連載・介護労働の現場から〈35〉 告発文

介護労働の現場から

連載・介護労働の現場から 〈35〉

告発文

私は辞める決心を三田村さんに伝えた。
三田村さんから他のパートにも伝ったが秘密にされた。「とても2か月しかいないとは思えない。2年はいる感じ」といわれるほど職場や入居者に馴染んでいたし、プリセプター丸山くんも「仕事ができるようになったね」といい評価をくれていた。

でも、辞めるのだ。

私だって執拗なモラルハラスメントでおかしくなっている。仕事中でも関口さんが飛んでくるのではないか、とやたら警戒心が強くなって、なんか妄想症じゃないかと思う。
それで本当に関口さんが来れば、百瀬さんみたいにフリーズしちゃうかもしれない。限界だ。
でも、辞めるときには、この職場がモラルハラスメントでどれだけ汚染されているかを告発し、それが退職理由だということを宣言するのだ。百瀬さんみたいに本当の理由をいわないで辞めると、PTSD(心的外傷後ストレス障害)になりそうだ。
まず、「新人教育について」という告発文をワープロし、課長に退職の電話をかけた。
課長は、「えっー」と30秒くらい絶句。「あらかんさんはホープだったのに…」
どこかで聞いたセリフだね。

次の日、課長と面談をして告発文を読んでもらった。
これまで受けた新人教育についての言動がモラルハラスメントに相当すること、このようなハラスメントをなくすための方法まで書かれている親切なものだ。
課長はじっくり読んだ後、「この通りです。苦しんでたのね。すみませんでした。これは施設長に提出します」と真顔になった。
次に、休憩室で会った人のうち、関口に迎合しない人に「私、やめるので。理由はここに書いてあります」と告発文を渡した。
告発文は好評で「私も頂戴」と言う人が何人もいた。「ロッカーに入れとくね」。それで、読んだ人からの返事の手紙や餞別が私のロッカーに入ってたりした。
丸山くんからも手紙で「お役にたてず、すみません。こういうことがあるのだと肝に銘じてこれからやっていきます」という内容の返事が来た。

n0069_03_01a辞める日がきた。
施設長の面談があるという。告発文は課長から施設長に渡っていた。施設長は事実関係を詳しく訊ねた後、「このようなことはあってはならないことです。人が人として尊敬されない職場は、ご入居者もないがしろにしているということですからね。この組織全体の理念が問われます。これを役員会に上げて検討させてもらってもいいですか」と言った。
涙が出そうになった。これまで、つらかったことがどっと出そうになった。その日会った入居者にも最後だと思うと涙が出そうになった。「辞める」と入居者に言うことは禁じられていた。(あらかん)
ちば合同労組ニュース 第69号(2016年4月1日発行)より