春闘の新しい波
今年2~3月は、「労働組合」のワードが物価高騰などで例年なく注目された。
とはいえ新聞には「23春闘―満額回答」の文字が踊るが、実際の賃上げは一部の大企業だけで大半の労働者には恩恵がない。そもそも大手労組の要求自体が物価上昇に見合わない少額の要求だ。
労働組合の中央組織である連合の芳野会長は、自民党や官邸の方ばかり見て、非正規労働者の賃金底上げには関心を持っていない。多くの労働者が「(春闘は)自分の会社には関係ない話」という不満の声を上げている。
この中で、労働組合加入率8・5%という非正規労働者の現状を変えようと「非正規春闘2023」という試みが展開された。16のユニオンが連動して10%の統一春闘要求を掲げた。
飲食、教育、小売、製造、サービス、ITなど幅広い業種から33社300人が参加し10社でストを決行。この取り組みが戦術的に有効だったかどうかの議論はあるが、日本の労働運動の現状を打開し、新しい運動の気運をつくったのではないか。
大学で雇い止め
春闘の一方で、年度末雇止めの攻防も始まっている。特に、教育・研究費が削減され、少子化などで学生が集まらない大学現場が焦点だ。
全国の大学・研究機関の任期付きの研究者約6千人が雇い止めに直面する。10年で無期雇用に転換する大学の「無期転換ルール」適用を避けるための大量雇い止めだ。
約600人の雇止めが予想された理化学研究所では、大学と労組側の熾烈な攻防が続くが、41研究チームの解散で400人が雇止めと言われている。大学が最も劣悪な労働現場の一つになっている。東海大学では昨年から研究者がストライキを実施した。
会計年度任用職員制度を問う裁判
会計年度任用職員の任用拒否が全国で起きている。制度が始まって丸3年の公募の際にパートに置き換える動きも出ている。外国人労働者を中心に組織する東ゼン労組のALT(外国語指導助手)組合員2人の雇い止めに対し組合は団体交渉を要求したが都教委は全面拒否。労働委員会も組合の訴えを退け、組合側は東京地裁に提訴した。
この裁判は、会計任用職員にも労働基本権・団結権があることを求め、会計年度任用制度を根本から問う労働裁判として注目されている。
千葉駅の周辺も変化が
津田沼パルコや千葉そごうの閉鎖で千葉県の主要駅周辺の風景が変化している。セブンHDは昨年、西武・そごうを米投資会社に売却。後には一部にヨドバシカメラが入るとも。社員や地域の同意を求めない強硬なやり方に豊島区長など各方面から猛反発が起きている。この中で労組や西武社員が裁判に訴えている(仮処分は棄却)。今後、千葉そごうで働く労働者の雇用問題も焦点になる。(K)