若者を「捨て駒」にする労働市場
闇バイトと若者労働を考える
24年を象徴する事態の一つが「闇バイト」問題。全国各地で次々と起きる強盗殺人事件を起こす凶悪犯たちがフツーの若者だということで社会的な衝撃が走っている。「いつか狙われるのでは?」と不安に思う高齢者の不安の声も聞く。被害総額は5億円を超え、件数は増加するばかりだ。
危機感を募らせる国や警察。「安易に闇バイトに手を出さないで」のキャンペーンも目にする。同時に「若者はコロッと騙される」「手を出す奴が悪い」の月並みな非難が若年層に向けられる。
なぜ若者は闇バイトに手を出すのか? 問題を掘り下げるほど、見えにくい若者の貧困が浮き彫りになる。
若者が直面する貧困
闇バイトに手を出して逮捕された被疑者に共通するのは「お金がない」ことだ。「真面目に働いても返せない」「短期間で稼げるアルバイトがなかった」という切実な声が聞かれる。
たとえば奨学金問題。大学生2人に1人が奨学金を借り平均324万円の借金を抱える。順調に行っても大学卒業後、40歳前後まで返済が続く。奨学金の借金苦で若者世代を追い込んだのは国の責任だ。
若者のホームレス化も深刻だ。東京23区の「緊急一時保護事業」利用者の18%が20代の若者だ。「自己責任」を押し付けられてきた若年世代は「助けて」が言い出しにくく、社会的孤立を生みやすい。
「将来を見通せない」日本の若者は85%とも言われ、世界的にみてその割合は高い。「お金に余裕がなくなると心にも余裕がなくなる」と平常心を失った「パニック状態」に叩き込まれている若者がいかに多いことか。
そもそも労働者の賃金がきちんと上がっていていれば、闇バイト問題など起きない。
タイミーやシェアフルといったスポットワーク案件にも時々、異常に賃金の高い「ホワイト案件」と呼ばれる仕事が出てくる。日雇いでさえない細切れ時間の労働だ。
ブラックバイトの拡大が、闇バイトの「仕事(ホワイト案件)」が入り込む余地を作る。若者を「捨て駒」にするのは闇バイトだけではなく、雇用破壊の末に広がった労働市場に根本の問題がある。
若者の声の〝可視化〟
10月27日の総選挙では、「手取りを増やす」をスロガーンに掲げた国民民主党に20~30代の若者の票が殺到した。SNSやネットで広がったとの見方もあるが、根底には働く若者を取り巻く環境の厳しさがある。他方、若者の票が集団的に登場したことで若者の現状が可視化されたとも言える。
闇バイト問題。これは遠く離れた問題ではなく、私たちの労働に関わる身近な問題として考えなければならない。
ちば合同労組ニュース(2024年12月01日号より)