連載・介護労働の現場から〈働き方編3〉
自己マニュアルと日課表
※手順を身に着ける
施設内のマップはできたかな?
これは便利。コピーしてスタッフに普及させよう。緊急避難にも役立つし、日照など居室環境の維持、利用者との話題にもなる。じっくり見ると、設計の良し悪しでその事業所の経営理念まで透かし見ることができる。
次にマニュアル。マニュアルはいわば仕事の手順、これもなければ作る。
これまでのマニュアルがあっても役に立たないなら作り直す。先輩のやり方をメモし、家に帰ってから排泄、移動・移乗、入浴、食事、雑用などと項目別にまとめる。難しいなら、書店の専門書の介護書籍コーナーに行けば、現場に適用できるマニュアル書籍が多数。
新人にまずマニュアルを習得させるやり方は合理的なのに、「一人ひとり違うから身体で覚えろ」で来たから、基本マニュアルすらまとめる能力がない。それを「介護はこころ」「マニュアルどおりにはいかない」とごまかしているのが実状なのだ。
※時間の管理
マニュアルと同時進行で日課表を作ってみよう。
介護保険上、食事は1日3回、入浴は1週間に2回以上、その他、排泄、更衣、移動・移乗など、業務には時間割があるはずなのに、日課表がない。口伝えの取り決めだけで各職員がセカセカ動き回っている。ムダ、ムリ、ムラな動きは日課表で解決できる。
それに日課表の時間配分と人員配置をみれば、「介護はこころ」=過重労働+サービス残業であることが一目瞭然になる。
※個別ケアの正体
「一人ひとりに寄り添うケア」といって、厚労省の指導下、管理者が個別ケアを強調する。個別ケアといっても、入居者3人に1人の職員配置。これは入居者10人なら職員3・3人が24時間365日を分けあって働くということ。個別ケアなんて、どだい無理な話なのだ。食事、入浴、排せつなど時間を決めて一斉にしかやれない。
マニュアルと日課表は、実際の現場では、利用者の状態によって臨機応変、優先順位をつけて対処することを強いられる。だからといって、なければ、介護の質をキープできないし、労働環境を精査することも不可能だ。人手不足であればあるほど、マニュアルと日課表は必要不可欠なものだ。
※愛されキャラ
マニュアルと日課表を作っていく過程で、この仕事に徐々に愛着がわいてくるし、確実に介護のプロとして成長していることが、自分自身でも実感できる。
しかし、立場上は身体介護もろくにできない新人だから、先輩方に嫌われちゃいけない。「ちょっと変わってる愛されキャラ」が一番やりやすい。
(あらかん)
ちば合同労組ニュース 第75号(2016年10月1日発行)より