連載・介護労働の現場から〈25〉 自己都合/会社都合

介護労働の現場から

連載・介護労働の現場から 〈25〉

自己都合/会社都合

社長は、顧問の社労士と相談する、と私の要求を持ち帰った。職場に行くと和田さんが近寄ってきた。
「どうして辞めるの? ケガが治るまでレク担当やれば? 他の仕事はみんな引き受けるから」
「辞めるとは言ってないよ。ケガしたから管理者がクビだって言ってるだけ。社長は管理者がクビだという者を雇い続けられないんだって」

力石が来た。「あらまぁ、この腕じゃもう居座れないでしょ。ケガの多い人だね。もう歳なんだし、ぶっちゃけ、あらかんさんは介護には向かない性格だと思うよ」
うるせぇ~、私はほんとは介護の仕事が中途半端になっていることがいちばん気がかりなのだ。もっと介護を極めたい。でも別にこの施設でなくてもいいのだ。

和田さんが「私はあらかんさんがいるからガマンしてきたのよ。私も辞めようかな?」と言ったので、私が社長に要求した3条件について話した。
これまで毎月のように人が辞めていったが、社長によると、私みたいに手続きをした人は皆無。突然無断欠勤し、フェイドアウトするのが一般的。
利用者たちは私のギブス姿に一様に驚き、口ぐちに慰めてくれた。これまでずっとギブスはからかいの対象だったから、利用者の心がこもった言葉に泣きそうになってしまった。
利用者たちにもう会えなくなると思うとつらかったし、初めてケガをしてしまったことを悔いた。「もう辞めるかも?」とは、とても言い出せなかった。

休憩室にある私物を持ち帰れという力石を無視して職場を離れた。辞めると言っていない以上、私物を持ち帰ることはできない。
和田さんが力石さんに「(私の私物を)勝手に処分したら、窃盗だからね」と言ってくれた。和田さん、私に似てきたなぁ、後継者になってくれるかも…。

n0059_03_01a社長からは次の日に電話がきてその日の午後、社長に会った。要求のうち、(2)の有給は支払う。(3)の傷病手当金は自分で手続をとることでOK。ただし、(1)の解雇予告は出せない。有給を消化した時点で、会社都合ではなく、自己都合の退職届を出してくれということだった。
「私は、辞めると言ってないから、自己都合ではないでしょ。なぜ会社都合にしないの?」
社長は、「管理者からは、あらかんさんが辞めたいと言ったと報告を受けている」と繰り返していたが、そんなものいまさら理由にならない。食い下がると、社長は本当の理由を明かした。
「詳しくは言えないけど、社員を会社都合で辞めさせると、もらった助成金が無効になる」。

あぁ、そうなんだ。(あらかん)

ちば合同労組ニュース 第59号(2015年6月1日発行)より