連載・介護労働の現場から 〈28〉貧乏人の嫁

介護労働の現場から

 貧乏人の嫁

仕事がなくなったので、長らく会っていない友人と会ったり、家族と向き合う日々が続いた。
家族は「介護はやめなよ。何一つ良いことがないでしょ。給料が安い。身体は酷使する。プライドはズタズタ。労基法違反ばかり。何か人の役にたつことをやりたけりゃ、まともな仕事について空いた時間にやれば?」

一緒にコールセンターをやめた友人たちは、介護職からそれぞれコールセンターと派遣の事務職に転職し、いきいきしていた。
「あらかんちゃん、正社員はその歳じゃ無理だけど、パートなら紹介してあげるよ。パソコンと英語ができれば派遣でもなんでもあるよ。介護は絶対やめなよ。顔つきも性格も悪くなるよ」
同じ職場で働いていた和田さんも介護の仕事は辞めるという。
「あらかんさんが辞めて、大変だったよ。利用者さんにはなんで辞めたと責められるし、言うこと聞いてくれなくなったし、力石さんが排泄でも入浴でも力づくでやるので、そのうち虐待が起きるんじゃないかと心配だし、仕事に行くのが嫌で嫌で、やめちゃった」
ハローワークや求人誌には、できそうな職種や条件にあうのはいっぱいあるが「定年60歳」という条件にひっかかる。結局、警備・管理人・介護なのか。
労働相談では「清掃」もありますよと言う。清掃もいいが、一日の労働時間が長い清掃は若い人が対象だ。
「若い人も最近は仕事ないんで、清掃・介護・警備なんかにどんどん食い込んでいますからね。やっぱり介護ですかね。資格も経験もあるので、条件のいいところをじっくり探したらどうですか?」
と、バイトらしき相談員が言い、介護に特化した「介護相談窓口」を紹介してくれ、そこに登録した。

わたしは介護の仕事が嫌いではない。お年寄りと話すことは楽しい。以前、日雇い労働者の支援活動をしていたときに、たき火を囲みながら、老人になった労働者たちと話をするのは最高に楽しかった。彼らが怒鳴ったり、ひねくれていても気持ちは通じ合う。
その老人たちがないがしろにされてたり、自由を奪われている社会状況が嫌だ。

n0062_03_01a今の、介護保険制度下での介護労働というのは、老人たちを差別し排除している労働だからなおさら辛いのだ。
まともな給料や労働条件なくして、まともな介護はない。
これまでの民家を改造した貧乏くさい施設じゃだめだ。冷暖房は効かないし、バリアフリーもない。食費も足りない。何か不足しても買ってくれないので自腹を切る。…そんな貧乏人の嫁みたいな境遇はみじめだ。今度はもっと金持ちに嫁ぐ。おなじ差別を受けてる嫁なら、ラクできるとこがいい。
(あらかん)

ちば合同労組ニュース 第62号(2015年9月1日発行)より