいず、雇用保険や有給がもらえることをパートの同僚に伝えた。私の代わりは募集してるが応募が皆無で忙しそうだった。その後、管理者は会社を辞め、この施設は他の介護業者のフランチャイズになり、力石がその施設長をやっているという。また近いうちにつぶれるにちがいないと思った。(あらかん)

ちば合同労組ニュース 第61号 (2015年8月1日発行)より